【2024年度改定版】調剤後薬剤管理指導料の算定要件や改定内容をわかりやすく解説

2024年度の診療報酬改定において多くの変更が加えられた、「調剤後薬剤管理指導料」。
近年、薬剤師の対人業務の充実と薬局・医療機関の連携強化を目指す中で、2020年に糖尿病患者への取り組みとして、本加算の前身である「調剤後薬剤管理指導加算」が新設されました。
今回は2024年度改定の内容とともに、算定要件やフォローアップの流れについても解説をしていきます。
調剤後薬剤管理指導料とは
調剤後薬剤管理指導料とは、糖尿病薬や慢性心不全治療薬を使用している患者に対し、薬剤師が調剤後に症状の変化や副作用の有無などを確認し、必要な薬学的管理を行った際に算定できる薬学管理料です。
変更後の処方薬や新規薬を服用すると、症状の変化や副作用が現れやすく、調剤後にも継続して患者の体調を確認していくことは、安全な治療を提供していく上でもとても重要です。
2019年に「服薬期間中のフォローアップ」が義務化され、2020年新設の「調剤後薬剤管理指導加算」では、特に服薬リスクの高いSU剤やインスリン製剤を使用する糖尿病患者が対象となりました。
この取り組みを充実させていくために、2024年度の診療報酬改定では、対象となる患者の範囲が拡大されるなど、多くの変更が加えられました。
2024年度診療報酬改定での変更点
2024年度の診療報酬改定では以下の3点が変更になりました。それぞれについて詳しく見ていきましょう。
1.服薬管理指導料の加算から独立した項目に
以前は服薬管理指導料の加算項目である「調剤後薬剤管理指導加算」でしたが、今回の改定では、その重要性がより一層評価され、「調剤後薬剤管理指導料」として、薬学管理料に新設されました。
2.糖尿病患者の対象薬剤の範囲拡大
調剤後薬剤管理指導加算では、対象となる薬剤がSU剤とインスリン製剤のみでしたが、今回の改定で、対象薬剤の範囲が「糖尿病用剤」に変更されました。
糖尿病患者は日常的な血糖コントロールや、食生活の見直し、低血糖への対応など、服用薬を含めた治療の管理がとても重要です。SU剤やインスリン製剤を使用している患者にとどまらず、すべての糖尿病患者に対して服薬の重要性とリスクを十分に理解し、薬剤師が継続的にサポートをしていくことが期待されています。
3.慢性心不全患者も算定対象に
従来の調剤後薬剤管理指導加算では、対象患者はSU剤やインスリン製剤を使用している糖尿病患者のみでしたが、今回の改定で慢性心不全患者も算定対象となりました。
新たに慢性心不全の患者が算定対象として追加された背景には、薬物治療を適切に継続し、症状を安定させるとともに、特に入院歴を有する慢性心不全患者の再入院を抑制する目的があります。
今回の改定にて追加となった対象患者は、具体的には「心疾患による入院歴のある作用機序が異なる複数の治療薬の処方を受けている慢性心不全患者」であり、ここでいう循環器系疾患にかかる治療薬には以下のようなものが含まれます。
循環器系疾患の対象となる治療薬
- アンジオテンシンⅡ受容体拮抗剤(ARB)/アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤
- β1受容体遮断薬
- ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)
- ナトリウム・ブドウ糖共輸送担体2(SGLT2)阻害薬
- アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI) 等
出典:2021年JCS/JHFSガイドライン フォーカスアップデート版急性・慢性心不全診療(https://www.asas.or.jp/jhfs/pdf/guideline_20220308_1.pdf) / 日本循環器学会/日本心不全学会合同ガイドライン
参照:ガイドラインシリーズ (https://www.j-circ.or.jp/guideline/guideline-series/)|日本循環器学会
参照:ステートメント・ガイドライン|日本心不全
基本的なフォローアップの流れは糖尿病患者に対して行う場合と同様ですが、慢性心不全の患者に対しては、特に退院後に医療機関と連携をとっていくことが期待されています。
後ほど退院後の連携におけるポイントや流れを解説します。
参照:令和6年度診療報酬改定の概要【調剤】 / 厚生労働省
参照:調剤報酬点数表に関する事項 / 厚生労働省
調剤後薬剤管理指導料の現状と2024年度改定内容に関してさらに詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
調剤後薬剤管理指導料の点数と対象患者
調剤後薬剤管理指導料は2区分あり、対象患者と点数は以下の通りです。
区分 | 対象患者 | 点数 |
調剤後薬剤管理指導料1 | 糖尿病患者、糖尿病用剤の新たな処方または投薬内容の変更あり | 月1回まで60点 |
調剤後薬剤管理指導料2 |
慢性心不全患者、心疾患による入院経験あり 作用機序が異なる循環器官用薬等の複数の治療薬の処方を受けている慢性心不全 |
参照:調剤報酬点数表 / 厚生労働省
調剤後薬剤管理指導料の算定要件
調剤後薬剤管理指導料を算定するためには、調剤後に対象患者に対して服用状況や副作用の有無等について確認を行い、必要な薬学的管理や指導を行うことが求められています。
以下の4つの条件が必須となりますので、確認しておきましょう。
1.地域支援体制加算の届出をおこなっている
調剤後薬剤管理指導料を算定するためには、地域支援体制加算の届出をおこなっている必要があります。地域支援体制加算とは、地域の医療を支える薬局の取り組みを評価するもので、調剤基本料の加算項目です。
調剤後薬剤管理指導料を算定する際は地域支援体制加算の届出をおこなっているか確認を行うようにしましょう。
2.医師の指示や患者等の求めにより実施する
調剤後薬剤管理指導料は以下の場合に算定が可能です。
- 保険医療機関からの求めがあった場合
- 患者もしくはその家族等の求めがあり、保険薬剤師が調剤後の薬剤管理指導を必要と認め、医師の了承を得た場合
このように、薬剤師が対象の患者に対してフォローアップをするときは、医師の指示や患者の求めに応じたものである必要があります。
また薬剤師が必要性を認め、実施する場合には、患者の同意をとった上で、処方医に了承をとることで調剤後薬剤管理指導料を算定することができます。
3.フォローアップは電話等で行う
調剤後に薬の使用状況や体調変化、副作用の有無などを確認する際は、電話や訪問といった直接コミュニケーションがとれる方法で患者や家族に対して行うことが求められています。
メールやチャット等で一方的に情報を発信する形では算定対象とはならないので、注意しましょう。
後日フォローアップの電話等を行うことが決まった際は、スムーズに連絡が取れるよう、あらかじめ日時も患者と相談して決めておくと良いでしょう。
4.病院へ文書によるフィードバックを行う
フォローアップで得た患者に関する情報は、医療機関へ文書にて提供する必要があります。一般的な内容は以下のようなものです。報告書の内容に特別な決まりはないため、薬剤師の判断で必要な情報を伝えると良いでしょう。
【報告するべき内容】
- 服用状況や体調変化
- 副作用発現の有無
- 対象薬以外の情報(食事や生活習慣など)
- 必要に応じた処方提案
- 薬学管理に密接に関連する情報(体重の増減、塩分摂取、飲水の状況など)
重大な副作用など緊急性が高いと思われる情報については、文書ではなく、電話で直接連絡し、服薬継続や受診の必要性を医師に問い合わせましょう。
参照:令和6年度診療報酬改定の概要【調剤】 |厚生労働省
調剤後薬剤管理指導料の算定要件についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてください。
慢性心不全患者に対する退院後の医療機関との連携
2024年度の診療報酬改定において、「心疾患による入院歴のある作用機序が異なる複数の治療薬の処方を受けている慢性心不全患者」が新たに調剤後薬剤管理指導料の算定対象となりましたが、特に薬剤師による退院後のフォローアップが期待されています。
退院時に医療機関から情報を得て、薬局でその後の継続した患者フォローアップを実施することで、症状の悪化・再入院の回避等に繋げることが期待できるでしょう。
医療機関との連携方法は以下を参考にしてみてください。
1.退院時に医療機関から薬局へ向けた情報提供
医療機関では、退院時に薬局に対して「心不全フォローアップシート」及び「薬剤管理サマリー」を発行し、入院中等の服薬に係る情報を提供します。これは、医療機関における退院時薬剤情報連携加算の算定要件の一つでもあります。
心不全フォローアップシートは病院ごとに独自の様式が用いられている場合が多いですが、一般的なチェック項目は以下の通りです。
心不全フォローアップシートにおけるチェック項目
- 薬の飲み忘れの有無
- 塩分過剰摂取の有無
- 過労の有無
- 禁煙の実施
- 節酒の実施
- 体重測定の有無
- 浮腫の確認
- 労作時の息切れの確認
- BNPの推移
- 心不全増悪時の受診目安の理解
2.「心不全フォローアップシート」を用いて退院後のセルフケアの状況を確認
薬局では、医療機関から入院中の使用薬剤や退院処方に関する情報を受け取り、心不全フォローアップシートを用いた継続的な経過確認の依頼を受けます。そのため患者に対し、退院後のセルフケア状況を定期的に確認していきましょう。
セルフケアが十分にできていない場合は、必要性を十分に説明するなどして、再入院回避に薬剤師が貢献していくことが期待されています。
参照:令和6年度診療報酬改定の概要【調剤】 / 厚生労働省
調剤後薬剤管理指導料が算定できない例
ここでは、調剤後薬剤管理指導料が算定できないケースについて見ていきましょう。
併算定ができない項目を算定する場合
調剤後薬剤管理指導料は、以下の項目を算定している場合はあわせて算定することはできません。
- かかりつけ薬剤師包括管理料
- 服薬情報等提供料
※調剤後薬剤管理指導料の算定に関わる医療機関への情報提供については算定不可 - 特別調剤基本料A
※不動産取引等その他特別な関係を有する医療機関に情報提供を行った場合 - 特別調剤基本料B
参照:調剤報酬点数表に関する事項 / 厚生労働省
調剤日と同じ日にフォローアップを行った場合
調剤後薬剤管理指導料は、調剤日と同日に電話確認を行った場合は算定できません。その理由として、服用後すぐには症状の変化や副作用の発現が起こる可能性は低く、服薬による経過を判断するには不十分であると考えられるからです。
患者と電話等での経過確認の日程を決める際は、薬の種類にもよりますが、多くの場合まずは1週間程度を目安とすると良いでしょう。その後も次回来局までに継続的に確認が必要と判断する場合は、定期的に連絡をし、確認を行いましょう。
調剤後薬剤管理指導料に関する疑義解釈
- 心疾患による入院歴のある作用機序が異なる複数の治療薬の処方を受けている慢性心不全患者に、新たに糖尿病用剤が処方等された場合に、それぞれの疾患に関して必要な薬学的管理指導等を行った場合に、調剤後薬剤管理指導料「1」及び「2」を同一月に算定可能か。
- それぞれの要件を満たせば算定可。ただし、単に慢性心不全の治療にも用いられることがある糖尿病剤が処方されているだけでは要件を満たしたことにはならないことに留意すること。
出典:疑義解釈資料の送付について(その1) 令和6年3月28日 / 厚生労働省
調剤後のフォローアップでより安全な医療の提供を
調剤後薬剤管理指導料は、薬剤師による患者の治療に対する継続的なサポートが期待されている評価項目です。2024年度の改定では、糖尿病薬の範囲が拡大したことに加え、慢性心不全患者も算定対象となりました。
調剤後のフォローアップを通じて、患者一人ひとりがより安心して治療を続けていけるよう、薬剤師としての役割を果たしていきましょう。