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在宅医療における薬剤師の役割

更新日: 2016年9月7日 前田 桂吾

【在宅医療】患者タイプによる2つの薬局の在り方と連携Vol.2

一口に「在宅医療」と言っても、患者さんの医療・介護依存度に応じて必要なサポートはさまざまです。それに応じてかかる医療機関は変わりますが、「薬局」はどうでしょうか。あらゆる患者さんに対応しようと、在宅医療へ飛び込むハードルを必要以上に高くしてはいないでしょうか。今回は、在宅医療が必要な患者さんの分類と、それを支える薬局の在り方について考えてみます。

患者さんの医療依存度によって「薬局の介入度合い」も変わる

「在宅医療を受けている患者さん」といった時に、皆さんにはどのような患者さんが思い浮かぶでしょうか?

脳梗塞などの後遺症で寝たきりの方でしょうか?認知症の方でしょうか?足腰が立たなくなり通院ができないため在宅医療を受けている慢性疾患のお年寄りでしょうか?それともがんの末期で緩和ケアを受けている患者さんでしょうか?

上記で示した患者さんはすべて在宅医療を受けられていますが、医療や介護依存度はまちまちです。

医療や介護の依存度が違うということは「薬局の介入度合い」も違うのですが、薬局が在宅医療に関わるという議論をしていると、認知症の話をしているのに、いつのまにか医療用麻薬の在庫の話になっている等、すべての医療介護依存度が混在してしまい、議論が混乱していることが少なくありません。

通常業務の中で外来患者さんの割合が多い薬局さんの場合には、緊急訪問が想定されるような医療依存度の高い患者さんを支えることや、さまざまな医療機材や医療用麻薬を在庫することは難しい、ましてや無菌調剤なんて大変だ、と感じられている薬剤師さんが多いと思います。

かかりつけ薬局の考え方からすれば、自局の周りの在宅患者さんをどのような医療依存度であっても支えられるのは理想かもしれません。ですが、医療依存度が高い患者さんを意識しすぎるがゆえに、在宅医療へ飛び込むハードルを自ら高くしてはいないでしょうか?

在宅患者さんを「4つ」に分けて考える

そこで、大まかではありますが、在宅患者さんを「非がん」と「がん」に分け、さらに「非がん」の場合には、「独居や老老介護などの慢性疾患」と「小児在宅や神経難病などの医療依存度の高い在宅患者さん」、「がん」の場合には「通院治療中」と「終末期(緩和ケア)」、という4つのカテゴリーに分類すると、医療や薬局がどのようにサポートすればよいか整理しやすくなります。

例えば、「非がん」の領域で、慢性疾患患者さんの場合には、内服治療が重要となってきますので、服薬管理や生活上の指導が必要と思います。また医療依存度は高くないので、医療側の訪問頻度(緊急訪問も含め)は少ないと思われます。

一方、小児在宅などの医療依存度が高いグループは、高カロリー輸液や人工呼吸器を使用しているなど、医療の介入度が高いので、一般的な薬局では在庫しづらい医療機材や特殊な薬剤などの常備が必要と考えられます。定期訪問以外にも緊急の訪問も必要かもしれません。

「がん」の場合には、通院治療中の方が在宅医療を受けられることはほとんどありませんが、「終末期」の患者さんには、残された時間が少ない場合が多いので、医療用麻薬や医療機材の供給などを迅速に行うことが大切です。そのため、私たちの薬局のようにある程度の在庫を常時用意しておき緊急訪問にすぐ対応できる体制を整えておくことが重要になります。

在宅患者分類と必要なサポート

患者さんの状況 薬局の役割、必要な体制
非がん 独居や老老介護などの慢性疾患 ・内服治療が重要
→服薬管理や生活上の指導が必要
・訪問頻度(緊急)は少ない
小児在宅や神経難病などの
医療依存度が高い
・高カロリー輸液(無菌調剤)や
人工呼吸器の使用あり
 →特殊な薬剤や医療機器の常備が必要
・定期訪問以外の緊急訪問もあり得る
がん 通院治療中 ・在宅医療が必要なケースは少ない
終末期(緩和ケア) ・医療用麻薬や医療機器の迅速な供給が必要
 →常に在庫を用意しておく必要あり
・緊急訪問に対応できる体制が必要

薬局の機能分化と連携で在宅医療を支える

これから2025年に向けて、都市部では高齢者人口が爆発的に増加すると言われています。また、現在は3人に1人ががんで亡くなる時代です。今まで外来に通院し、薬局でお薬をもらっていた患者さんが、在宅医療や在宅緩和ケアを受ける機会が急激に増えていきます。

医療機関は、一次から三次まで分類がされ、医療依存度が高くなればなるほど高次の医療機関へ紹介されたり、受診したりするようになります。ところが、薬局は機能の分化が想定されておらず、すべての医療依存度の患者さんを支えることになっています。そのようなことが、本当にできるのでしょうか?

そもそも薬局数が少ない地域では、どんな医療依存度であっても薬局ががんばらないといけない側面があるかもしれません。ですが、都市部の場合には薬局数もある程度は確保されており、医療機関のように機能を分化しながら、役割を明確にして薬局同士の連携の中で、在宅患者さんを支えていく仕組みを考える必要があると思っています。

つまり、無菌室を完備し、医療用麻薬や医療機材などをある程度常備し、緊急訪問にも対応できる「医療依存度の高い患者さんを主に支える在宅基幹薬局」と、独居や老老介護などの「慢性疾患の患者さんを支える(できれば認知症も含む)一般薬局」との機能分化です(この機能分化は薬局の断裂ではなく、薬局機能はグラデーションになっているイメージです)

慢性疾患の患者さんであれば、薬局のカウンターで接している患者さんとほとんど変わりはなく、一般的な薬局があまり抵抗なく在宅医療へ関わることができるのではないかと思っています。単独の薬局でなく薬局同士の連携の中で、医療依存度に関係なくその地域の在宅患者さんを支えられる仕組みを作る必要があると思っています

 次回は、薬剤師が在宅医療に関わる際に「障壁となっていること」を考えてみたいと思います。


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前田 桂吾
まえだ けいご

株式会社フロンティアファーマシー 薬剤師 執行役員 社長室室長
北里大学薬学部薬学科卒業。中規模の病院に12年間勤め、調剤、製剤、緩和ケア病棟を含む病棟業務に携わる。その後、フロンティアファーマシーに転職。
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