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在宅医療における薬剤師の役割

更新日: 2016年11月9日

【在宅医療】医療が主役ではないチーム医療を目指すVol.4

在宅医療における薬剤師の関わり方を考える連載企画。在宅専門薬局・フロンティアファーマシーで長年現場を担当している前田桂吾氏が、自らの経験を通じて、問題点を語ります。今回のテーマは、在宅医療のチームとその中での薬剤師の立ち位置です。

クリニックに「方向性が違う」と言われ、薬剤師としての悩みに直面

私が在宅専門薬局に転職して数年後、管理薬剤師として、地域の在宅緩和ケアに取り組まれている医師や看護師さんなどと連携を深めていくにつれて、紹介患者さんが増え、訪問できる薬剤師が足りなくなってきました。

その当時は、病院薬剤師から転職した私の感覚として、「在宅緩和ケアに携わるには病院での業務を経験していた方が多職種との連携を行いやすい」との思いがありました。それゆえ、病院薬剤師経験者で、かつ在宅への志が強い人材を積極的に探しており、「在宅緩和ケアをやりたい!」と熱い思いをもって仲間になってくれる薬剤師がぽつぽつと増えてきました。

しかし、いつもお世話になっているクリニックの看護師さんから、「最近、フロンティアさんおかしくない?なにか方向性が違うのよね」と言われ唖然としたのです。

「うちのスタッフは会社に言われて渋々在宅に取り組んでいるわけではなく、自らこの世界に飛び込んできた薬剤師なのに、何が悪いんだろう」とかなり悩みました。

患者さんの残された時間に薬剤師のエゴを押し付けてはいけない

その後、そのクリニックの医師と看護師、弊社のスタッフでの話し合いを持った結果、お互いに新入職者が増えて「心」どころか「顔」も見えていない関係になっていたこと、そして緩和ケアに積極的に関わりたい薬剤師だったからこそ、自分の理想の緩和ケアを知らず知らず患者さんへ押し付けるような形になっていたのだということに気がつきました。

在宅緩和ケアで関わる患者さんは長くても数か月、短いと退院当日にお亡くなりになります。せっかく自宅に帰ってきたのに、それぞれの医療者が「患者さんにしてあげたい・してあげなければならない」と思うことを、それぞれにしてしまったら、患者さんの残された貴重な時間を奪ってしまうではないか、と目から鱗が落ちる思いでした。

病院は効率的に医療を提供するために、患者さんを「管理する」という視点が必要だと思いますが、在宅は文字通り患者さんのホームであり、その時間の流れの中で「医療」が入り込んでいる時間は僅かです。であるにも関わらず、医療者の思うとおりに患者さんを「管理」しようとするのは医療者のエゴだということをこの一件で教えてもらいました。

患者さんには、人生の中で培ってこられた価値観や生活スタイルがあります。在宅の現場は、いかにその価値観や生活スタイルに合わせて医療を提供できるか、患者さんの生活に溶け込ませる形で医療を提供できるかが大切だということを教えられたのです。

チームの中で役割を果たし、後方支援に徹する

その時イメージしたことですが、よく患者さんを中心としてさまざまな職種が患者さんを取り囲むチーム医療の図が出てきますが(患者さんもチームの中に入っている図も最近はあります)、各職種の領域は同じ面積で描かれていることがほとんどです。

病院のチーム医療であれば、○○医師と□□看護師、△△薬剤師、etc.など顔ぶれが一定なので、それぞれの職種が一定の役割を果たしながら阿吽の呼吸で仕事ができると思います。であれば各職種を表す面積は一定でもいいと思いますが、在宅現場では違います。

患者さんごとに在宅医も訪問看護ステーションも薬局もケアマネジャーも異なることが多いのです。つまり患者さんごとに変化するチームの中で、その都度役割を大きくしたり小さくしたり、患者さんに近くなったり遠くなったり、立ち位置を変化させなければならないことに気づかされました。

日頃から連携をしていない初対面のチームの場合には、各職種の業務の隙間に患者さんやご家族を落とさないように、チーム全体を俯瞰しながら薬剤師としての立ち位置や業務をその都度変えていきます。

それとは反対に、いつも連携している多職種でチームを組むことができれば、在宅緩和ケアの場合には、薬剤師の積極的なアプローチは患者さんの貴重な時間を奪ってしまう危険性もあり、医療用麻薬や医療機材の供給、そして薬剤や機材に対する問い合わせへの対応をしっかりと迅速に行い、後方支援に徹することが薬局としての大きな役割であると思ったのです。


もちろん供給だけをすればいいという話ではありません。矛盾しているかもしれませんが、緩和ケアに携わる以上、薬剤師としても患者さんの痛みや呼吸苦などは気になりますし、状態を評価し、適切な薬物治療を提供したい、と思うのは当然です。

でも、もし我々が患者さんの立場だったらどう思うでしょうか?患者さんが「今日は調子も悪いし、あまりいろいろな人と話したくないな」と感じていた時に、薬剤師が「訪問した以上いろいろな評価をしなければ、積極的な<ヒト>へのアプローチをしなければ…」とさまざまな質問をぶつけ、なかなか帰らない、という状況を想像してみてください。

「いつもと同じ仕事をしていれば自分の責任を果たした」という感覚ではなく、チームの方向性・哲学を感じながら、患者さんの価値観や生活スタイルに思いをはせ、それに合わせて薬剤師、一人の人間として患者さんやご家族をサポートしていくことが大切です。

患者さんごとに異なるチームで、いかに患者さんが望む方向にチームの方向性を合わせるか、そして薬剤師としてその方向性の中で「そのチーム」の一員としての役割を果たせるかが、患者さんやご家族に残された貴重な時間を支えるうえでとても重要なことなのです。

次回は、患者さんとの関係の築き方について、私の経験を書きたいと思います。


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前田 桂吾
まえだ けいご

株式会社フロンティアファーマシー 薬剤師 執行役員 社長室室長
北里大学薬学部薬学科卒業。中規模の病院に12年間勤め、調剤、製剤、緩和ケア病棟を含む病棟業務に携わる。その後、フロンティアファーマシーに転職。
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