在宅薬剤師の役割は、チーム医療で患者さんの“日常”を守ること

在宅医療において、訪問時の苦労話・辛い話は尽きることがありません。家が汚れていて靴下が正体不明の液体で濡れたり、訪問時にトイレで患者が転倒し起き上がれなくなっていたり、私自身も色々な経験をしました。先輩には、輸液を背負って雪の中を歩いて訪問した人や訪問時に患者さんが亡くなっていた経験をした人もいます。中でも特に辛いのは、小児や若い患者さんを看取ったときです。残される家族のことを思い胸が締め付けられます。在宅医療の現場はそんな苦労の繰り返しです。
しかし、在宅医療をやめたいかと問われれば答えはノーです。今回のコラム執筆に当たり、在宅医療に従事する多くの同僚や先輩に話を聞きましたが、全員から「こんな家に二度と行くか!と思ったことは一度もない」という答えが返ってきました。
では、なぜ苦労も多い在宅医療を続けられるのでしょうか。それは受ける苦労以上に、患者さんのQOLに貢献できているというやりがいがあるからです。
私たち薬剤師は大学進学の時に医療職にあこがれ受験勉強に明け暮れ、薬学部に入学してなお努力を続け薬剤師になりました。そんな私達には、患者さんのためなら苦労をいとわない“血”が流れているのかもしれません。
この連載ではそんな在宅医療に携わる薬剤師が、どんな思いで患者さんの家に訪問しているのかを追体験していただければと思います。