アトピー治療などの治療で使用する保湿剤や外用ステロイドについて

- 日本の小児の約10~13%がアトピー性皮膚炎を有しており早期の保湿ケアが重要
- 保湿剤は「吸水性・吸湿性成分」と「油性被膜成分」のメリット・デメリットを理解して選択
- 塗布量はFTU(フィンガーチップユニッ/finger tip unit)を用い、年齢・部位別のガイド量を守ることが重要
- ステロイド以外の選択肢のタクロリムス(プロトピック軟膏)などは、年齢制限や用量上限に注意して適正に使用
小児の皮膚は薄くバリア機能が未発達で、外部刺激に敏感かつ乾燥しやすい特徴があります。日本の小児アトピー性皮膚炎の有病率は約10~13%で、乳幼児期に高く年齢とともに減少します。近年の研究では、早期介入や予防的スキンケアがアトピー性皮膚炎の発症予防や症状改善に効果的とされています。また、アレルギーマーチ予防の観点からも早期対応が重要です。本稿では保湿剤や外用ステロイドの適切な使用法について解説します。
小児のアトピー性皮膚炎治療に使用される保湿剤と外用ステロイド薬について
保湿剤には大きく分けて2種類あります。1つ目は、吸水性・吸湿性を持つ成分を配合して保湿を図るもので、代表的な成分として「ヘパリン類似物質」があります。
2つ目は、油性成分を配合し、角質表面に被膜を作ることで水分の蒸発を抑えるもので「ワセリン」が該当します。ワセリンは角質の柔軟化作用や皮膚の保護作用に優れていますが、べたつきやすく、就寝中に熱がこもってかえって痒みが強くなることがあるという欠点もあります。
外用ステロイド薬とは、「副腎皮質ホルモン(コルチコステロイド)」を含む外用薬のことです。
皮膚の炎症反応を抑制する効果があり、湿疹やアトピー性皮膚炎などさまざまな皮膚疾患の治療に用いられています。効力の強さはストロンゲスト、ベリーストロング、ストロング、ミディアム、ウィークの5段階に分類されます。皮膚の吸収性は皮膚の厚さなどの影響を受けるため、年齢や部位、炎症反応の程度によって適切に使い分けられます。
小児への保湿剤・外用ステロイドの副作用と家族への伝え方
ステロイド外用薬の副作用は、薬剤のランク、使用期間、塗布部位、年齢などの要因に影響されます。高ランクのステロイドを長期間使用した場合や、顔面・陰部などの吸収率が高い部位に使用すると副作用リスクが高まります。また基剤も影響し、一般的に軟膏よりクリームの方が経皮吸収が高いため注意が必要です。
代表的な副作用には、にきび(ステロイドざ瘡)、皮膚が薄くなる、血管が目立つようになる(毛細血管拡張)、酒さ様皮膚炎、感染症(カンジダ症やヘルペスなど)の誘発・悪化、毛が濃くなるなどがあります。これらは適切な使用法を守ることで最小限に抑えられます。
副作用の説明により患者さんや家族が「なるべく使いたくない」と思い、不適切な使用や中断につながることがあります。しかし、ステロイド外用薬は正しく使えば副作用は少なく抑えられるため、過度な不安を煽らず、適切な使用法を丁寧に説明することが重要です。
ステロイド使用後の色素沈着は、薬剤自体の副作用ではなく「炎症後色素沈着」です。ステロイドで炎症が治まると色素沈着が目立つことがありますが、これは薬剤が原因ではありません。むしろ、色素沈着を防ぐには早期にステロイド外用薬で炎症を鎮静化させることが重要です。
小児用保湿剤・外用ステロイドの服薬指導時に必ず伝えるべきこと
保湿剤と外用ステロイドの効果を最大限に引き出すには、適切な量と正しい塗り方が重要です。患者さんやご家族に分かりやすく説明しましょう。
塗布量の目安は「FTU(フィンガーチップユニット/finger tip unit)」です。