薬歴に記載すべき事柄を吟味しよう〜必要なのは人柄?副作用?

「患者さんの人となりがわかる薬歴が良い薬歴」という先生の考え方に共感します。患者さんはとてもまじめな方で、塩分制限、タンパク制限など、食事制限を守り、気を付けています。今回は腎機能の悪化傾向が「横ばい」だったということで、患者さんも喜んでいました。その内容を薬歴に記載しましたが、このような書き方で良いでしょうか。
(患者)
22歳 女性。10代から蛋白尿にて小児科に通院。IgA腎症。成人になったので、腎臓専門医へ転院予定だが、まだ転院はできていない。以前リシノプリル錠5mgを服用していたが、ロサルタンK錠に切り替え。その後タンパク尿が改善しないため、イルベサルタン錠50㎎へ切り替え。今回、腎機能が悪化傾向にあったため、前回以前飲んでいたリシノプリル錠5mgに戻したとのこと。主治医からは薬を変えることで、「乾いた咳」や「立ち眩み」があるかもしれないので、注意するよう言われていた。
(今日の処方)
リシノプリル錠5mg 1錠
ミゾリビン錠50mg 1錠 分1 朝食後 30日分

薬歴Before
- 専門学校の卒業を控え、就職が決まりうれしそう。
- 食事はいつも気を付けていて、外食では塩分が多いので、いつもお弁当をもって学校へ行っている。
- 感染症、尿量の減少、むくみなどの症状なし。
- ご本人自ら嬉しそうに検査結果を見せてくれた。
- 主治医は、リシノプリルへ治療変更し、eGFRやCrが上がるのではないか心配していたようだが、Cr:0.9→1.08→0.99、eGFR:66.3→53.6→58.9)と悪くなっておらず、蛋白尿(uTP/uCRE:2.98→2.70→2.15と「横ばい」と記入されていて、ご本人も安心したようだ。
- 寒くなってきて、風邪をひきやすくなる季節が近づいてきたので、病院へ通うようになったり、風邪薬でお困りの際は、問い合わせていただくようお願いした。

プロブレムが特にない場合はSOAPでなく箇条書きで記載する
特にプロブレムを抽出しなかったため、SOAPではなく箇条書きで記載したとのことでした。記載そのものはこれで良いと思います。
また、「患者さんの人となりが良くわかる薬歴が良い薬歴」という考え方にも共感していただいているようで、そのように意識されていることが感じられる薬歴で、その点はとても良いと思います。
ただ、「人柄のエピソードを記載する」ことが薬歴の目的ではありませんので、そのあたりは勘違いしないように気をつけましょう。気になるのは、背景説明で、『主治医からは薬を変えることで、「乾いた咳」や「立ち眩み」があるかもしれないので、注意するように』と言われたということですが、なぜそれを薬歴に書いていないのでしょうか。
そしてそれに伴い、実際咳や立ち眩みはあったのでしょうか、なかったのでしょうか? 一番大事なことが書いていないですね。実際にはなかったということなので、それもしっかり記録しておきましょう。