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疾患別・感染症と抗菌薬の選び方

更新日: 2021年2月4日 柳瀬 昌樹

急性中耳炎治療を整理しよう!(2)

急性中耳炎治療を整理しよう!(2)のメイン画像1

さて、小児の急性中耳炎の続きとして、今回は「大人の急性中耳炎」についてまとめていきます。基本的な考え方や患者さんの背景、原因となる菌の耐性率が大きく異なることなどに注意し ましょう。

2.大人の急性中耳炎

小児の場合と同じく、大人でも重症度分類を行いますが、大人の場合は、症状によるスコアリングに加えて易感染・耐性菌のリスクファクターを考慮したスコアリングにより重症度分類が行われます。

リスク
易感染リスクファクター
①70歳以上
②糖尿病、肝硬変、腎不全、COPDや喘息などの慢性肺疾患、
 低栄養、ステロイドや免疫抑制剤の使用
③感染の反復
全てなし:0点

1つでもあり:1点
耐性菌リスクファクター
④抗菌薬の過去1ヶ月以内の使用
⑤3日間の初期治療が無効
⑥集団保育時と同居
臨床症状
耳痛 なし:0点 痛みあり:1点 持続性高度:2点
鼓膜所見
鼓膜発赤 なし:0点 ツチ骨柄、鼓膜一部:2点 鼓膜全体:4点
鼓膜膨隆 なし:0点 部分的な膨張:4点 鼓膜全体の膨隆:8点
耳漏 なし:0点 鼓膜観察可:4点 鼓膜観察不可:8点
重症度分類(上記の合計点数で判断)
5点以下:軽症 6~11点:中等症 12点以上:重症

上記で重症度分類を行った後、小児と同じく検体提出を以下の通り行っていきます。

1. 原因菌の究明

  • 耳漏がある場合や鼓膜切開を行った場合は、耳漏や中耳貯留液の細菌培養を行う。
  • 耳漏を伴わない場合や鼓膜切開を行っていない場合は、鼻咽喉ぬぐい液の細菌培養を行う。
グラム染色により疑われる原因菌
グラム陽性球菌:S.pneumoniae
グラム陰性桿菌:H.influenzae
グラム陰性球菌:M.catarrhalis

治療

以下の一次治療が重症度別に行われます。一般的な効果判定は治療開始後3~5日後を目安に行い、効果があればさらに5日間の治療継続が必要と言われています。

(一次治療)

軽症(スコア5点以下)
抗菌薬非投与で3日間経過観察
中等症(スコア6~11点)
アモキシシリン 1回500㎎ 1日3~4回 5日間
重症(スコア12点以上)
下記のいずれかを5日間+鼓膜切開を考慮
第一選択
アモキシシリン 1回500㎎ 1日3~4回 5日間
その他の選択(ただし必要性を十分に判断し、適切とされる場合に限る)
レボフロキサシン 1回500㎎ 1日1回
ガレノキサシン 1回400㎎ 1日1回
モキシフロキサシン(適応外) 1回400㎎ 1日1回
シタフロキサシン 1回100㎎ 1日1~2回
トスフロキサシン 1回150㎎ 1日2~3回

上記の一次治療を行っても改善が認められない場合、大人の急性中耳炎では、基本的に専門家へのコンサルテーション対象として扱うことが望ましいと言われています。その上で、細菌培養などの結果を考慮した二次治療を行うべきです。

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柳瀬 昌樹
やなせ まさき

薬剤師。薬科大学を卒業後、現在に至るまで病院勤務を続け、糖尿病、感染症などの専門資格を取得。医師の先生方からの全面的ご協力の下、日々奮闘中。
主な取得資格:糖尿病療養指導士、糖尿病薬物療法認定薬剤師、抗菌化学療法認定薬剤師、日本病院薬剤師会病院薬学認定薬剤師、実務実習認定薬剤師
所属学会:日本糖尿病学会、日本くすりと糖尿病学会(認定薬剤師認定委員兼務)、日本化学療法学会、日本病院薬剤師会

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