糖尿病の薬②薬剤の選ぶ5つのポイントとは?
前回の記事では、経口の糖尿病治療薬について、分類ごとの特徴や注意点をお伝えしましたが、「各薬剤の特徴は理解できたけれど、数多くある糖尿病治療薬の中から、処方医はどのように薬剤を選択しているのだろう」と疑問に思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
糖尿病の治療では、各薬剤の特徴を理解したうえで、患者さん個々の病態や患者背景を考慮し、適切な薬剤を選択していきます。今回は、糖尿病治療薬の選び方に焦点をあて、ポイントをわかりやすく解説します。
糖尿病治療の目標とは?1)2)
糖尿病治療の目標は、糖尿病のない人と変わらない生活の質(QOL:Quality Of Life)を保ち、寿命を全うすることです。
目標を達成するためには、心理面での負担軽減にも努め、良好な血糖コントロールを長期的に維持し、合併症の発症や進展を防ぐことが大切です。
治療の目標数値は、年齢、罹病期間、臓器障害、治療薬による副作用のリスク、サポート体制などを総合的に評価して個別に設定されるべきものであり、一律に定めることはできません。
日本糖尿病学会では、妊娠例を除く成人に対する血糖コントロールの目標値の目安を、以下のように示しています。
<血糖コントロールの目標値の目安>
血糖正常化を目指す際の目標値 (食事療法や運動療法のみ、もしくは薬物療法中でも 低血糖などの副作用がなく達成可能な場合) |
HbA1c 6.0 %未満 |
合併症を予防するための目標値 | HbA1c7.0%未満 |
治療強化が困難な際の目標値 (低血糖その他の理由で治療の強化が難しい場合) |
HbA1c8.0%未満 |
糖尿病薬を使う基準2) ~インスリンの絶対的適応と相対的適応
経口の糖尿病治療薬は、インスリンによる治療が必須ではなく、十分な食事療法、運動療法を2~3ヵ月間行っても目標とする血糖コントロールが達成できない場合に適応となります。
インスリンによる治療が必須である状態は、インスリン療法の絶対的適応と相対的適応に分けられ、主に以下のような場合が当てはまります。