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糖尿病の豆知識

更新日: 2020年9月19日 柳瀬 昌樹

ソモジー効果と暁現象について

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糖尿病の世界では長年、患者さんの総死亡を減少させる(長生きできる)治療法の確立を目指してきました。ここ最近、SGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬により総死亡を抑制できたという臨床試験結果が出たことで、各国のガイドラインなどが大きく変わってきています。
糖尿病療養指導士、糖尿病薬物療法認定薬剤師、抗菌化学療法認定薬剤師の資格を持ち、日本糖尿病学会、日本くすりと糖尿病学会、日本化学療法学会に所属する著者が薬剤師の皆さんに知っておいて欲しい糖尿病治療のポイントをご紹介します。

今回はm3.com薬剤師会員の皆さんからいただいた「糖尿病患者への服薬指導における疑問・質問」について、文献や私の経験ももとにお答えする&Aシリーズ第2弾です。今回は、ソモジー効果と暁現象について、その対応をまとめ、理論的に考えるために必要となる責任インスリンの考え方についてまとめたいと思います。

Q. ソモジー効果と暁現象の違いがよくわからない

今回は、ソモジー効果と暁現象についてふれていきたいと思います。私事ですが、この2つの現象は、以前に総合内科専門医試験を受ける当院で仲良くさせていただいていた消化器内科のドクターに試験の少し前に説明する機会があり、ばっちり専門医試験に出たと喜ばれたことが、印象に残っています。総合内科専門医試験にも出るくらい知っておくべき内容だと思っています(笑)
 まず、この2つの現象は例えば血糖測定で毎食前+眠前の4検を測定している場合、血糖値は、どちらも同じように見えることが注意点です。なのに、やるべきことは真逆と言ってもいいところがポイントです。詳しく見ていきましょう。
 人は、早朝、内分泌ホルモン(主に成長ホルモン)の影響で血糖値が上がるようになっています(起床するための準備ともいえるでしょう)。通常であれば、血糖値を上昇させるホルモンと呼応するようにインスリン分泌が反応するため、大きな血糖上昇は認めず、ほんの少し血糖値が上がる程度にとどまります。ところが、糖尿病患者さんの場合には、呼応するインスリン分泌能力が低いこともあり、早朝の内分泌ホルモンの影響で大きく血糖値が上昇し朝を迎えることがあります。これが暁現象です。
 次に、ソモジー効果とは、多くは夕方や眠前に投与したインスリンなどの影響により夜間、血糖値が一度低血糖域まで落ち込み、これを回避するために血糖値を上昇させる反応が起こり、結果として朝方の血糖値が高くなる現象です。(下図参照)

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出典:ノボ ノルディスク 糖尿病サイト

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 暁現象、ソモジー効果いずれも、ポイントの血糖値で見れば、前日の眠前付近の血糖値よりも翌朝の血糖値が高い傾向を認めますが、ソモジー効果の場合は、血糖降下薬が効きすぎているために起こる体内の防御反応の結果であり、対して、暁現象は朝の血糖上昇を抑える力が足りないために起こる現象であると言えます。繰り返しになりますが、対応はほぼ真逆であり、最もわかりやすい眠前に持効型インスリンを打っている場合で説明すると、暁現象の場合、朝の血糖上昇をより強く抑える必要があるため、持効型インスリンを増量しなければなりません。逆にソモジー効果の場合、持効型インスリンなどが効きすぎて、夜中に低血糖を引き起こしていることから、持効型インスリンの減量が必要になります。
その見分け方は、実際に血糖値が朝の3時前後に上がっているのか、下がっているのかを測定で測るのが一番です(患者さんにはちょっと酷なお願いなのですが)。3時頃の血糖値が低くなっているならソモジー効果、逆に低い血糖値を示さず、朝方の血糖値が高い場合には、暁現象ということになります。

Q. 責任インスリンってなんですか?

上記のソモジー効果とも少し関係しますが、インスリン療法を行う上で、責任インスリンの考え方は必須になります。改めて復習しておきましょう。

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出典:ノボ ノルディスク 糖尿病サイト

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責任インスリンとは、血糖値が変化した現象がどのインスリンにより主な支配を受けているかという考え方です。例えば、最も生理的に近い各食直前に超速効型インスリン、寝る前などに1回持効型インスリンを投与している(強化インスリン療法)患者さんが、昼食後約2時間で低血糖を起こした場合、責任インスリンは昼食直前の超速効型インスリンということになります。たまに強化インスリン療法を行っている患者さんが、眠前の持効型インスリンを打つ前に低血糖を確認すると、打つべき持効型インスリンを減らしたり、スキップしたりする方がいますが、これは責任インスリンの考え方として間違っています。正しくは、まず低血糖をブドウ糖などによりしっかりレスキューした後、責任インスリンである夕食直前の超速効型インスリンを翌日から減量しておくことが必要になります。もちろん、イレギュラーなこと(例えば、その日の体調が悪く食事がほとんど摂れなかったなど、低血糖につながる要因)がなかったかのチェックも忘れてはいけません。

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柳瀬 昌樹
やなせ まさき

薬剤師。薬科大学を卒業後、現在に至るまで病院勤務を続け、糖尿病、感染症などの専門資格を取得。医師の先生方からの全面的ご協力の下、日々奮闘中。
主な取得資格:糖尿病療養指導士、糖尿病薬物療法認定薬剤師、抗菌化学療法認定薬剤師、日本病院薬剤師会病院薬学認定薬剤師、実務実習認定薬剤師
所属学会:日本糖尿病学会、日本くすりと糖尿病学会(認定薬剤師認定委員兼務)、日本化学療法学会、日本病院薬剤師会

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