薬歴ビフォーアフター~薬歴の悩み、解決します~

更新日: 2023年5月1日 岡村 祐聡

ハイリスク薬加算の薬歴の書き方は?

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日本病院薬剤師会:ハイリスク薬に関する業務ガイドライン 

お悩み
ハイリスク薬加算の薬歴の書き方は?
今日の患者さんは71歳の元気な女性です。現在はご主人とふたり暮らし。ご主人もとてもお元気です。15年前に胸の痛みで受診した際に心房細動と診断され、お薬を飲み始めました。ここ7~8年間は安定していた血圧が最近ちょっと高めのようで、前回より血圧の薬が変更になりました。

お悩みポイント
うちの薬局は、ハイリスク薬加算を必ず算定するように言われています。薬歴はこの書き方でよいでしょうか? また、毎回書かなければいけないのでしょうか?

[処方内容]

ワーファリン錠1mg 2錠
ワーファリン錠0.5mg 1錠
テノーミン錠25 1錠 
分1 朝食後 30日分
マイスリー錠5mg 1錠 
分1 寝る前 30日分
ブロプレス錠4mg 1錠 
分1 朝食後 30日分
Before
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[薬歴]
  • (S)前回血圧の薬が増えて、少し下がった。家で測っていると上の血圧が130台くらいになった。
  • (O)Do処方 血圧140/85、PT-INR 1.9。前回よりブロプレス2mg→4mg。
  • (A)ワーファリンによる副作用症状無し。
  • (P)引き続き家でも血圧を測ってください。
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ハイリスク薬はすべて薬歴記載をしなければいけない

 ハイリスク薬の加算を算定するためには、毎回処方されているすべてのハイリスク薬について指導を行い、それを薬歴に記載する必要があります。この処方せんの場合、ワーファリンとテノーミンがそれに該当します。したがって、ワーファリンについてしか記載がないこの薬歴では、ハイリスク加算は算定できません。なお、βブロッカーであるテノーミンについては、不整脈に対する処方であることを確認する必要があります。

ハイリスク薬の薬歴記載の原則は同じだが、複数ある場合はすべて明記

 何をどう薬歴に書けば良いのかという点でいうならば、ハイリスク薬であっても他とまったく同じです。副作用の有無の確認や指導した事柄を記載しなければなりません。したがってこの薬歴の「ワーファリンによる副作用症状無し」という書き方では、具体的に確認した内容が記載されていませんので、不十分ということになります。そういう意味でもこれでは加算の算定はできないでしょう。
 そしてこれもすでに何度も述べていることですが、プロブレムを想定して指導した内容以外はSOAPで書くことはできませんから、ハイリスク薬についての記載は、特にその薬に対するプロブレムが想定された場合を除き、SOAPとは別に箇条書きにしてください。また、この処方のように複数のハイリスク薬が処方されている場合は、すべての薬に対して指導をする必要がありますので、薬歴の記載も薬品名を明記して別々にした方がよいでしょう。

ハイリスク薬の指導を毎回するにあたって、一言断りを入れる

 ハイリスク加算を毎回算定する場合、患者さんにとっては処方せんを持っていくたびに同じ話を繰り返されることになります。したがって、それについて声がけするのを忘れないようにしましょう。たとえば、「このお薬はとても大切なお薬なので、毎度のことになりますが、いくつか確認させてください」というように、ひと言断ってから具体的な質問や指導に入ってください。
 算定用件には「従来と同一の処方内容にもかかわらず当該加算を継続して算定する場合には、特に指導が必要な内容を重点的に行い、その内容を薬剤服用歴の記録に記載すること」とあります。「特に指導が必要な内容」が複数ある場合、一つのテーマを選び「重点的に」指導し、毎回違うテーマにするような工夫も患者さんへの配慮として必要です。ただし今回のワーファリンの場合の出血傾向の有無など、特に重要な項目は毎回患者さんにおうかがいすべきだと思います。

解決!
ハイリスク薬の薬歴記載のポイント3点

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岡村 祐聡
おかむら まさとし

有限会社服薬ケア研究所所長。明治薬科大学薬学部薬剤学科卒業。
都内調剤薬局や調剤薬局チェーンの教育担当管理職を経て、1997年に『服薬ケア研究所』を設立。
「服薬ケア」理論を各地で提唱し続け、全国各地で開催される研修会や服薬セミナーなどでも精力的な活動を行っている。 2002年には、服薬ケアを学ぶ全国の有志で設立された「服薬ケア研究会」から要請を受け、会頭に就任。最新著書は「10日間で極意をつかむ選ばれるかかりつけ薬剤師になる 患者応対技術と服薬ケアコミュニケーション」(診断と治療社)。書籍の詳細は服薬ケア研究所のホームページを参照。
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