【禁忌薬】ARB、ACE阻害薬/妊婦への服薬指導
- ARB、ACE阻害薬の服用を止めるタイミングとメカニズム
- ARB、ACE阻害薬の服用を急に中断すると妊婦にリスクがある
- ARB、ACE阻害薬の代替え薬7種剤あり。最適な提案を
- ARBやACE阻害薬を服用している妊娠可能年齢の患者さんとの関わり方のポイント
アンジオテンシンII受容体拮抗薬(以下、ARB)とアンジオテンシン変換酵素阻害薬(以下、ACE阻害薬)は、高血圧治療において重要な役割を果たしており、薬剤師にとっても日常的に扱う馴染み深い薬剤です。しかし、妊娠中または妊娠を希望する患者に使用する場合、胎児へのリスクがあるため、特に慎重な対応が求められます。今回は、薬剤師として押さえておくべきこれらの薬剤の使用リスクと、患者への服薬指導のポイントを解説します。
ARBとACE阻害薬とは? / 妊娠中の高血圧のリスクは?
ARBとACE阻害薬はいずれも、日本の高血圧診療ガイドラインで高血圧治療の第一選択薬に位置づけられています。
ARBはアンジオテンシンII受容体(AT1受容体)をブロックし、ACE阻害薬はアンジオテンシンIをアンジオテンシンIIに変換する酵素を阻害することで血圧を下げます。どちらも血管を拡張し、心臓や腎臓に対する保護効果が知られています。
妊娠期に高血圧を認める場合、妊娠高血圧症候群と診断され、周産期合併症を引き起こすことが知られています。
母体の具体的な合併症には、HELLP症候群、DIC(播種性血管内凝固症候群)、肺水腫、周産期心筋症、腎障害、脳出血、子癇、常位胎盤早期剥離などがあり、これらは最悪の場合、母体死亡を招くことがあります。
また、胎児にも発育不全、早産、低出生体重などのリスクがあり、そのため妊娠中の血圧管理は非常に重要です。
ARB、ACE阻害薬が妊婦禁忌の理由。服用を止めるタイミングが大切!
妊娠初期のARBやACE阻害薬の使用は、先天異常の自然発生率を大きく上回らないとされていますが、妊娠中期から後期にかけては胎児毒性を及ぼすことが知られています。これらの薬剤は胎盤を通じて胎児に移行し、胎児のレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAA系)を阻害する可能性があります。
その結果、胎児に腎不全が引き起こされ、腎機能障害や腎低形成が生じることがあります。
この腎機能の障害によって、羊水の量が減少する「羊水過少症」を発症することがあり、羊水が減少することで胎児の肺の発育不全や頭蓋・顔面・四肢の形態異常が引き起こされることが報告されています。重篤な場合は子宮内胎児死亡、新生児死亡に至る可能性があります。
7剤あるARB、ACE阻害薬の代替え薬とは?
ARBやACE阻害薬を急に中断し、血圧のコントロールが不良になることは、前述の通り、母体と胎児の双方に深刻なリスクをもたらす可能性があります。そのため、適切な代替薬への変更が非常に重要です。