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糖尿病の豆知識

更新日: 2020年4月1日 柳瀬 昌樹

【第10回】 番外編―「私が糖尿病に関する専門資格を取った理由とその後」

【第10回】 番外編―「私が糖尿病に関する専門資格を取った理由とその後」の画像

糖尿病の世界では長年、患者さんの総死亡を減少させる(長生きできる)治療法の確立を目指してきました。ここ最近、SGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬により総死亡を抑制できたという臨床試験結果が出たことで、各国のガイドラインなどが大きく変わってきています。
糖尿病療養指導士、糖尿病薬物療法認定薬剤師、抗菌化学療法認定薬剤師の資格を持ち、日本糖尿病学会、日本くすりと糖尿病学会、日本化学療法学会に所属する著者が薬剤師の皆さんに知っておいて欲しい糖尿病治療のポイントをご紹介します。

この糖尿病豆知識シリーズも記念すべき10回目を迎えることができました。ここまで読んでいただきました読者のみなさまに感謝申し上げます。
さて、記念すべき10回目は、番外編として、私が糖尿病に関する専門資格を取った理由と、取得して感じていることについて話していきたいと思います。


【第10回】 番外編―「私が糖尿病に関する専門資格を取った理由とその後」の画像2

専門医だけでカバーできない!?私が糖尿病の専門資格を取った理由

まず、みなさまは日本にどのくらいの糖尿病患者さんがおられるかご存知でしょうか?処方せんを調剤している薬剤師であれば、糖尿病治療薬を見ない日はないと言っても過言ではないほど、糖尿病患者さんがたくさんいると感じている方は多いと思います。
少し古いデータではありますが、2016年の国民健康・栄養調査では、「糖尿病が強く疑われる者」と「糖尿病の可能性を否定できない者」を合わせると約2000万人にのぼると報告されています。つまりすでに6人に1人は糖尿病の可能性が否定できないという時代になっているのです。
さらに、高齢者の糖尿病患者さんが増えているため、さまざまな面で治療が困難になることも多くなってきました。
それに対して、日本にいる糖尿病専門医は約6000人。全てを専門医でカバーするなんて不可能な数字です。

【第10回】 番外編―「私が糖尿病に関する専門資格を取った理由とその後」 「糖尿病が強く疑われる者」と「糖尿病の可能性を否定できない者」の推計人数の年次推移の画像

そこで、「患者さんをほかの専門家でもカバーしよう」と、専門家同士が連携して、より質の高い医療の提供を目指そうと考えられるようになり、医師以外の医療職にもさまざまな専門資格ができてきました。
薬剤師の糖尿病領域における専門資格の代表として、「日本糖尿病療養指導士」と「糖尿病薬物療法認定薬剤師」があります。また、各都道府県レベルでも専門性を高めるためにローカル糖尿病療養指導士(LCDE)が立ち上がっています。糖尿病領域では、これらの専門資格を有する医療職により、他職種との連携、サポート体制を強め、質の高い、広い範囲での診療が求められています。

糖尿病におけるチーム医療の重要性

私自身が一員となって構成している糖尿病のチーム医療の役割、活用を考えていきたいと思います。患者さんによっては、「医師には話したいけど、薬剤師には言わない」などという複雑な思いがあります。われわれでも、いろいろな話をする相手としない相手がわかれるように、患者さんがこのように思うのは当然なのです。
そこでチーム医療の本領が発揮されます。まず、情報の共有です。患者さんがさまざまな医療者に話している内容を共有することで新たな問題点を見つけ出し、チーム連携により、他職種の人と同じアウトカムに向かって多方面からアプローチをかけることができます。
「複数の人が自分のことを見てくれている」。患者さんがそう思えるだけでも、診療に対する十分な動機づけになっていると感じています。そして、糖尿病の治療においては、この動機付け・患者さんの協力が、とても重要となります。
たくさんの患者さんをカバーするためには、たくさんのONE TEAMが必要であり、そこには決して1:1のマンツーマンではできない大きなメリットがあるのではないでしょうか?
当院でも専門医の先生の全面的なご協力のもと、医師、薬剤師、看護師、栄養士、臨床検査技師、理学療法士のメンバー構成で週1回の回診を行なっています。やはり多方面からいろいろなアプローチを行うことができて、医療の質が上がっていると実感できますし、なにより自分自身にとって勉強になります。

資格取得はスタートに過ぎない―最大の財産は専門分野の人とのつながり

私にとって糖尿病専門資格を取得することの意義は、取る前と取った後で大きく変わってきています。取る前は、自分の知識や技術の質を担保するための証として目指していた資格でしたが、取ってみると景色が大きく変わったと感じています。
正直なところ、現時点では資格を有していないとできない仕事などはありません。しかし、資格を取得し、その維持のためにも参加する学会などでは、日進月歩で変化していく最新のエビデンスに触れられますし、講演会や研究会では専門医とのディスカッションなどを通じて、最新情報の必要性を痛感します。
結果、資格を取得する前よりも取得した後の方が学ぶべき方向性が明確に見え、知識や技術も飛躍的に伸びたと感じています。また、資格を取得しているからこそつながるいろいろな分野での人とのつながりこそ、最大の財産となり、資格を維持することの重要性だと考えます。

病院薬剤師と薬局薬剤師の連携を目指す

糖尿病治療は急性期こそ病院ですが、その治療の大半を外来で行います。糖尿病専門資格を有している私としては、コンスタントに患者さんのフォロー、動機付けを行なっていく必要性を感じています。
なかには、退院後も外来に来るたびに声をかけにきてくださる患者さんや、院内で毎週行なっている糖尿病教室に参加し続けてくださる患者さんもおられますが、多くの患者さんは、退院後、接点が少なくなってしまいます。
やはり薬局薬剤師の協力なくして、糖尿病治療は行えないと感じています。当院の近くの開局薬局の先生方にも当院が行っている「薬薬連携の会」という場を通して、糖尿病患者さんのフォローをお願いし続けています。医師だけでなく、薬剤師の先生方からのアドバイスが大きな動機付けになる患者さんも多く、専門的な知識を持って関わり続けていただきたいと思います。そのためにもぜひ多くの先生に糖尿病薬物療法認定薬剤師やローカル糖尿病療養指導士(LCDE)を目指していただきたいと思っています。
最後になりますが、糖尿病の勉強がしたいと思っていただける先生方との交流のために、呼んでいただければ、いつでもどこでも伺います。お気軽に病院代表電話などで私までご相談ください。まずは、たくさんの先生方に糖尿病療養指導に触れていただきたいと希望します。

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柳瀬 昌樹
やなせ まさき

薬剤師。薬科大学を卒業後、現在に至るまで病院勤務を続け、糖尿病、感染症などの専門資格を取得。医師の先生方からの全面的ご協力の下、日々奮闘中。
主な取得資格:糖尿病療養指導士、糖尿病薬物療法認定薬剤師、抗菌化学療法認定薬剤師、日本病院薬剤師会病院薬学認定薬剤師、実務実習認定薬剤師
所属学会:日本糖尿病学会、日本くすりと糖尿病学会(認定薬剤師認定委員兼務)、日本化学療法学会、日本病院薬剤師会

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