薬局の感染対策、一度見直そう2~椅子や机・ドアノブなどの消毒
未知の感染症に対して、わからないなりにも色々と“できること”を探って対策をしてから2年半、新型コロナウイルスの特性や感染が起きやすい状況というのはかなり詳細にわかってきました。当初は“できること”の1つとして取り入れた対策であっても、今の情報を踏まえて改めて評価してみると、意外と続ける必要性の低いものや、むしろ辞めてしまった方がメリットのあるものもあるかもしれません。各対策が、具体的に誰をどんなリスクから守っているのか?という視点で、改めて検証してみましょう。
要検討事項1:椅子や机、ドアノブなどの消毒
新型コロナウイルス感染症では、接触感染も感染経路の1つと考えられています。接触感染は、感染者から排出されたウイルスを含む唾液などに触れ、その触れた手で自分の鼻や口などに触れてしまうことなどで起こります。そのため、手洗いを含めた手指衛生の徹底や、不特定多数の人が触れる椅子や机・ドアノブ・スイッチ・液晶デバイスなどをこまめに消毒することは、こうした接触感染のリスクを軽減する対策として“意味のあるもの”と言えます。
一方で、この新型コロナウイルス感染症では、モノを介した接触感染は稀だということがわかっています1)。新型コロナの患者さんが鼻をかんだ後、そのままの指で触った液晶パネルに触れ、その指でまた鼻や口を触る…といったケースには確かに注意が必要ですが、そういった事例のリスクが日常業務の中にたくさん潜んでいるかというと、それほど多いわけではありません。特に、基本的に人の手が触れることのない床や壁などの消毒は、“清掃”以上の意味を持たないと考えるのが妥当でしょう。
こうした“環境消毒”はかなり手間がかかり、スタッフの負担に繋がります。無意味ではないものの、そこまで重要でない環境消毒の徹底に疲弊し、もっと重要な「換気」や「距離の確保」「マスク着用」などの対策1)に割けるリソースが減ってしまっては、感染対策として本末転倒です。