論文検索を上手に行うためには慣れとノウハウが必要!そのマル秘テクニックとは?
EBMは苦手…そんなふうに感じてしまう原因の多くは、論文検索の良し悪しにあるのかもしれません。英語が苦手でも、充実した翻訳ツールがなんとかしてくれますし、論文結果を読み解く上では、難解な統計概念を熟知する必要性は必ずしも高くありません。しかし、論文検索だけは、一定の『慣れ』と『ノウハウ』の習得が必要です。今回は、論文検索の効率を飛躍的に向上させるマル秘テクニックをO崎さんがレクチャーしてくれます!
S村さんはAさんの服薬説明を終えると、「調剤済」の印鑑を押した処方箋を、事務のT川さんに手渡しました。
1) 就床してから睡眠が始まるまでの時間
2) 1日のうちで睡眠が可能な時間のうち、覚醒している時間を除いた実際の睡眠時間
三人は調剤室の窓から、門前のクリニックの駐車場を覗き込みます。患者さんの車は1台も止まっておらず、今日の診察は落ち着いているようでした。
臨床疑問から抽出したPECOから論文検索用のPECOへの変換
そういってO崎さんは、調剤室の隅にあるホワイトボードを引っ張り出したのでした。
PECOの変換作業-PatientからSubjectへの変換
O崎さんはホワイトボードに、「Patient(目の前の患者)」「Subject(臨床研究の被験者)」と書き、それを表にしていきます【表1】。
Patient(目の前の患者)の例 | Subject(臨床研究の被験者)の例 |
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86歳男性で腎機能が悪く、脳梗塞の既往がある患者 | (高齢の)高血圧患者 |
関節リウマチ、慢性閉塞性肺疾患、2型糖尿病を 治療中で、関節リウマチの症状が悪化している 50代女性 |
(関節リウマチの治療に関して調べたいときには) 関節リウマチ患者 |
健康診断で2型糖尿病を指摘された58歳女性 | (心血管リスクの高い)2型糖尿病患者 |
【表1】「P」項目の変換作業の例(O崎さんのホワイトボードより)
PECOの変換作業-OutcomeからEndpointへの変換
そういって、O崎さんはホワイトボードにOutcome(目の前の患者にとっての真のアウトカム)、Endpoint(臨床研究における評価項目)と書き、先ほどと同じように表を書いていきます【表2】。
Outcome(目の前の患者にとっての真の アウトカム)の例 |
Endpoint(臨床研究における評価項目)の例 |
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よく眠れる | 主観的睡眠潜時、主観的総睡眠時間 |
間接リウマチによる生活への影響 | ACR20 (American College of Rheumatology 20) |
延命効果 | 心血管死亡、心筋梗塞、脳卒中の複合心 血管アウトカム |
【表2】「O」項目の変換作業の例(O崎さんのホワイトボードより)
【臨床試験の実現可能性を踏まえる】
F: Feasibility 実現可能性 |
時間、スタッフ、資金の面で十分なリソースがあること |
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I: Interesting 興味深さ |
研究者や出資者にとって興味深い研究であること |
N: Novel 新規性 |
過去の知見を否定したり、拡張するものであること 新規性の高い知見であること |
E: Ethical 倫理的 |
倫理委員会の承認が得られる研究であること |
R: Relevant 関連性 |
臨床医学や保健政策に貢献する研究であること 科学の進歩に貢献する研究であること |
【表3】FINER 基準
PubMedを使った論文情報の収集にあたり、どんなワードで検索するかという問題は、検索の効率性を左右する重要なポイントです。例えば、『がん』に関連する検索語には、『cancer』『neoplasms』『tumor』など、様々な言葉が考えられます。
臨床疑問で定式化したPECOから論文検索用のPECOへの変換作業は、専門的にはPubMedで用いられる統一された医療用語、MeSH(Medical Subject Headings)に置き換えて検索するということでもあります。
『がん』の、MeSHは『neoplasms』で登録されおり、『neoplasms』でPubMed検索すると『neoplasms』のみならず『tumor』や『Cancer』も検索対象になります。MeSHを使いこなすことによって、よりノイズの少ない的確な文献を探すことができます。なお、MeSHはMeSH Database(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/mesh/)から検索することができますので、ぜひ利用してみてください。