「最初に処方された1回に限り算定」って?特定薬剤管理指導加算3
「薬局のアンテナ」のてっちゃんです!
今回は、2024(令和6)年度調剤報酬改定の新設点数の中から、特に質問が多い「特定薬剤管理指導加算3」について取り上げます。
特定薬剤管理指導加算3は「保険薬剤師が患者に重点的な服薬指導が必要と認め、必要な説明及び指導を行ったときに算定する点数」であり、通常の指導に加えてより丁寧な説明が必要となる場合を評価した点数となっています。
具体的には、以下の場合に最初に処方された1回に限り算定が可能とされています。
イ:安全性に関する説明が必要な場合に、RMP資材を用いて十分な指導を行った場合
ロ:医薬品の選択に関する説明が必要な場合に、説明及び指導を行った場合
この点数は、新設点数ということもあり、日々多くのご質問が寄せられています。
今回は、その中でも特に多く寄せられる、以下のご質問について回答します。
「特定薬剤管理指導加算3」のよくある質問4つ
Q1.「最初に処方された1回に限り算定」とされていますが、その考え方は?
Q2.RMP資材はどのように探すのでしょうか?(算定区分「イ」)
Q3.選定療養について説明した場合、いつから算定できますか?(算定区分「ロ」)
Q4.医薬品供給が安定していない場合とは、限定出荷や供給停止に限られますか? (算定区分「ロ」)
Q1.「最初に処方された1回に限り算定」とされていますが、その考え方は?
さて、「最初に処方された1回」とはなんでしょうか?まずは、以下2つのケースで算定可否を考えてみましょう。
①医薬品Aを以前から処方されているが、当薬局では初めて指導するケース
②医薬品Aが今回初めて処方され、当薬局で指導するケース
※医薬品Aは算定対象薬であるとする
どうでしょうか?様々な考え方があるかと思いますが、私は①は算定不可、②は算定可と考えております。あくまで、患者に初めて処方された場合に算定可能、ということです。
なぜそう考えるか、解説します。
類似点数である特定薬剤管理指導加算1においても「イ新たに当該医薬品が処方された場合に限り算定可」となっています。
実は、この部分について疑義解釈が示されており、「患者としては継続して使用している医薬品ではあるが、当該薬局において初めて患者の処方を受け付けた場合は算定不可」となっています。(2024年度診療報酬改定疑義解釈その1:調剤報酬点数表関係の問17)
つまり、特定薬剤管理指導加算1において、①のケースは明確に算定不可になっています。
よって、特定薬剤管理指導加算3においても同様に考え、①のケースは算定不可、②のみ算定可、と考えます。
Q2.RMP資材はどのように探すのでしょうか?(算定区分「イ」)
RMPとは「医薬品リスク管理計画」のことであり、RMP資材は「RMPの追加のリスク最小化活動(情報提供)の一環として作成された資材」です。
RMP資材には、医療従事者向けと患者向けがあり、特定薬剤管理指導加算3を算定する上では、患者向け資材の活用が必要です。
患者向け資材がない場合は、算定できない点に注意が必要です。
RMPの患者向け資材は、PMDAのホームページに掲載されています。
調べ方その1)RMP提出品目一覧から検索
調べ方その2)個々の薬について検索する場合は、医療用医薬品 情報検索で。RMP資材があればヒットします。
Q3.選定療養について説明した場合、いつから算定できますか?(算定区分「ロ」)
6月から算定可能と考えています。(2024年4月23日時点の筆者見解)
本点数は、選定療養の対象となる先発医薬品を選択しようとする患者に対して説明を行った場合に、算定可能とされています。
実務的な視点では、10月からの選定療養の導入に際して、その前の段階から早めに患者への説明が必要と思われます。
すでに選定療養の対象となる先発医薬品のリストは公表されており、どの患者さんが対象になるか把握可能です。
また、先日の疑義解釈では「患者に対して説明した結果、患者が後発医薬品を選択して選定療養の対象とならなくても算定可」となっています。
以上のことから、患者へ説明できるだけの情報は揃っており、6月からの算定で差し支えないものと考えます。
なお、後発医薬品のある先発医薬品の多くが、選定療養の対象となりますが、全てではない点に注意が必要です。あわせてお知りおきください。
選定療養の対象となる先発医薬品のリストは、厚生労働省のサイトで閲覧できます。
厚生労働省
「後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養について」
「長期収載品の処方等又は調剤に係る選定療養の対象医薬品について」対象医薬品リスト
Q4.医薬品供給が安定していない場合とは、限定出荷や供給停止に限られますか? (算定区分「ロ」)
医薬品供給が安定しておらず、必要量が確保できない場合に別の銘柄の医薬品に変更し、患者に対して説明した場合に算定可能となっています。
必ずしも限定出荷中や、供給停止中の医薬品でなくても、実態として薬局で必要量が確保出来ない場合は算定可能と考えています。
地域差や医薬品卸の在庫にもよるため、限定出荷中や供給停止中で無くても必要量が確保できない場合は十分に想定されるためです。
ただし、薬歴及び調剤報酬明細書の摘要欄にその薬剤名を記載することが必要です。
もちろん、薬局に在庫がないという理由だけでは算定できません。
薬局内でどのような場合に該当するのかをしっかりと共有しておきましょう。
調剤報酬の算定可否お悩みまとめ
今回は、「特定薬剤管理指導加算3」について、筆者に寄せられるよくある質問の中から、4つ解説しました。
様々な考え方がありますが、一つの考え方としてご参考になれば幸いです。
特定薬剤管理指導加算3に限らず、新設点数は算定して欲しいとの思いが込められて点数化されています。
算定機会は薬局によってまちまちだと思いますが、ぜひ積極的に算定していきましょう!