高血圧治療では、なぜ薬の種類が増えるのか~「配合剤」を使うことのメリットと注意点
高血圧治療では、どうして薬の種類が多くなる?
高血圧の治療には「Ca拮抗薬」「ARB」「ACE阻害薬」「利尿薬」「β遮断薬」の5種がよく用いられますが、いずれも降圧効果や心血管疾患の抑制効果が証明されており、“主要降圧薬”に位置づけられています1)。これらの薬は、患者さんの病態や基礎疾患などを踏まえながら選択されますが、1つの薬だけで目標血圧を到達できる人は3~4割程度2)と、あまり多くないことが知られています。
このとき、既存の薬を2倍量に増量するよりも、別クラスの降圧薬を併用した方が、得られる降圧効果は数倍高く、副作用も少なく抑えることができる3)ため、高血圧治療では“複数の降圧薬”を組み合わせて使うことが基本になります。つまり、高血圧治療で薬の種類が増えるのは、それが最も安全で効果的な方法だから、と言えます。
「配合剤」を活用することに、どんなメリットがある?
ところが、薬の種類が増えると服薬の負担も増えてしまいます。とりわけ、高血圧のように“特に自覚症状もない疾患”に対して真面目に薬をコツコツと飲み続けるのは、いかに医師や薬剤師から治療の意義を説明されていても難しく、服薬順守率はもともと4~6割程度とされています4)。薬の種類が増えて手間になると、この数字はさらに悪化すると予想されます。
そんなときに役立つのが、複数の薬を1つにまとめた「配合剤」です。実際、この「配合剤」を活用することは、高血圧患者の服薬アドヒアランス維持に有用であることも報告されており5)、理論上のメリットに留まらない効果を期待できそうです。そのため、降圧治療において「錠数が増えることに抵抗がある」患者さんの場合は、「配合剤」をうまく活用することは治療上も非常に重要なものと言えます。
日本で用いられている降圧薬の「配合剤」一覧
現在、日本で高血圧治療に用いられる「配合剤」には、以下のようなものがあります。基本的には、臨床で使用頻度の高い組み合わせのものが中心ですが、5つの主要降圧薬のうち、「ACE阻害薬」や「β遮断薬」を含む配合剤は今のところなく、いずれも「Ca拮抗薬」、「ARB」、「利尿薬」の組み合わせである、という点もポイントです。