妊婦も降圧剤を飲んでOK?アムロジピン・ニフェジピンの妊婦投与について
- 徐放性ニフェジピン・アムロジピンは「有益性が危険性を上回る場合には投与可能」と再定義された
- 妊娠中の高血圧管理では、カルシウム拮抗薬を中断せず継続投与すると胎児へのリスクが軽減する
妊娠中の高血圧は、母体の脳出血や子癇、胎盤機能低下、胎児発育不全、早産など、母児双方に重大な影響を及ぼし得ます。しかし、「妊婦に降圧薬は安全なのか」という不安から治療が遅れたり、自己判断で中断されたりする場面は少なくありません。
カルシウム拮抗薬は、妊娠中の高血圧管理で広く用いられる選択肢で、近年は国内添付文書の見直しも進みました。今回のコラムでは、薬理作用や臨床の要点を簡潔に整理し、現場での説明にそのまま活かせる視点をまとめます。
「カルシウム拮抗薬」と妊婦の関係
「カルシウム拮抗薬」は血管平滑筋のCaチャネルを阻害して末梢血管を拡張し、降圧をもたらす薬です。妊娠期に主として用いられるのはジヒドロピリジン系で、日内変動を均一化しやすい徐放性「ニフェジピン」と、半減期が長く緩徐に効く「アムロジピン」が中心的な選択肢になります。
歴史的にはニフェジピンは妊娠20週未満禁忌、アムロジピンは妊娠中禁忌とされていましたが、2022年の添付文書改訂により両薬の「妊婦禁忌」は削除され、「有益性が危険性を上回る場合に投与可能」へ再定義されました。
これは、先天異常リスクの大幅増加は考えにくいという安全性評価に、妊娠中の降圧治療の必要性を総合した判断です。なお、「ACE阻害薬」と「ARB」は胎児毒性があるため妊娠中禁忌であり、妊娠前から切り替えを完了しておくことが勧められています。