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糖尿病の豆知識

更新日: 2020年8月21日 柳瀬 昌樹

【第19回】 血糖測定について知ろう!(1)測定方法の違い

第19回 血糖測定について知ろう!(1)測定方法の違いの画像

糖尿病の世界では長年、患者さんの総死亡を減少させる(長生きできる)治療法の確立を目指してきました。ここ最近、SGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬により総死亡を抑制できたという臨床試験結果が出たことで、各国のガイドラインなどが大きく変わってきています。
糖尿病療養指導士、糖尿病薬物療法認定薬剤師、抗菌化学療法認定薬剤師の資格を持ち、日本糖尿病学会、日本くすりと糖尿病学会、日本化学療法学会に所属する著者が薬剤師の皆さんに知っておいて欲しい糖尿病治療のポイントをご紹介します。

今回は、血糖測定のポイントについてまとめていきたいと思います。最近は、店頭での血液検査を実施している薬局やドラッグストアも多くあります。そういった場面での参考にしてください。

いろいろな血糖測定方法

まずは、いくつかある血糖測定方法とそれぞれの特徴を紹介していきます。

(1)SMBG(Self-Monitoring of Blood Glucose)
第19回 血糖測定について知ろう!(1)測定方法の違いの画像

出典:糖尿病情報センター

最も一般的に行われている血糖測定方法です。誰でも自分で血糖値を測ることができ、血糖コントロールをできているか確認したり、低血糖のリスクがどれくらいあるかを把握したりするのに役立ちます。また、日々、血糖値を測ることで、患者さんの糖尿病治療に対する動機付けにもなるといわれています。

(2)FGM(Flash Glucose monitoring)
第19回 血糖測定について知ろう!(2)測定方法の違いの画像

出典:認定特定非営利活動法人日本IDDMネットワーク

「リブレ」と呼ばれるセンサーを腕などに取り付けると、センサーが数分に1回血糖値を測り続けてくれます。センサーは8時間分の血糖値を記録しており、任意のタイミングで血糖測定器をセンサー上にかざすと、直近の血糖値を画面に表示されます。過去8時間分の血糖値データを血糖測定器に転送することができるため、8時間以上空けずにかざし続ければ、1日の血糖値を線で確認することができます。また、リブレは防水仕様で、14日間使用し続けることができます。お風呂など日常生活であれば、問題になることはありません。ただし、かなりの高温になる場所、10気圧以上には耐えられません。つまりサウナや10m以上の潜水はNGです。(リブレをつけて10m以上の潜水をする人がどれくらいいるでしょうか?(笑)
最近、保険適応の拡張も行われ、強化インスリン療法(1日4回のインスリン)、もしくは、混合型インスリンを2回打ちしている患者さんにもリブレを保険で使用することができるようになりました。SMBGのように血糖値を点で見るのではなく、FGMは変動を知ることができること、血糖値を測定するたびに侵襲による痛みがないことなども大きな利点となります。ただし、後に述べるCGMとは異なりキャリブレーション(途中の補正)がないため、センサーによってばらつきが見られることがあったり、センサー使用期間の最初と最後付近ではブレが大きくなったりするとも言われています。注意点はありますが、うまく使えば、非常に便利で有用なものです。

(3)CGM(Continuos Glucose Monitoring)
第19回 血糖測定について知ろう!(3)測定方法の違いの画像
第19回 血糖測定について知ろう!(3-1)測定方法の違いの画像 第19回 血糖測定について知ろう!(3-2)測定方法の違いの画像

出典:認定特定非営利活動法人日本IDDMネットワーク

CGMは、皮下に留置した細長いセンサーにより持続的に血糖値を測ることができる機械です。大きく分けて「プロフェッショナルCGM」と「リアルタイムCGM」の2種類があります。「プロフェッショナルCGM」は、患者さんにセンサーを1週間程度装着し、終了後、医療機関でデータを解析し、1週間の持続的血糖値を確認します。それに対して、「リアルタイムCGM」は、常時、直近の間質グルコース値(実際の血糖値を見ているわけではなく、皮下の間質液のグルコース値から、血糖値を割り出しているため、間質グルコース値と表現されます。FGMも同じです。)が装置に表示されるため、血糖の変動をリアルタイムで確認して生活することができます。これらのCGMは、どこの病院でも扱うことができるわけではなく、糖尿病専門医の先生が所属する病院である必要があります。

SMBGの注意点

上でご紹介したように、世の中にはいろいろな測定方法がありますが、やはり基本になるのは、SMBGです。基本的なSMBGの手技は、各メーカーのパンフレットを参照していただくこととし、ここでは、注意すべき点をまとめます。
まず、下のPMDA通知にもあるようにSMBGの手技を行う前に手洗いをすることです。図のようにフルーツなどを触った手で、血糖値を測定すれば、フルーツの中の果糖が反応し、真の血糖値よりもかなり高い値が出てしまいます。「手が洗えなくてもアルコール綿でしっかり拭けば大丈夫」と思っていませんか?糖質は親水性の物質であり、アルコールでどんなに拭いてもほとんど取れないことは意外に知られていません。実際、フルーツを剥いた手をアルコール綿で5回程度しっかり拭きとった後の血糖測定でも、かなりの高値が出ることが確認されています。
また、フルーツだけでなく、女性の場合、ハンドクリームや化粧品なども反応するケースがあります。必ず血糖測定の前には、手洗いを徹底する指導が必須です。私自身、妊娠糖尿病の患者さんの分娩直前の血糖値を確認したときに、看護師さんから140mg/dLと高い値が報告されたことがあります(分娩時の血糖値は、かなりタイトなコントロールが要求され、正常値範囲を目指します)。主治医とインスリンの持続注射を検討した際、それまでの血糖コントロール傾向から疑問に思い、手のひらを清拭してからの血糖再検を依頼すると70mg/dL台と本当は正常範囲であったと知った経験があります。もしも、疑問に思わず、インスリンの持続注射をつないでいたらと思うとゾッとします。

次回は、穿刺時の注意点やSMBGの活用方法などについて解説していきたいと思います。

第19回 血糖測定について知ろう!(4)測定方法の違いの画像

出典:医療品医療機構総合機構(PMDA)

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柳瀬 昌樹
やなせ まさき

薬剤師。薬科大学を卒業後、現在に至るまで病院勤務を続け、糖尿病、感染症などの専門資格を取得。医師の先生方からの全面的ご協力の下、日々奮闘中。
主な取得資格:糖尿病療養指導士、糖尿病薬物療法認定薬剤師、抗菌化学療法認定薬剤師、日本病院薬剤師会病院薬学認定薬剤師、実務実習認定薬剤師
所属学会:日本糖尿病学会、日本くすりと糖尿病学会(認定薬剤師認定委員兼務)、日本化学療法学会、日本病院薬剤師会

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