薬剤師の気になるトピックをお届け!今月の特集

更新日: 2024年4月1日 児島 悠史

「インタビューフォーム」で勉強しよう1~「開発経緯」から薬の“使命”や“使いどころ”を学ぶ

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「薬の勉強をしよう」と思ったとき、多くの方は“専門書”を探そうとすると思います。確かに“専門書”は薬の勉強をする際の良い参考書になりますが、新人薬剤師にはもっと手軽に、お金をかけずに勉強できる教材があります。それが「インタビューフォーム」です。今回は、この「インタビューフォーム」でどんな勉強ができるのか、掲載されている情報をもとに解説します。

なお「インタビューフォーム」は、PMDA(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)のWebサイト から、添付文書と同じように検索・閲覧することができます。つまり、インターネットにさえ繋がっていれば誰でも無料で閲覧できる良い教材と言えます。

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どんな“使命”を持つ薬なのか?~薬が開発された経緯がわかる

薬は、単なる思い付きで研究・開発されるわけではありません(※稀に、完全な偶然から見つかるもの=セレンディピティもありますが)。地道な基礎研究や臨床研究を行って仮説の検証を繰り返し、既存の治療を有効性や安全性、使いやすさ、コストなど様々な面から改良しようとして生み出されるものです。つまり、どの薬にも「こんな問題を解決するために生み出された」という“使命”があるわけです。

薬の「インタビューフォーム」を開くと最初に「開発の経緯」という段落がありますが、この段落からは薬の“使命”を読み取ることができます。こうした薬の“使命”を知ることは、実は薬剤師としてかなり重要なことです。何故かというと、「この薬が登場する前はこんな困ったことが発生していた」、「その困ったことを解決するために、こんな特徴・特性を持つこの薬を開発した」・・・という経緯を知ると、薬の特徴を詳しく把握できるだけでなく、この薬が目の前の患者さんのどんな“困った”を解決できるのか、なぜ他の似た薬ではなく“この薬が処方された”のか、その意図がよりわかりやすくなるからです。

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「セマグルチド」は、どんな“困った”を解決するために開発された?

たとえば、GLP-1受容体作動薬の『リベルサス錠(一般名:セマグルチド)』を例に見てみます。添付文書だけでは、基本的に「2型糖尿病の治療に使う薬」としかわからないのですが、インタビューフォームの「開発の経緯」を見てみましょう。

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まず注目したいのは、4行目にある“有効かつ安全な糖尿病治療薬は市場に複数存在しているが、より有効で利便性の高い2型糖尿病の治療オプションが求められている”というところです。この薬が研究・開発される時点で、2型糖尿病の中軸となる治療法は既に多く出揃っているものの、“より効果的なもの”や“より便利なもの”という追加の選択肢が求められていた、ということがわかります。続きには、“特にアドヒアランスの低下が主要な懸案事項になっている”といったことが書かれていますが、これが現場に存在している“困った”ことです。

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児島 悠史
こじま ゆうし

薬剤師 / 薬学修士 / 日本薬剤師会JPALS CL6。
2011年に京都薬科大学大学院を修了後、薬局薬剤師として活動。
「誤解や偏見から生まれる悲劇を、正しい情報提供と教育によって防ぎたい」という理念のもと、ブログ「お薬Q&A~Fizz Drug Information」やTwitter「@Fizz_DI」を使って科学的根拠に基づいた医療情報の発信・共有を行うほか、大学や薬剤師会の研修会の講演、メディア出演・監修、雑誌の連載などにも携わる。
主な著書「薬局ですぐに役立つ薬の比較と使い分け100(羊土社)」、「OTC医薬品の比較の比較と使い分け(羊土社)」。

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