薬歴ビフォーアフター~薬歴の悩み、解決します~

更新日: 2025年8月14日 岡村 祐聡

本人は長い薬歴を『もう少し簡潔』にしたいらしいが……

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お悩み

お話したのは患者さんのお母さまですが、ずいぶん長く話し込まれていました。よって薬歴の記載も長くなってしまいました。もう少し簡潔に書けるようになりたいのですが…。

(患者)
16歳。男性。本人は学校へ行っており、来局は母親のみ。明け方まで眠れないことが多く、そんな日は朝起きられなくて学校を休んでしまうため、母親が受診させた。
14日分処方されているが、大量に余っているそうで、来局はおよそ一か月ぶりとなる。


〈処方〉
ラメルテオン錠8㎎ 1錠   分1就寝前  14日分。

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薬歴Before

♯1 ラメルテオンの効果を得るためには「眠れない時だけ薬を飲めば十分」という認識は改めてもらう必要がある。

S) ラメルテオンは、本人が眠れないときだけ服用をしている。平均すると週の半分も飲んではいないと思う。
O) 母親目線でも睡眠がしっかりとれているようには感じていない様子。ただし、本人がラメルテオンを飲んだ翌朝眠気を感じていることであまり薬を飲みたがっておらず、母親も眠れない時だけ薬を飲めば十分と考えている様子。
A) ラメルテオンの効果をしっかり得るためには、「眠れない時だけ薬を飲めば十分」という認識は改めてもらう必要がある。
P) ラメルテオンは、服用したその日だけの睡眠を助けるというよりは、継続して服用することで少しずつ体内時計のリズムを整えるための薬です。1日1回毎日続けることで、時間をかけて昼夜のリズムをつけることを目的としています。ですので、眠れない時だけ服用するのではなく、毎日継続して飲むことが大切です。

#2 (母親の)友人の子供が、睡眠薬を飲んで精神的におかしくなってしまったと聞き、ラメルテオンを続けていくと同じようなことが起こるのではないかという、母親の不安に応える

S) この薬って、毎日飲んでも大丈夫なものなんですか? 友人の子供が、睡眠薬を飲んで精神的におかしくなってしまったと聞いたことがあるんです。それが怖くて、私もあまり飲ませたくないなあって。
O) 友人の子は患児の同級生。服用している薬は不明。「朝起きたときに意識がもうろうとしている」と「会話がかみ合わない」といった症状が発現した様子。
一方、本人がスマホゲームを日付が変わるまで行っており、寝不足の状態。ラメルテオンは夜遅くまで起きていた日に飲むことが多く、薬を飲んだ翌朝は眠そうにしていることが多い。しかし、母親はその状態を「ラメルテオンの副作用の可能性があるのでは」と疑っており、薬を継続すると友人の子と同じような症状が現れるのではと心配をしている様子。
A) ラメルテオンの副作用はないわけではないが、この場合夜中までゲームをしているため、翌日は眠いのではないか。母親の心配はわからないではないが、「薬のせい」という考えは改めてもらった方が良い。
P) ラメルテオンという薬は、体内時計のリズムをつける薬です。自然な睡眠の手助けをする性格が強く、他の睡眠薬に多い副作用がほとんどないのが特徴です。薬の効果を引きずって「朝起きたときに意識がもうろうとしている」とか「会話がかみ合わない」といったことはまず起こらない薬ですので、安心して服用をしてください。薬を毎日続けることで朝も楽に起きられるようになるはずです。
S₂) そうなんですね。じゃあ本人にもそれを少し強めに伝えて、今晩から飲ませてみようと思います。
Pnext) 今回は深く話せなかったが、そもそも薬を飲むより、スマホゲームを夜中までやることを止めない限り、睡眠状況は改善されないのではないか。次回じっくりお話してみて下さい。
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プロブレムが明確に認識されており、素晴らしいです

まず一読して、しっかりとプロブレムが意識されており、情報もプロブレム毎にクラスタリングされていることが分かります。そしてクラスタリングの結果、SOAPの2つ記載されています。とても素晴らしいと思います。

ご本人は「もう少し簡潔に…」とおっしゃっていますが、実際にそれなりに時間をかけてお話をした事例ですから、薬歴もある程度は長くなってしまうのはしょうがないことだと思います。むしろ「しっかりとお話できている」ことを誇っても良いのではないでしょうか。

SOAPのプロブレムネームとAは基本的に同じ内容になる

さて、プロブレムがしっかりしているだけで、もう充分合格点なのですが、より良い薬歴を目指すために、少しだけSOAPについてもみていきましょう。

まず、プロブレムネームとA(アセスメント)は基本的に同じ内容になります。#1(ナンバーワン)はほぼ同じですが、#2は少し違いますね。これは、SOAPのAに書かれている内容が正しいと思いますので、プロブレムネームもAに揃えましょう。

次に、Aと考えた根拠となる事実がOとなります。#1では「本人も母親も眠りたい時だけ飲めば良い」と考えているという事実(O)を示し、その認識を「改めてもらいたい」とアセスメントしています。#2では、「友人の子供が睡眠薬でおかしくなってしまったことを踏まえてあまり薬は飲ませたくないと思っている」(O)という事実を提示し、それに対して「その心配はない」(A)ことを、作用機序の説明とともにお話(P)しています。そしてP2で母親も「薬への心配はない」ことはある程度納得してくださったようです。

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岡村 祐聡
おかむら まさとし

有限会社服薬ケア研究所所長。明治薬科大学薬学部薬剤学科卒業。
都内調剤薬局や調剤薬局チェーンの教育担当管理職を経て、1997年に『服薬ケア研究所』を設立。
「服薬ケア」理論を各地で提唱し続け、全国各地で開催される研修会や服薬セミナーなどでも精力的な活動を行っている。 2002年に設立した「服薬ケア研究所」は、2021年に「一般社団法人服薬ケア医療学会」へと組織変更。理事長へと就任。薬剤師の医療の向上のため活動を続けている。

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