「風邪なのに抗生物質を出してもらえなかった」と不満そうな患者への対応
患者さんの質問に対して、回答に困ったことはありませんか? このシリーズでは臨床論文から得た知識を活用し、より説得力のある服薬指導をめざします。
実際の服薬指導のシーンを想定した会話形式で紹介します。
今回の論文
Ann Fam Med.11(2):165-72,(2013) PMID: 23508604
内容:上気道感染症(いわゆる風邪)に抗菌薬を使うことで、肺炎による入院リスクを僅かに下げられるが、1人の入院を防ぐためには12,255人に薬を使う必要がある、と推算されたコホート研究。
多くがウイルス性の風邪に、細菌を退治する抗菌薬を使っても、早く治ったりするわけではない
以前は、悪化して肺炎になることを防ぐために使われることもあったが、その効果はとても小さい
薬を「無意味」と表現すると、他の細菌感染症の際に自己判断で飲まなくなってしまう恐れがある
服薬指導をアップデート!風邪の時は抗菌薬を使わないといけない、と考えている人も多い。薬を使うメリット・デメリットをきちんと説明し、この誤解を上手に解く服薬指導をしよう。
いわゆる風邪症候群を引き起こす病原体の9割近くは、「アデノウイルス」や「ライノウイルス」といったウイルスです1)。一方、抗菌薬は細菌を退治する薬のため、風邪症候群に用いても基本的に効果はありません。実際、抗菌薬を使っても風邪の臨床転帰や患者満足度は変わらないという報告もあります2)。