心理学の専門家に聞く「共感できるコミュニケーション術」
せっかく豊富な知識や経験があるのに「コミュニケーション」が苦手で、なかなかうまく患者さんに接することができない、地域医療に貢献することができない…そんな悩みを抱えている薬剤師は多いと思います。
話し方や接し方が上手で、多くの患者さんの心を掴む薬剤師、医師や看護師からも頼られる薬剤師、地域イベントで人気の薬剤師と、いったい何が違うのでしょうか。
そこには、”埋めることができないほどの大きな溝”はありません。実は、ほんのちょっとの心がけ、ほんのちょっとの工夫で、相手に与える印象は大きく変えることができるのです。
そこで本連載では、様々な職種の「接客の達人」に、薬剤師にこそ取り組んでほしい接客のコツを色々と語っていただきます。コミュニケーションに苦手意識を抱いている人は、ぜひ真似できるところから業務に取り入れていただければと思います。
臨床心理士/公認心理士のK.Hさんに聞く、薬剤師の接客術
第五回目に続いて心理士のK.Hさんに、薬剤師に役立つコミュニケーションのコツをおうかがいしていきます。こちらの連載のインタビューは三回目ですが、皆さんが根底に同じことを考えながらお客さんやクライエントさんの対応をしているのではないかと感じています。そう思わせるキーワードが今回も登場しました。
対物から対人へと、薬剤師の仕事がシフトする中、今回のインタビューでお話いただいたことはとても重要であると思います。日々の患者さん対応やスタッフとのコミュニケーションをより良くするために、こちらの記事を参考にしてみてください。
お話を伺った方
K.Hさん
学校の教員を経験した後、臨床心理士、公認心理士の資格を取得。 NPO法人やスクールカウンセラーなどで活躍しながら、親子のコミュニケーションについての助言やアドバイス、家族や教職員にもアドバイスを行っている。
相手に共感するとはどういうことか
【参照】
第1回 まずは第一歩!患者さんは「ここ!」を見ている
第2回 清潔感のある印象で患者さんの悩みを引き出す
“共感”という言葉はよく耳にしますが、私たちは何とかして相手の気持ちを分かろうとしていることが多いのではないかと思います。そうではなく、他人軸で物事を考えた際に、薬剤師と話をしている患者さん自身が分かってもらえていると感じてもらうことが大事であるということが分かりました。
相手のことを知ろうとしているという姿勢を少しずつ伝えながら、前回の記事で紹介した個別性を意識してコミュニケーションを取ることが大事だと思います。
コミュニケーションを円滑にするためのちょっとしたコツ
コミュニケーションを知識として蓄えていくというのはとても新鮮なお話でした。この考え方であれば、コミュニケーションが苦手と考えていた方も、コツコツと努力することで今よりもさらに良い対応をすることができるでしょう。
ほんの些細な言い回しでも良いので、上手だなと思ったフレーズなどを記憶して患者さんやスタッフに使ってみましょう。それが円滑なコミュニケーションに繋がることで、良い循環が生まれていくはずです。
良いコミュニケーションができるように一つずつレベルアップを
「良いコミュニケーション」という言葉だけを聞くと、とても難しいように感じてしまいます。しかし、今回のお話をお伺いしていて、「相手を完全に分かろうとするのではなく、分かってもらえていると感じてもらうこと」や「コミュニケーションを知識として蓄えていく」というコツは誰にでも取り組めるものだと感じました。
これまでの薬剤師の学習を考えると、急に色々なことが分かったり、できるようになったというわけではないでしょう。薬剤の成分名、効能効果、用法、体内動態、併用など少しずつレベルアップを重ねてきたので今の自分があるはずです。コミュニケーションも同じように、自分のできることを一つずつ積み重ねてレベルアップしてもらえたらと思います。
次回は、IT企業に勤務する営業職の方に、コミュニケーションで気をつけていることやこれまでに失敗したことなどをお伺いします。コミュニケーションに自信があったにも関わらず、法人営業の世界で最初はうまくいかなかったようです。そんな状況をどのように乗り越えたのかについてインタビューしてお伝えします。