第6回 これからの薬剤師が目指すのは何か?
在宅医療における薬剤師の関わり方を考える連載コラム。「すべて患者さんから教わってきたこと」と語るのは、緩和ケアを行う在宅専門薬局で実務を重ねる薬剤師 前田 桂吾氏。最終回の今回は、「超高齢多死社会」に求められる医療・薬剤師の役割について語ります。
患者さんの「生」を支える医療を
私が病気を抱えてから約30年。薬剤師になって約20年。人生は不条理だな、と感じることがたくさんあります。「どうしてこんな若くしてこの患者さんは亡くなるのか」、「この残された小さいお子さんはどう成長するのだろう」、「どうしてこの患者さんはつらい目にばかり遭うんだろう」など不条理の連続です。
でも、死や病気は誰にでも訪れるもの。だからこそ、人間の力を駆使して、病気と立ち向かい、自分の人生を「生き切る」お手伝いが必要だと思うのです。つまり医療者が正解だと思う医療を施すことが目的ではなく、患者さんの「生」を支えるという視点です。これは緩和ケアに携わることで教わってきたことです。
患者さんやご家族は、我々医療者を養うためや、自己満足のために病気でつらい思いをしているわけではありません。私たちの仕事は、ある意味では患者さんのつらさの上に成り立っている仕事です。私は今でこそ自分の経験をプラスに捉えて患者さんと接することができるようになりましたが、治療の渦中のエピソードは人に言えないこともたくさんあります。また、自分が子どもを持ったからこそ感じることですが、私が病気をしたことで両親や妹の人生設計を狂わせただろうな、とも思うのです。病気は、患者さん本人だけでなく、家族や周囲の人が思い描いていた人生を狂わせることもあります(もちろん病気をしたことでいい意味で人生が変わることもあると思います)。
病気は人智を超越し、人々の人生を変えてしまうものです。だからこそ、医療に携わる人の免許は、自分の生活の糧としてではなく、患者さんを支え、患者さんから評価されて初めて輝き、そこに評価(お金)が付いてくるのだ、ということをゆめゆめ忘れてはならないと思います。いくら医療と言ってても…