「アフターピル」の薬局販売、どう思う?
調剤室で生まれた「ベン」「ゼン」「カン」の三兄弟。薬剤師がイキイキと働けるようにお手伝いをしたい!と奮闘するベンゼン三兄弟が、薬剤師に聞いた実態調査をレポートします。
薬局での「緊急避妊薬」(アフターピル)取り扱いについて、m3.com薬剤師会員にアンケート調査を実施。薬局での販売については賛否が分かれました。
72時間以内の服用で妊娠を防ぐ「緊急避妊薬」(アフターピル)。2020年9月現在、世界76カ国では処方箋がなくても薬局薬剤師を通して購入できますが、日本では薬局での販売は行われておらず、産婦人科などでの受診・処方が必須です。市民団体「緊急避妊薬の薬局での入手を実現する市民プロジェクト」は、国にアフターピルのアクセス改善を求める要望書と署名を提出。背景には、コロナ禍で在宅時間が増えた若年層からの妊娠相談が増加したことがあります。
m3.com薬剤師会員へアフターピルの処方・販売についてアンケートを実施したところ、「処方せんの要らない薬局販売を早く始めるべき」が44%と最も高く、「現状のように産婦人科などの対面受診・処方が必要」32% 「薬局販売よりも、オンライン診療の要件を緩和すべき」21%という結果でした。また、薬局販売に伴う、デメリットや弊害について聞いたところ、「安易な利用が増える」72%、「転売される可能性がある」50%、「副作用の懸念が高まる」と「性感染症の患者が増える」がともに44%という結果になりました。利便性のみを理由にアフターピルを安易に使用することが憂慮されているようです。
Q アフターピルの処方・販売について、以下のうち最も近い考えを教えてください。
ベン:
薬局販売を早く進めるべきと、薬局販売推進派が44%と半数には届かないまでも、最も高い数字だったよ。
Q アフターピルを薬局販売する場合、デメリットや弊害はあると思いますか。
カン:
緊急避妊薬がただ単に便利とはいうだけで利用者が増えることは心配ね。
アフターピル処方に関する現状や薬局販売についての薬剤師の意見を紹介します。
制度整備が必要
- 医療機関で管理追跡できるようにすべきではないでしょうか。少子化対策の一環として包括的に考えないといけない。
- レイプや性被害と密接に関係する方もいらっしゃるので綿密な制度設計が必要です。
- レボノルデストレルは仕入れ値が高いので、病院としては初診料相当のマージンしか得られません。薬局で写真付き証明書を確認して処方し、目の前で内服してもらってもよいと思います。
- アフターピルは、自費扱いにして、何処の薬局でもOTC販売(要指導医薬品)をできるようにした方がよいと思われる。
- 薬剤師に販売の権限と身分証明の確認義務、犯罪性の通報義務などは必要。
- 必ず薬剤師の指導のもと、服薬させる。副反応のチェックを1年間は行えるシステムを整備する。
安易な使用への懸念
- 避妊効果が100%ではないので安心されては困ります。また正常妊娠とは限りません。子宮外妊娠などを見逃すと命に関わることもあり大変です。
- 本当に緊急避妊が必要かどうかは婦人科で診察しないとわからない。
まったく妊娠の心配がない時期なのに勝手に緊急避妊ピルを飲んで「妊娠しなったから、避妊をちゃんとしなくても緊急避妊ピルを飲んだら大丈夫」と思ってしまう危険性がある。通常の避妊ピルをちゃんと服用することを説明した方がよいと思います。
薬剤師にも研修が必要
- 生理学、人体解剖を理解しない薬剤師からの販売が一番危険。
- アフター・コンドームと同じと考えてもよいのか? 専門家の意見を聞きたい。
研修を受講した薬剤師が限定して販売するようにすべき。 - 薬局販売は、十分な説明と副作用防止策が講じられて初めて許可されるべきものと思います。
- クリニックが長期休みに入る期間などでは現状受診できないために難しいと思う。またアフターピルが気軽に買えるということで若年層の安易な性交渉を助長する可能性がある。対面販売にしてもプライバシーに配慮する必要があるため対面販売のみでは気軽に薬剤師に相談しやすいかというとそうではない気がします。
- 使用法や副作用の説明、また避妊効果が出なかった時(妊娠した時)の対処を伝える意味で、最低限、対面でなくともオンラインの「診療」がある方がよいと思います。
性教育の充実が必須
- アフターピルはもっと認知されて欲しい。それよりも、日本の性教育を充実させて欲しい。コンドームを買うことを恥ずかしいことにしないでほしいし、低容量ピルなど女性側の避妊の教育もして欲しい。
- 性感染症などの懸念はあるが、若くして望まない妊娠をしたり、それで中絶をしなければならない状況よりはいいのではないかと思う。そういう場合は、誰にも相談できない場合も多いだろうから。
- 通常のOC(低用量ピル)でも個人輸入して服用している方もいるが、OCの副作用や有害事象があった場合の補償がないことを知らないで使用している。
性教育と販売は別
- 国際的に薬局販売はスタンダードであるため、問題ないと思います。性感染症や安易な利用の問題については、教育という別の視点であり、販売とは別次元ではないでしょうか。
- 未成年が保護者に言い出せないまま中絶期間を逃してしまったり、レイプなどによる望まない妊娠を避けることができる。安易な服用が増えると考える人もいると思うが、そもそも避妊の大切さやコンドームをしないことによる性感染症についてなど、もっとしっかり性教育をするべきであって、女性を守るための手段を減らすべきではないと思う。女性の負担を減らすためにも薬局販売に賛成だ。
産婦人科は受診の抵抗感がありそう
- 産婦人科受診はハードルが高い。妊婦が大勢待っているなか、学生などは行きにくい。
- ただでさえ受診に抵抗感があり、医師などの心無い言葉で傷つくことを恐れて放置、望まないまま出産…ということが減るなら容易に入手できる方法も必要だと思います。
- 産婦人科だけが扱う現状をやめ、どこの医療機関にも常備するところから初めて、薬局でも手に入る条件を早めに進めてほしい。
ベン:
アフターピルは、買う側も薬局側も双方にリテラシーが求められるね。
ゼン:
もし薬局販売が行われるようになれば、薬剤師にも研修は必要だぜ。
カン:
デリケートな問題だけど、それゆえに制度設計をしっかり進めて女性を守っていく必要があるわね。
ベンゼン三兄弟
ベン・ゼン・カンの三兄弟。調剤室で生まれ、日々がんばる薬剤師を見て育ってきた。薬剤師に元気を届けながら、自分たちもいつか薬剤師になる日を夢見ている。薬剤師がイキイキと働けるようにお手伝いをしたい!と奮闘中♪
《 ベン 》
正義感の強い三兄弟のリーダー。勉強熱心でいろいろなことに興味津々。
熱中するとまわりが見えなくなりがち。
《 ゼン 》
明るくてポジティブな三兄弟のムードメーカー。
調子にのりやすく失敗もするが、立ち直りも早い。
《 カン 》
優しくて気配りのできる三兄弟の癒やし系。控えめだけど実はしっかり者。
なぜかゼンへのツッコミは厳しい。
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