【抑肝散のリスク】副作用と初期症状を知ろう
- 抑肝散は近年、認知症の周辺症状(BPSD)の改善に多く使われる
- 抑肝散は甘草の含有量は多くないにもかかわらず、「偽アルドステロン症」の報告が多い
- 抑肝散の服用に注意すべき人
- 抑肝散の注意すべき副作用と初期症状
- 生薬・甘草について
抑肝散(ヨクカンサン)は、古くから小児の夜泣きやひきつけに使われていました。認知症周辺症状(BPSD)改善効果が報告されるようになってからは、年々高齢患者へと処方範囲が拡大しています。服用期間も長期に渡るため、考慮すべき服薬指導の内容も少しずつ変わってきています。特に副作用については、含有生薬の甘草の量にとらわれず、高齢服用者へのモニタリングを怠ってはいけません。
1.「抑肝散」の構成と効能効果
抑肝散(ヨクカンサン)は、緊張や興奮を緩和する漢方薬です。添付文書には以下のように記載されています。
【54】ツムラ抑肝散エキス顆粒(医療用)
<効能又は効果>
虚弱な体質で神経がたかぶるものの次の諸症: 神経症、不眠症、小児夜泣き、小児疳症
もともとは小児の夜泣きやひきつけに用いられていましたが、次第に、小児だけでなく不眠症や不安神経症といった成人の精神症状にも用いられるようになりました。
最近では、認知症の周辺症状である行動・心理症状(BPSD;イライラ、徘徊、幻視など)の改善にも有効であるとの報告があり、広く活用されるようになりました。
7種類の生薬から成り、それぞれ以下のような働きをして効能を発揮しています。(※1)
薬理作用としての機序は、①グルタミン酸放出抑制作用(ラット)、②グルタミン酸取込是正作用(in vitro)、③セロトニン2A受容体ダウンレギュレーション作用(マウス)、④セロトニン1A受容体刺激作用(ラット、マウス、in vitro)などが明らかになっています。(※2)
2. 「抑肝散」はなぜ注意しなくてはいけないのか
抑肝散に認知症のBPSD(行動・心理症状)改善への有効性と安全性が報告されるようになってからは、最も一般的な処方理由として臨床現場で頻繁に処方されるようになりました。
認知症患者には高齢者が多いため、長期投与時には生理機能低下、低体重、合併症、併用薬の影響などの背景因子を考慮する必要があります。
また、抑肝散に含まれる甘草の配合が少量であるということが、副作用初期症状の発見を遅らせる盲点になることもあります。
抑肝散の甘草の量は1日1.5gであり、他の漢方薬(例: 芍薬甘草湯 6g/日、葛根湯 2g/日)と比較しても多くありません。ところが、甘草由来と想定される「偽アルドステロン症」が、芍薬甘草湯に次いで報告されているのです。(※3)
前述したような患者背景が一因であると考えられますが、原因生薬の含有量が副作用発現に影響しているとの思い込みがあると、薬剤師が患者の訴える症状を見落とす可能性があります。こうした思い込みに注意し、慎重に対応しなければなりません。
3.「抑肝散」の注意すべき副作用と初期症状
2012年10月から2014年3月まで(1年6ヵ月間)にツムラが行った『ツムラ抑肝散エキス細粒(医療用)の副作用発現頻度調査』(※4)によると、次のようなデータとなっています。