薬剤師のいまを知るトピックまとめ

更新日: 2020年11月3日 薬剤師コラム編集部

地域医療の要 かかりつけ薬剤師とは?

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少子高齢化が進行する現状において、「かかりつけ薬剤師」の存在意義は益々、高まっています。これまで薬剤師は、薬という「モノ」の扱いが中心の「対物業務」を行ってきましたが、これからはかかりつけ薬剤師として患者さんという「ヒト」を意識した「対人業務」が重要です。投薬して終わりではなく、服用後のアフターフォローをしっかりするなど、「対物業務」から「対人業務」へのシフトすることが求められているのです。
地域包括ケアシステムのもと、「いかに病院にかからない地域社会をつくれるか」は国を挙げた課題です。薬物治療を通して患者さんの健康を守るかかりつけ薬剤師は、地域医療を支える重要な役どころと言えるでしょう。
今回は、今後ますますの活躍が期待される「かかりつけ薬剤師」について解説します。

かかりつけ薬剤師のメリット・デメリット

ここではかかりつけ薬剤師になるメリットとデメリットについてご紹介します。

かかりつけ薬剤師になるメリットは、まず、患者さんに寄り添った医療提供ができることが挙げられます。また、企業によってはかかりつけ薬剤師の要件のひとつである「研修認定薬剤師」の取得に手当を付けており、年収アップにもつながります。

一方、デメリットとしては、かかりつけ薬剤師としての業務が増える分、忙しくなることが挙げられます。

かかりつけ薬剤師には「24時間対応」「在宅対応」が求められています。指名された患者さんに連絡先と勤務スケジュールを渡し、夜間・休日であっても患者さんからの要請があれば対応しなければなりません。
受け持つ患者さんが多くなれば、その分緊急対応の頻度も増え、プライベートと仕事のバランスをとることは難しくなる可能性があるでしょう。

下記の記事では、かかりつけ薬剤師の地域活動を紹介していますので、是非ご覧になってください。

第6回 かかりつけ薬剤師の「地域活動」を考える(最終回)
薬という「対物」の業務よりも、患者への「対人業務」を評価する。改めて「かかりつけ薬剤師とは何なのか」「かかりつけ薬剤師として実施すべきことは何なのか」を考えていきたいと思います。

第2回 かかりつけ薬剤師指導料をめぐり大手・中堅・地場薬局間に温度差
「かかりつけ薬剤師指導料」「かかりつけ薬剤師包括管理料」を巡って薬局業界の対応が分かれている。積極的に算定に動く大手チェーンと施設基準の届け出は行うものの、算定には慎重な姿勢を示す中堅薬局との温度差が窺える。

かかりつけ薬剤師になるには?

では、調剤薬局に務める薬剤師がいざかかりつけ薬剤師を目指すとしたら、どのような準備が必要なのでしょうか?

かかりつけ薬剤師になるためには、以下の条件をクリアしていなければなりません。

  • 調剤薬局で3年以上の勤務実績がある
  • かかりつけ薬局に週あたり32時間以上勤務し、かつ12ヶ月以上在籍している
  • 医療に関する地域活動に参画している
  • 研修認定薬剤師を取得している

このようにかかりつけ薬剤師になるには、いくつか条件が設けられていますが、ここでは研修認定薬剤師の資格について解説します。

研修認定薬剤師になるには、まず認定薬剤師認証研修機関(プロバイダー)への申請が必要です。取得する単位は4年以内に40単位以上を取得しなければなりません。また、3年ごとに更新手続きがあり、資格取得から次の更新までの3年間で30単位以上、年間5単位以上を取得する必要があります。

プロバイダーへの申請が済んだら、次は研修手帳を入手しましょう。研修を受講することによって、この手帳に単位(受講シール)を貼っていきます。期限内に、無事に資格取得に必要な単位を取得し終えたら、プロバイダーに申請書を提出。認定手数料を収め、晴れて認定証の交付となります。

認定薬剤師を総まとめ。メリットや学習法を解説
「研修認定薬剤師の概要」から「費用や期間」「資格取得のメリット」など研修認定薬剤師に関して網羅的にお伝えします。

ないと損する?かかりつけ薬剤師に必要な「認定薬剤師」って何ですか?
認定薬剤師になることは、自分自身のキャリアアップだけではなく地域の患者さんのためにも役立ちます。今回は認定薬剤師の認定を受けるための条件、方法やメリットなどをお伝えします。

みんなの資格取得体験談
研修認定薬剤師に資格取得の体験談をうかがうシリーズ。今回は、資格取得のメリットについて皆さんの意見をご紹介します。

かかりつけ薬剤師が価値を発揮できる瞬間とは

「かかりつけ薬剤師」とは、「何か困ったときに頼りになる薬剤師」という意味です。しかし、患者さんが薬剤師の前に処方せんをもって来局したときは、実はそれほど困ってはいません。
患者さんは「頭が痛い」「もう薬がない」といった困りごとを持って医療機関を受診しますが、医師の診察でそれはほぼ解決しているからです。
「あとは薬をもらって帰るだけ」というときに、初めて薬剤師の出番になります。困りごとが解決したばかりの患者さんに対して、薬剤師が存在感を発揮することは困難なのです。
しかし、患者さんは投薬後に困らないのか、というとそんなことはありません。たとえば、家に帰って薬を飲んだときに、気分が悪くなったり、飲んだ薬を吐き出したりしてしまうこともあるでしょう。こんなときに、調剤を担当した薬剤師が患者からの電話相談を受け付ければ、患者さんにとって「頼れる薬剤師」になるのではないでしょうか。これこそが対人業務を行うということなのです。

第5回 かかりつけ薬剤師が拓くこれからの薬局像
狭間氏が、薬局薬剤師という医療的社会資源を「かかりつけ」という概念でこれからどのようにいかすのかを提言します。

まとめ

かかりつけ薬剤師制度は2016年度調剤報酬改定から導入されたばかりの、まだ新しい制度です。「対物から対人へ」という薬剤師業務の変化の流れが、今後さらに加速していくことは間違いありません。
残念ながら、まだかかりつけ薬剤師の活躍が国民一人ひとりに浸透しているとは言えない状況です。2019年の薬機法改正により、機能別薬局として「地域連携薬局」「専門医療機関連携薬局」が新たに設けられることが決まりました。国は対人業務で患者さんに対して継続的な服薬フォローを実践することに加えて、そこで得た患者情報を他の医療職・医療機関に共有することを求めています。
いわば、かかりつけ薬剤師になることは薬局で働くうえで大前提になってきているといっても過言ではないでしょう。
まだかかりつけ薬剤師になっていないという人は、時代に取り残されないように資格取得を検討してみてはいかがでしょうか。

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