薬歴はSOAPで考えると効率的
添削前、添削後の薬歴を見て、書き方を学ぶ企画です。今回のテーマはSOAPの考え方と子どもの患者さんについて。質問者は「何をどのように書けば良い薬歴」なのかと問いかけてきます。この疑問に対して先生は「SOAPの要素で考えることで効率よく、短時間に質の高いケアができる」と答えます。また、先生が定義する「良い薬歴」とは、「患者さんの様子と薬剤師の判断がわかり、薬剤師の指導内容が漏れなく、簡潔に記されているもの」です。さらには子どもへの服薬指導のやり方も解説されているので、この記事でSOAPの考え方を身につけると、より良い薬歴の書き方がわかります。
何をどのように書けば良い薬歴といえるでしょうか
患者さんは6歳の男の子です。
いつも一緒に来るお母さんは、とても熱心に話を聞いて行きます。少しでも具合が悪かったり、咳や鼻が出るとすぐに病院に連れていくようです。
うちの薬局はSOAPでは書いていません。患者さんが訴えたことを主体に記載しています。保険指導の研修会で「やった仕事は必ず薬歴に書くように」と言われたので、わかりきったことも、いわば「指導した証拠」として記載しています。こんな薬歴で良いのでしょうか。それにそもそも何をかけば良い薬歴といえるのでしょうか?
[処方内容]
Rp1: | アスベリン散10% | 0.45g |
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プルスマリンAドライシロップ小児用1.5% | 1g | |
ニポラジン小児用細粒0.6% | 0.75g | |
1日2回 朝・夕食後 | 7日分 | |
Rp2: | ホクナリンテープ1mg | 7枚 |
咳がひどいとき | 1日1枚 貼付 |
今回は、非常に根本的な疑問、「何を書けば良い薬歴になるか」についてお答えしたいと思います。
薬歴Before(以前の薬歴の記入)
SOAPで薬歴を書くのではなく、SOAPで考える
薬歴は「SOAPで書かなければいけない」という決まりはありません。要点がしっかりと書かれていれば、形式はどんな形式であっても全く問題ありません。しかし、私は薬剤師として患者さんを見たときに、薬剤師としてその患者さんに対してなすべきことは何なのか(これがプロブレムです)をS、O、A、Pの要素で考えることで、効率良く、短時間に質の高いケアをすることができると考えています。SOAPで考え、そのSOAPをそのまま薬歴に残すと一番手間がかかりませんので、薬歴もSOAPで記載した方が早く楽に書けると思います。実際に私のところで薬歴を勉強した薬剤師は、皆口をそろえて「SOAPで考えることができるようになると、薬歴を書くのがとても早くなった」と言っています。
つまり「SOAPで考える」思考回路をしっかりと身に付ければ、「SOAPで書いた方が楽」なので、薬歴もSOAPで書くことをお薦めしているのです。
良い薬歴のための大切なポイントは3つ
私が良い薬歴と考えるのは、以下の点がわかりやすく、簡潔に書かれている薬歴です。
- 患者さんの様子がよくわかる。
- 薬剤師としてどんな判断をしたのかがよくわかる。
- 薬剤師が指導した内容が漏れなく、しかし簡潔に記載されている。
今回は元の薬歴を見ても、患者さんの様子はよくわかりませんし、薬剤師としてどんな指導をしたのか全く書かれていません。そして、その患者さんに対して薬剤師としてどんなケアが必要だと判断したのか、全くわかりません。残念ながらこれはあまり良い薬歴とはいえないでしょう。