医薬品情報は「最新」であること
その医薬品情報、本当に「最新」ですか
皆さんは「最新」の医薬品情報を参照していますか?
「私は大丈夫!」と思った方も少し待ってください。参照している情報は以下のものではありませんか。
- 添付文書をファイリングしたもの
- 自施設で制作した冊子の院内医薬品集
- 市販の書籍(「●●医薬品集」の類)
実はこれらの情報、仮に今年度版であったとしても「最新」ではありません。
では、こちらの場合はどうでしょうか?
- 電子カルテに付随した医薬品情報検索システム
正解は後述するとして、ここでは二つ目のシン常識を提示しておきます。
シン常識❷:「医薬品情報は「最新」であること」
PMDAの医薬品最新情報の取り組みと医療現場の実態
2019年の薬機法改正で「添付文書の電子化」が図られたことは記憶に新しいところかと思います。その理由をPMDAは、以下の課題を解決するためと説明しています。
- 添付文書は頻繁に改訂されるため、同梱されている添付文書は最新の情報ではなくなっている場合がある。
- 同一の医薬品等が医療機関や薬局に納品されるたびに、添付文書が一施設に多数存在し、紙資源の浪費につながっている。
(平成30年11月8日 第8回厚生科学審議会 医薬品医療機器制度部会)
これは何も唐突な話ではありません。IT全盛の時代であり、ごく自然な流れのようにも思えます。実際、PMDAは20年以上も前から様々な施策を打ち続け、医療機関に最新情報を参照するよう促してきました。
【医薬品情報に関するPMDAの主な取り組み】
- 医薬品医療機器情報提供ホームページの開設(1999年)
- PMDAメディナビ(医薬品医療機器情報配信サービス)の開始(2006年)
- 医薬品安全性情報等管理体制加算の新設(2010年)
- マイ医薬品集作成サービスの開始(2011年)
- 添文ナビ(添付文書閲覧アプリ)の配信開始(2021年)
PMDAは、薬剤師が「最新」の医薬品情報を参照できるよう注力していることがわかります。にもかかわらず、医療現場に十分に浸透したとは言えないのが現状でしょう。
「最新」が浸透しない要因は様々あるかと思います。例えばネット環境の整備やセキュリティの問題。そして、全国の医療機関の約半数がいまだ紙カルテであるという事実。一朝一夕に解消できる話ではありません。
そんななか2021年8月にPMDAは、エコ重視の風潮にも後押しされ紙媒体の添付文書の廃止に踏み切りました。
インターネットからの医薬品情報取得を習慣化すべき
医薬品安全性情報等管理体制加算*が新設された2010年、同加算の取得は、当時医薬品情報科長に就任したばかりの私に課せられた初仕事でした。
「処方時の意識・行動の変化につながる確実な情報伝達」
この言葉は、10年以上経った今でも鮮明に記憶に残っています。つまり、我々薬剤師には常に「最新」の医薬品情報を収集し、処方医の頭の中にある古い情報とのタイムラグを埋める役割があるのです。薬剤師が「最後の砦」と呼ばれる所以です。
PMDAの取り組みを見れば、我々薬剤師がどこから医薬品の最新情報を取得すれば良いのかは明らかです。
*同加算は病棟薬剤業務実施加算1の施設基準に集約され、2012年に廃止となっています。
(3) 病棟薬剤業務とは、次に掲げるものであること。
イ 医薬品医療機器情報配信サービス(PMDAメディナビ)によるなど、インターネットを通じて常に最新の医薬品緊急安全性情報、医薬品・医療機器等安全性情報、製造販売業者が作成する医薬品リスク管理計画(RMP:Risk Management Plan)に関する情報、医薬品・医療機器等の回収等の医薬品情報の収集を行うとともに、重要な医薬品情報については、医療従事者へ周知していること。
A244 病棟薬剤業務実施加算(通知)より抜粋
さて、冒頭の設問に戻ります。
「電子カルテに付随した医薬品情報検索システム」、これは「最新」の医薬品情報でしょうか。
現在、病棟薬剤業務実施加算を算定中なのであれば、情報収集にインターネットを利用していない時点で、NGと見なされる可能性があると私は考えます。
なぜなら、更新用CDを用いた「毎月更新」では、最長2ヶ月のタイムラグが生じてしまうからです。
そのため、私は特定共同指導のような行政指導の際、部下に徹底させることがあります。
「もし情報源を問われたら、インターネットだと答えろ」
少なくとも、これまでも許されてきたからといった楽観は禁物です。
2023年8月1日から、紙の添付文書の同梱は完全に廃止されます。インターネットで医薬品情報を参照する習慣がない薬剤師は、早めに習慣化することを推奨します。
アクションプラン
最後に薬剤師の皆さんにメッセージです。
現状に甘んじていたらいけません。
今日からでもインターネットを通じて「最新」の情報を収集しましょう。
なぜなら薬剤師は「最後の砦」なのだから。