『ステロイドの虎』國松淳和医師が明るく回答! 〜薬剤師が知りたいステロイドの疑問〜

更新日: 2026年1月25日 國松 淳和

薬剤師が質問:ステロイドは感染症に悪いはずなのに、処方されるのはなぜ?

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薬剤師からの質問:「ステロイドは感染症に悪いはずなのに、処方されるのはなぜ?」

ステロイドって感染症を悪くするっていいますよね。実はよく理解していないかもです…。

例えば「ラムゼイハント症候群」の患者さんに「プレドニゾロン」と「バラシクロビル」を一緒に行くじゃないですか。ふと思ったんですがこのステロイドのせいで「VZV(水痘・帯状疱疹ウイルス)」が活発になって、かえってダメってことってないんですかね?

免疫抑制ではなくて炎症を抑えるためのステロイドっていうのは理解してるつもりですけど、モヤっとしました。

あとはこれを書いてて思ったんですが、喘息発作だなとおぼしき処方箋で、内服ステロイドと抗生剤が出てて、これってよく見るんで疑義ってほどではないんですが、ステロイドで免疫を下げるってことと、喘息の治療で必要ってことが何気に矛盾してて「ああ、自分ではちゃんとはわかっていないんだな」ってことがわかりました。

(調剤薬局の薬剤師より)

國松淳和医師が解説:「ステロイド治療で勝負したいという医師の切迫感を感じて欲しい」

質問ありがとうございます!

やや極論的に先に結論から言うと、医師の処方後の薬局での投薬というような場面で、「ステロイドで感染症を悪くする」みたいな事柄は気にしなくていいと思っています。

投薬場面におけるステロイド処方で気を付けるべきは、とにかく継続される日数についてだと思います。これは前回の内容を読み返してほしいです。

「炎症」って言葉はネガティブに捉えられてしまうものですが、ウイルスや細菌から必死に生体を守った・守ろうとした結果とも言えます。「手段を選ばず、多少犠牲を払ってでも病原体をやっつけた・攻撃しようとした」と理解される現象が、炎症なのです。

ただ、炎症は人間にとっては嫌なものです。だるいし熱は出るしそこらじゅう痛いし、また炎症を起こしている部位は赤く腫れて痛いし、つらいことばかりです。

気道の分泌物が増えたり咳が出たり、あるいは下痢や嘔吐なども、粘膜炎症の結果であるともいえ、病原体から自分の体を守った結果であるとはいえ、つらいものではあります。

炎症が歓迎すべきものであるなら、それを抑えてしまうステロイドはやはり“百害あって一利なし”ではないかと思われるかもしれません。

しかし一方で、生体は結構炎症にやられてしまうものなのです。敗血症というのはその際たるものですし、肺炎で命を落とすのは、病原体に負けたというより炎症に負けたからであることが多いです。あるいは炎症が長引いて消耗し、全身状態が悪化して亡くなることもあるでしょう。

「今、ステロイドを大量に投与しないと死んでしまう膠原病」を発症したとして、似た症状で感染症の可能性も同時にあるというとき、ステロイドで感染症が悪化してしまう懸念があるからステロイド投与を控え、抗菌薬投与のみを先行させるでしょうか?

おそらくそうはせず、抗菌薬投与と両立させるでしょう。ご質問の「バラシクロビルのみとせず、ステロイドも」というのは、おそらく「ベル麻痺だと思うけれどでも、もしかしたらラムゼイハントだといけないから」という事情だと、私なら推測します。

質問の中にあった、喘息発作にステロイドが出ているのに抗菌薬も出ている件についてはどうでしょう。

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國松 淳和
くにまつ じゅんわ

日本医科大学卒業。日本医科大学第2内科で初期研修後、国立国際医療研究センター膠原病科、国立国際医療研究センター病院 総合診療科、2018年より現職。日本内科学会総合内科専門医、日本リウマチ学会リウマチ専門医。『ステロイドの虎』(金芳堂)、『國松の内科学』(金原出版)など著書多数。

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