妊婦がレボチロキシン(LT4)を服薬する場合って?
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- 妊娠期の甲状腺ホルモンの補充は、母子の健康のために不可欠
- レボチロキシン(LT4)の用量調整と服用時の注意点
- 薬剤師によるレボチロキシン(LT4)の服薬指導の重要性
妊娠期は甲状腺ホルモン需要が急増し、潜在的な甲状腺機能低下症が顕在化することがあります。未治療のまま放置すると流産、早産、妊娠高血圧症候群、さらには胎児の神経発達遅延を起こす可能性があるため、「レボチロキシン(LT4)」による適切な補充と継続が不可欠です。
本コラムでは、胎児甲状腺の発達時期や補充量調整の根拠を踏まえ、妊娠と甲状腺機能低下症のリスク、レボチロキシン(LT4)投与の実際、そして薬剤師が行う服薬指導のポイントを整理し、母児の健康を守るためのポイントを解説します。
「レボチロキシン(LT4)」とは?

レボチロキシンは内因性T₄と同じ構造を持つ合成甲状腺ホルモン製剤で、低下した甲状腺機能を補う第一選択薬です。
体内で活性型 T₃ に変換され、基礎代謝や胎児の脳・骨格発達を正常に保ちます。妊娠により甲状腺ホルモンの需要は非妊娠時の30〜50%に増加します。
甲状腺機能低下症ですでにLT4を服用中の患者では、妊娠判明時にはレボチロキシンは現在量の20〜30%増量することが国際ガイドラインで推奨されており、その後のTSHが目標を超える場合は、結果として30〜50%増量が必要になる例もあります。
妊娠中のTSHは2.5 mIU/L未満に保つことが推奨されています。
妊娠中の甲状腺機能低下症とリスクについて

胎児甲状腺は妊娠12週頃からホルモン分泌を開始し、18-20週頃に機能がほぼ完成します。
それまでの期間は母体由来ホルモンが唯一の供給源となるため、妊娠初期のホルモン不足は流産や早産、胎児発育不全、児の知能低下のリスクを高めます。とくに妊娠初期に TSH が 2.5 mIU/L を超えると転帰不良例が増えることが複数の大規模研究で示されています。