バイアスピリン®の使い方を知ろう。妊娠高血圧症候群と不妊治療の最新知識
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- 産科領域でバイアスピリンを使用する目的
- バイアスピリンを妊娠高血圧症候群予防で使用する場合の注意点
- 不妊治療でバイアスピリンを使用する際の目的
- 妊婦がバイアスピリンを服用する際の服薬指導のポイント
バイアスピリン®に代表される低用量アスピリンは、血小板凝集を抑える抗血小板作用を持ち、心血管疾患の予防に現在も広く用いられている薬剤です。近年、周産期領域でもこの抗血小板作用を背景に、妊娠高血圧症候群の予防や反復流産・着床不全に対する治療として使用される機会が増えています。
しかし、「妊娠中に血液をサラサラにする薬を?」と不安を抱える患者や、戸惑う薬剤師も見受けられます。今回は、妊娠中のバイアスピリンの使用目的と、薬剤師が押さえるべきポイントを解説します。
バイアスピリンの基礎と産科応用の広がりについて

バイアスピリン®は、一般名アスピリンの低用量製剤で、主に抗血小板薬として使用される薬剤です。アスピリンはシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害し、トロンボキサンA₂の産生を抑制することで血小板凝集を防ぎます。この作用により、虚血性心疾患や脳梗塞の二次予防として広く使用されており、通常は1日1回81~100mgで投与されます。
産科領域ではこの抗血小板作用を活かし、妊娠高血圧症候群の予防や、着床不全・不育症といった不妊治療における補助療法としての使用が増加しています。薬剤師としては、用量、使用目的、副作用リスクを正しく把握した上で、適切な情報提供を行うことが求められます。
妊娠高血圧症候群の予防としてのバイアスピリン

妊娠高血圧症候群(HDP)は、妊娠20週以降に高血圧を呈する疾患群で、母体や胎児に重大なリスクを及ぼします。HDPは発症時期により「早発型(34週未満で発症)」と「後発型(34週以降で発症)」に分類され、早発型は胎盤機能不全が強く、重症化しやすい傾向があるため、母児ともに管理がより慎重に行われます。
この早発型の予防策として注目されているのが、低用量アスピリン(バイアスピリン®)の予防投与です。2017年のASPRE試験では、早発型HDPのリスクが高い妊婦に対し、妊娠12〜16週の早期からアスピリン150mgを投与することで、発症リスクが約60%低下したと報告されました。ただし、この投与量は海外での研究結果であり、日本では100mg製剤が一般的に使用されています。