第106回薬剤師国試問題
< 問232~233 >
HUSの診断に至った血液検査値に関する記述で誤っているのは?
5歳男児。身長105 cm、体重21 kg。4日前から下痢が続いており、腹痛を伴う血便が見られた。さらに顔色が悪く、排尿がないことに母親が気づき救急病院を受診した。母親に聴取したところ、7日前に家族で焼肉を食べに行き、両親及び兄も軽い下痢を呈していることが分かった。主治医は、血液検査結果をふまえ、溶血性尿毒症症候群(HUS)と診断した。
体温37.3℃、脈拍120/分、血圧125/70 mmHg、呼吸数24/分。
尿所見:蛋白(2+)、ケトン体(1+)、潜血(3+)。
< 問232 >
HUSの診断に至った血液検査値に関する記述のうち、誤っているのはどれか。1つ選べ。
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クレアチニン値が基準値より高い。
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LDH値が基準値より高い。
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血小板数が基準値より少ない。
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間接ビリルビン値が基準値より低い。
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AST値が基準値より高い。
回答・解説
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男児が4日前から下痢をしていること、腹痛を伴う血便が見られること、7日前に喫食した焼き肉で家族も下痢が起こっていることから、腸管出血性大腸菌(EHEC)による食中毒と考えられる。この食中毒は重症化するとHUSを合併することがある。
1 正。急性腎障害により、クレアチニン値が上昇する。
2 正。HUSによる血球細胞の破壊により、LDH値が上昇する。
3 正。ベロ毒素による血管内皮細胞障害において血小板血栓が多発し、血小板数が減少する。
4 誤。HUSによる赤血球の破壊により、間接ビリルビン値が上昇する。
5 正。ASTは赤血球中に多く含まれており、溶血により高値を示す。
以下、付属問題
< 問233 >
この疾病及び病因物質に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
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75℃、1分間以上の加熱で死滅する。
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ヒトからヒトへの感染は起こらない。
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この疾病の予防には、トキソイドワクチンの接種が推奨されている。
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牛の肝臓には、この病因物質が存在する可能性があるため、生食用として販売・提供することは食品衛生法で禁止されている。
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2015~2019年における病因物質別食中毒発生件数で最も多いのは、この病因物質によるものである。
回答・解説
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1. 75℃、1分間以上の加熱で死滅する。
4. 牛の肝臓には、この病因物質が存在する可能性があるため、生食用として販売・提供することは食品衛生法で禁止されている。
1 正。腸管出血性大腸菌は、食品の中心温度75℃、1分間以上の加熱で死滅する。
2 誤。腸管出血性大腸菌の感染は、飲食物を介した経口感染が多いが、患者の糞便に含まれる大腸菌が直接又は間接的に口から入ることによって100個程度の菌数でも感染することがあるため、ヒトからヒトへの感染を起こす。
3 誤。現在、腸管出血性大腸菌感染症に対するワクチンは実用化されていない。
4 正。牛の肝臓には、腸管出血性大腸菌が検出されることから、2012年から食品衛生法に基づいて、牛のレバーを生食用として販売・提供することは禁止されている。
5 誤。2015~2019年における病因物質別食中毒発生件数で最も多いのは、カンピロバクター・ジェジュニ/コリの1,582件である。腸管出血性大腸菌は100件である。
※本クイズの内容は2021年10月作成時点のものであり,ご覧いただいた時点で最新情報ではない可能性がございます。