ゾコーバ薬価正式承認でおさらい、緊急承認と特例承認の違い
参考記事:ゾコーバ1錠7400円、1治療3割負担で1万5000円超中医協承認、緊急承認時と同額、費用対効果評価等の対象に
中医協総会(会長:小塩隆士・一橋大学経済研究所教授)は3月22日、新型コロナウイルス感染症の経口治療薬ゾコーバ錠(エンシトレルビル フマル酸)の薬価を1錠(125mg)7407.4円とすることや、費用対効果評価と市場拡大再算定の対象とすることを承認した。緊急承認時と変更はない。1治療(5日間の処方)で5万1851.8円、3割負担なら1万5556円になる。ピーク時の予測年度は2年度で、37万人、予測販売額は192億円。
1.ゾコーバの正式承認
ゾコーバ錠(成分名:エンシトレルビル フマル酸)は、2022年11月22日に緊急承認されました。緊急承認制度は、有効性が推定された段階で承認を行うことができる制度ですが、定められた期限内に正式な承認申請を行う必要があります。
ゾコーバの場合は、期限が1年以内と定められていたため、期限内に臨床試験データを提出し、2024年3月5日に正式承認を取得したということです。
2.ゾコーバの薬価
緊急承認時のゾコーバの薬価算定方法については、過去にまとめているので興味のある方はそちらをご覧ください。
ゾコーバ、は一般流通(2023年3月31日)を行う前の2023年3月15日に薬価収載されました。類似薬効比較方式(Ⅰ)に基づいて薬価が算定されましたが、比較薬が2つ(ラゲブリオとゾフルーザ)という特殊なものでした。抗新型コロナウイルス薬としての類似薬がラゲブリオ、呼吸器感染症に対して重症化リスクに関わらず投与される、抗ウイルス薬としての類似薬がゾコーバ、という考え方になります。
正式承認に伴い、あらためて薬価についての審議が行われました。緊急承認と正式承認を比較して、効能・効果、用法・用量、安全性や有効性に変化はなく、ガイドライン(「COVID-19に対する薬物治療の考え方 第15.1版」)上の位置付けも変更なしとなりました。このことから、緊急承認時と同様の薬価算定方式となり、薬価は7,407.40円/錠に決定しました。(1治療あたり51,851.80円で緊急承認時と変化なし)
3.緊急承認と特例承認の違い
特例承認は、感染症の蔓延等で緊急の使用が必要で、かつ代替えがない場合に、海外ですでに承認されている医薬品を特例的に(通常必要な手続きを省略して)承認する制度です。日本国内では未承認でも、海外では有効性や安全性が認められた上で承認されている医薬品が対象となります。新型コロナウイルス感染症に関する薬剤の多くは特例承認の対象で、ラゲブリオやパキロビッドも含まれます。
次に、緊急承認についてですが、感染症の緊急の使用が必要でかつ代替えがない場合に、安全性が確認され、有効性が推定される医薬品を第Ⅲ相試験の結果を待たず、さらに手続きを省略して承認する制度です。ただし、緊急承認時に定められた期限内に正式な承認申請を行う必要があります。これに該当するのがゾコーバです。
特例承認は有効性が確定していますが、緊急承認は有効性が推定される段階という点が大きな違いです。特例承認ではあらためて承認が行われることはありませんが、緊急承認は一定期間の後、通常承認が行われます。