薬剤師の責務である、患者さんの”健康”な未来を考える-医療マンガで学ぶ第六回-

2020年に放送されたテレビドラマ「アンサングシンデレラ」は大きな話題を呼びましたが、このドラマは病院薬剤師を主人公にしたマンガが原作です。医師や看護師が主人公のマンガは多くありますが、薬剤師という職種にスポットライトが当たることは珍しいので、皆さんの記憶にも残っているはずです。このマンガを読んで、薬剤師という職業を誇りに感じたり、日々の仕事にやる気が出た方も多いのではないでしょうか。
今回は、”健康”を管理される社会を描いたSF作品である「<harmony/>」を紹介します。進歩する医療や、新型コロナウイルス感染症の広がりなどが影響して、”健康”でありたいという我々の意識は日々高まっています。この作品には、私たち薬剤師が”健康”を管理するということの意味や意義について、改めて考え直す重要な示唆が多く詰まっています。

©FUMI MINATO ©Project Itoh/HARMONY
■今回のマンガ
タイトル:<harmony/> ハーモニー
作者:三巷文 (漫画), 伊藤計劃/Project Itoh (原作)
主人公:螺旋監察官 霧慧 トァン
出版社:KADOKAWA
連載:2015年〜2019年(全4巻)
作家・伊藤計劃の同名小説をもとにした本作品は、<大災禍>によって多くの人が亡くなってしまった後の世界が舞台です。<大災禍>で使用された核兵器によって、がんの発生率が急上昇し、さらにその影響を受けて未知のウイルスが大量発生したことが、その原因です。そこで世界は、「生命至上主義」を唱え、政府ではなく生府による医療福祉社会を作り上げました。この社会では、人々自身が公共のリソースとみなされて、健康であることが義務であるという「空気」が生み出されています。
主人公である霧慧(きりえ)トァンは、生府の危機管理を行うWHO螺旋監察事務局の上級監察官として紛争地帯などで業務を行っています。トァンは、高校生の頃に出会った同級生ミァハの影響によって、今の社会に疑念を持っていました。さらに、友人のキアンが大量自死事件で犠牲になったことで、社会の危うさに気付き始めます…