一人薬剤師とは?調剤薬局の一人薬剤師は法律違反?など、疑問を解決


一人薬剤師とは文字通り1人ですべてを行う薬剤師。聞いただけで、大変そうなイメージが浮かびますね。
確かに一人薬剤師はプレッシャーも大きく、向き不向きがある働き方です。
でも、工夫次第でとても働きやすくメリットの多い働き方だと感じることもできます。
調剤薬局で働く一人薬剤師のメリットとデメリット、さらにその魅力について解説します。
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調剤薬局で働く一人薬剤師とは

一人薬剤師とは、通常は複数の薬剤師で分担して行う仕事をすべて1人で行う薬剤師のことです。
どのような働き方なのか、具体的に見てみましょう。
一人薬剤師の働き方
調剤薬局で働く薬剤師の主な仕事には、調剤、監査、服薬指導、薬歴記入などがあります。
一般的な調剤薬局では、ダブルチェックを兼ねて調剤と監査の担当を分けていますが、一人薬剤師はこれらの仕事をすべて1人で行います。
受付の事務員が配置されている店舗であれば、会計等は任せることができますが、そうでなければ会計やレセプト請求も自分で行う必要があります。
加えて、薬の発注や在庫管理といった店舗運営のための業務もこなさなければなりません。
また、調剤薬局には1店舗につき1人、管理薬剤師を置かなければなりません。そのため、一人薬剤師は管理薬剤師の資格を持っている必要があります。
つまり、一人薬剤師は薬局の責任者でもあるのです。
実際に一人薬剤師の店舗は全国でどのくらいあるのでしょうか。
厚生労働省による全国1472施設の薬局を対象にした調査では、常勤の薬剤師が1人のみの薬局は485施設(32.9%)となっており、決して少なくない数であることがわかります。
特に、地方などの薬剤師不足が深刻な地域では、一人薬剤師の店舗の割合がやや多いようです。
また、常勤の薬剤師が2人以下の薬局を含めると、全体の62.4%になります。
少ない人数の薬剤師で対応している店舗は意外に多いことがわかります。
参照:「薬剤師の需給動向把握事業における 調査結果概要」 /厚生労働省
一人薬剤師は実は法律違反?
薬局を1人で運営することは法律で禁じられてはいないので、一人薬剤師という働き方自体は、法律違反にはなりません。
ただ、薬剤師1人あたりの処方箋枚数は1日40枚までとの決まりがあるため、それを超えない範囲であることが条件です。
基本的には、1人で運営するのに支障がない程度の業務量と判断された店舗が、一人薬剤師の体制を取っていることが多いです。
ただし、業務量が多すぎて勤務時間内に業務を終了できなかったり、決められた休憩時間を確保できない状態で営業したりしている場合は、労働基準法に違反している可能性があります。
こんなにある!調剤薬局で働く一人薬剤師のメリット

大変そうに思える一人薬剤師ですが、実は思わぬメリットもあります。
年収、スキルアップ、人間関係など、薬剤師が抱えがちな悩みが一人薬剤師なら解決できるかもしれません。
人間関係にわずらわされずにすむ
一般的な調剤薬局は、複数人のスタッフが限られたスペース内で過ごすため、良好な人間関係を維持するためにいろいろと気疲れもしやすいでしょう。
一度トラブルが起こってしまうと職場の雰囲気も悪くなるため、働きにくさを感じることもあります。
その点、一人薬剤師なら人間関係にわずらわされずにすみます。
周りに気を遣うのが苦手、人に気を遣い過ぎて疲れるという人にはおすすめの働き方です。
自分のペースで働ける
すべての仕事を1人で行うのは大変そうに思えますが、他の人と仕事を分担したり連携したりする必要がないため、好きなやり方、好きなペースで仕事をすることができます。
ほかのスタッフのペースを気にすることなく、のびのびと働けます。
年収が高め
一人薬剤師は通常業務を1人でこなさなければならない上に、店舗の責任者として運営業務にも携わるため、責任も重くなります。
その分、給与面での待遇は良く、一般の薬剤師よりも年収が高くなる傾向にあります。
さらに、一人薬剤師は管理薬剤師を兼ねているため役職手当が加算されます。
一人薬剤師の年収は、他の薬剤師よりもおよそ50〜100万程度高くなる可能性があります。
幅広いスキルを身につけることができる
一般的な調剤薬局では、薬剤師の仕事は分担制のため、経験することのない分野が出てくることもあります。
それに対して、一人薬剤師はすべての業務を1人でこなすため、薬剤師に必要なスキルをまんべんなく身につけることができます。
また、在庫管理や薬の発注業務など、店舗の運営方法も学ぶことができるため、経営者としての経験も得られます。
今後のキャリアアップや、独立経営にも役立てることができ、将来の可能性につなげることができるでしょう。
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やっぱり大変…調剤薬局で働く一人薬剤師のデメリット

メリットが大きいとはいえ、やはりデメリットもあるのが一人薬剤師という仕事です。
何が一番大変なのか、一人薬剤師のデメリットについて見ていきましょう。
休憩や休みを取りにくい
一人薬剤師は代わりに対応してくれる薬剤師がいないため、トイレ休憩や昼休憩に入りにくいというデメリットがあります。
たとえ休憩中であっても、患者さんの来局があれば対応しなければなりません。
また、有給休暇が取りにくいのもデメリットの1つでしょう。
特に、急な都合や体調不良等で休まざるを得ないときなど、代わりの要員がすぐには見つからないこともあります。
他店との応援体制が整っていれば別ですが、休暇の取り方に関しては融通が利きにくい面があります。
調剤過誤のリスクが高くなる
調剤に関しては、他のスタッフによるダブルチェックができないため、常に調剤過誤のリスクを頭に入れておく必要があります。
チェック漏れによる調剤の間違いは、そのまま患者さんの健康や命に直結します。
計量ミスや処方箋の取り違え等が起こらないよう、細心の注意を払ってチェックする必要があります。
仕事が重なると忙しくプレッシャーを感じる
患者さんの来客が重なり店舗内が込み合ってきても、他のスタッフによるサポートはありません。そのため非常にあわただしくなります。
すべての業務をスピーディーかつ正確にこなさなければならず、しかもミスが許されないので、精神的な負担が大きくなります。
場合によっては患者さんを長く待たせてしまうことにもなりかねず、プレッシャーを感じてしまうこともあるでしょう。
忙しいときは服薬指導をしている時間がない
患者さん一人ひとりの話を丁寧に聞き取り、じっくり服薬指導をしたいと思っていても、待っている患者さんが多いとそういうわけにはいきません。
次の患者さんをあまり待たせすぎると、クレームにつながる可能性もあります。
気持ちの余裕を失うと、患者さんへの対応も余裕のないものになりがちです。
そのため、十分な服薬指導ができないというジレンマを抱えてしまうことがあります。
一人薬剤師のデメリット、どう解消する?

一人薬剤師のデメリットは、工夫次第で解消できるものもあります。
どのような工夫ができるか考えてみましょう。
ミスの出にくいシステムを作っておく
調剤ミスを防ぐ対策として、自分で何重にもチェックできる仕組みを作っておきましょう。
たとえば、調剤と監査をひとつながりの作業にしてしまうと、ミスを見逃してしまいがちです。
監査のときは、あえて調剤とは別の場所に移動してみてはどうでしょうか。
場所を変えることで視点も変わり、あらたな気持ちでチェックすることができます。
また、声に出して確認する、指差し確認する、メモを残す等、自分でできるダブルチェックを随所に取り入れてみましょう。
カルテ入力をしながらの再チェックや、服薬指導をしながら患者さんと一緒にチェックする方法も有効です。
他のスタッフに協力してもらう
事務スタッフがいる場合は、会計や電話応対などの事務作業を担当してもらうことで、調剤業務に専念することができます。
また、ピッキングや一包化の作業については、薬剤師資格を持たないスタッフが行っても問題ないとされています※。
忙しいときは、可能な範囲内で他のスタッフに協力してもらうことで、気持ちに余裕を持って調剤や服薬指導を行うことができます。
参照元:「調剤業務のあり方について」薬生総発0402第1号 /厚生労働省
監査システムを導入する
調剤機器や監査システムを導入することで、一人薬剤師の負担を軽減することができます。
システムの導入により業務が効率化されれば、調剤やダブルチェックの時間が短縮され、その分服薬指導に十分な時間をあてることができるようになります。
ただし、これらの機器の導入にはかなりの費用がかかるため、経営側とよく相談してみましょう。
調剤薬局で働く一人薬剤師に向いている人・向いていない人

一人薬剤師のメリット、デメリット、またデメリットを補う工夫の仕方について見てきました。
これらを踏まえたうえで、一人薬剤師に向いている人の特徴を挙げるなら、次のようになります。
- 職場の人間関係に悩まされたくない人
- 他人のペースに惑わされず、自分のペースで仕事がしたい人
- プレッシャーに強く、混雑時にも冷静に対処できる人
- 薬剤師として幅広いスキルを身につけたい人
- 責任が重くても高収入を得たい人
また、一人薬剤師にはあまり向いていない人の特徴を挙げるなら、次のようになるでしょう。
- 混雑時に1人で対応することに強いプレッシャーを感じる人
- 仲間と一緒のほうが働きやすいと感じる人
- 休憩や休暇を希望通りに取りたい人
一人薬剤師は、向き不向きが明確に表れやすい働き方です。
一人薬剤師にチャレンジする際には、自分が一人薬剤師に向いているかどうかを改めて考えてみましょう。
調剤薬局で一人薬剤師がつらいと思ったときの対処法は?

一人薬剤師はメリットがあるとはいえ、実際に働いてみると業務がハードだったりプレッシャーが大きすぎたりして、やはり自分には向いていないと感じることもあります。
一人薬剤師として働くことがつらくなったときは、どのように対処すればよいのでしょうか。
他店舗への異動を希望する
まずは、一人薬剤師ではない店舗への異動を希望してみてはいかがでしょうか。
チェーン薬局なら、薬剤師が複数人配置されている店舗もあるでしょう。
その際は、時間帯や曜日によって一人薬剤師になる勤務体制になってはいないか、よく確認しておきましょう。そうしないと、せっかく異動しても再び一人薬剤師を任される可能性が出てきてしまいます。
転職する
他店への異動が難しい場合は、転職を視野に入れてみてもいいでしょう。
一人薬剤師の経験は、薬剤師としては大きなアピールポイントになります。
調剤スキルのみならず、在庫管理や店舗運営のスキルを持っている一人薬剤師は、高待遇で転職できる可能性が高いです。
転職サイト等を上手に利用しながら、自分の希望に合った職場を見つけましょう。
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まとめ

調剤薬局で働く一人薬剤師は、コツさえつかめば自分のペースでのびのびと働くことができます。
他人の動向を気にすることなく、1人で作業するのが好きな人には魅力的な働き方でしょう。
混雑時の対応や調剤過誤のリスク等、大変さはありますが、工夫次第でミスを防ぐことは可能ですし、何より一人薬剤師としての経験とスキルは、今後のキャリアアップにおいて非常に強みになります。
自分が一人薬剤師に向いているタイプだと思う人は、スキルアップのチャンスととらえて前向きに検討してみてはいかがでしょうか。
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