薬歴ビフォーアフター~薬歴の悩み、解決します~

更新日: 2024年6月27日 岡村 祐聡

薬歴でのSOAP、特にPの書き方はこれで良いでしょうか?

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お悩み

弊社では薬歴のSOAPのPはOPとEPにわけて書くように決められています。しかしどちらを書いていいのか迷うことがあり、ときたまわからなくなります。同じようなことを何度も書いているような気もします。このような書き方で大丈夫でしょうか?

(症例)
84歳 女性 健康にいつも気を付けていらっしゃる患者さんです。血圧には胡麻麦茶が良いといわれ、いつも飲んでいるそうです。


〈処方〉
カンデサルタン錠4mg 1日1回 朝食後 1回1錠 28日分
サラザック配合顆粒  1日3回毎食後 1回1g  5日分

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薬歴Before

S) 毎日血圧手帳をつけ、血圧は140〜120で推移。医師からもこのままの調子でと言われている。
風邪症状があるので、サラザック処方。睡眠時無呼吸も測定されている。
S) 胡麻麦茶を飲んで血圧管理している。
O) 一剤でコントロール可能な状況を称賛すると、胡麻麦茶も並行して飲んでいると、お話しいただく。
A) かなりの健康志向である。血圧も84歳で一剤でコントロールができているので、何か工夫などあるかもしれない。
EP) サラザック配合顆粒 :眠気、胃部不快感、便秘、口渇などの症状を感じたら 医師か薬剤師に相談するように指導。
EP) 胡麻麦茶に関するお話を合わせながら、お薬投薬。毎日血圧を測定する大切さや、お薬以外でも血圧を下げる、生活習慣を取り入れることが大切であることを説明。
OP) 血圧管理と健康食品 (胡麻麦茶)に関してお伝えする (飲み合わせは特に問題はなく、安心して飲んでいただける)。
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薬歴の書き方にプロブレムの意識がない

Aを見ると「何か工夫があるかもしれない」と書いてありますが、これはアセスメントとは言えませんね。

Oの事実を根拠として判断したことがAです。Oで胡麻麦茶を飲んでいることを事実として示しているのに、Aで「何か工夫があるかもしれない」としている工夫が胡麻麦茶のことを差すなら、Oで胡麻麦茶済みなのですから、論理が破綻しています。SOAPの構成が間違っていることになります。もし血圧管理に積極的なことを褒めたいなら、Aは「血圧管理のために積極的に工夫をされているのは、とても良いことだ」とするべきでしょう。

プロブレムが想定されていないなら、いつも申し上げておりますが、SOAPで書くより、箇条書きで書いた方が簡潔に書くことができます。そもそもSOAPとはどんなものなのか、その基礎をもう一度勉強し直しましょう。

私が思うに、ARBとACE阻害作用がある胡麻麦茶を併用することを、医師が知った上で許可しているのかどうか確認する必要があると思うのですが、それは確認したのでしょうか。その記載は一切ないですね。もし「健康食品はお薬ではないから大丈夫」と思っているなら、その考えは改めた方が良いでしょう。(ARBとACE阻害剤の併用は不可ではないが、医師の了解の元行う必要がある)。

そもそも経過記録(普段の薬歴)でPをわける書き方は間違い

会社の決まりならばしょうがないですが、そもそも経過記録(普段の薬歴)でPをわけて書くのは間違いです。これは医師の初期計画の時のやり方で、初期計画では治療方針を決める前に大まかな方向性でPを決めるため、意味合いが違う複数のプラン(診断をどのようにするのか、患者へどのような指導をするのか、当面の処置として何をするのか、など)が必要となりますので、初期計画ではPをわけて書くことがあります。

しかし、そもそも初期計画と経過記録は全く別の医療行為です。学生時代には、実習などで薬物治療の計画を立てる実習などをやった方もいるとは思いますが、その時はPをいくつかにわけて立てたと思いますが、それは初期計画を立てたので、Pを複数書いたのです。日常の投薬時の患者応対は経過記録にあたりますので、Pを無理にわけようとすると、同じようなことを何度も書くことになり、無駄な記述が増えてしまいます。こちらもPOSの基礎を学び直してください。

薬剤師のプロブレムとしては、ARBとACE阻害剤との併用がある

先程も触れましたが、薬剤師が取り上げるべきプロブレムとしては、AEBとACE阻害剤との併用があります。「併用はOK。大丈夫」というのも一つのプロブレムですので、薬剤師として重要だと思うなら、それを取り上げることができます。

しかし医師が了解しているなら、わざわざ取り上げなくても、お聞きした話を薬歴に記載しておけばよいとも言えます。当然後者の方が薬歴は簡潔になります。今回は両方のパターンで2つ作ってみましょう。

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薬歴After1

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岡村 祐聡
おかむら まさとし

有限会社服薬ケア研究所所長。明治薬科大学薬学部薬剤学科卒業。
都内調剤薬局や調剤薬局チェーンの教育担当管理職を経て、1997年に『服薬ケア研究所』を設立。
「服薬ケア」理論を各地で提唱し続け、全国各地で開催される研修会や服薬セミナーなどでも精力的な活動を行っている。 2002年には、服薬ケアを学ぶ全国の有志で設立された「服薬ケア研究会」から要請を受け、会頭に就任。最新著書は「10日間で極意をつかむ選ばれるかかりつけ薬剤師になる 患者応対技術と服薬ケアコミュニケーション」(診断と治療社)。書籍の詳細は服薬ケア研究所のホームページを参照。

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