糖尿病治療薬の特殊な注意事項を知ろう!すぐに役立つ服薬指導ポイントを解説

前回の記事では、シックデイ時の対応のポイントについて解説しながら、重要なシックデイルールのひとつとして「BG薬とSGLT2阻害薬は中止すること」をお伝えしました。では、その他の糖尿病治療薬に関して、服薬指導の際に説明すべき特殊な注意事項にはどのようなものがあるのでしょうか。
シリーズ第1回では、糖尿病治療薬の分類と特徴について解説しましたが、今回は、特殊な注意事項に焦点を当て、各分類別に服薬指導のポイントを解説します。
アマリール®やシュアポスト®など「インスリン分泌促進薬」の特殊な注意事項とは?
① SU薬(グリベンクラミド/オイグルコン®、グリメピリド/アマリール®など)
SU薬の最大の注意点は、低血糖を起こしやすいことです。2型糖尿病患者での重症低血糖の原因薬剤は、インスリン(60.8%)に次いでSU薬(33.1%)であると報告されています1)。
また、SU薬による低血糖は遷延しやすいため2)3)、低血糖の対応について十分に説明することが大切です。
② グリニド薬(ミチグリニド/グルファスト®、レパグリニド/シュアポスト®など)
グリニド薬は、服用方法に特に注意が必要な薬剤です。食後に服用すると吸収が阻害され十分な効果が得られず、食前30分では食事開始前に低血糖を起こす場合があります4)。必ず食直前に服用するように伝えてください。
③ GLP-1受容体作動薬(セマグルチド/リベルサス®)5)6)
経口セマグルチドは服用方法が特殊です。ポイントは、「1日のうちの最初の食事または飲水の前に、空腹の状態で服用すること」「コップ約半分の水(約120mL以下)で服用すること」「服用時および服用後少なくとも30分は、飲食や他の薬剤の経口摂取を避けること」「かみ砕いて服用してはいけないこと」です。
服用前後の食事摂取や、服用時の飲水量は、セマグルチドの吸収に影響します。効果を正しく発揮させるため、患者さんに正しい服用方法を理解・実行していただくことが大切です。
服薬指導の際には、生活の中で経口セマグルチドの服用を定着させられるよう、以下のようにアドバイスするとよいでしょう。
- 枕元や洗面所など、朝起きてすぐ、目に付きやすい場所に薬を置いておく。
- 普段使っているコップで、120mLがどの程度なのか測っておく。
- 服用後の30分は、新聞を読む時間、家事をする時間、通勤する時間など、患者さんそれぞれの生活パターンに適した過ごし方を見つけていただく。
経口セマグルチドは、胃腸障害の発現を軽減するため、1日1回3mgから開始し、4週間以上投与した後、維持用量である1日1回7mgに増量する薬剤です。
投与開始時には「胃腸障害を軽減するため低用量から開始すること」を伝えておくと、副作用への不安軽減や増量時の疑問解消につながります。
④ DPP-4阻害薬(シタグリプチン/ジャヌビア®、リナグリプチン/トラゼンタ®など)
DPP-4阻害薬の服薬指導の際にお伝えすべき特殊な注意事項として、まれに水疱性類天疱瘡を発症することが挙げられます4)。そう痒を伴う紅斑、水疱等があらわれた場合、すぐに主治医に相談するよう説明しておくと安心です7)。
消化管蠕動低下により腸閉塞をきたした例や急性膵炎の発症例が報告されており、消化器症状にも注意が必要です8)。嘔気・嘔吐、腹部膨満感などの消化器症状が起きた場合には、一旦服用を中止し主治医に相談するよう説明しましょう。