第106回薬剤師国試問題
< 問224~225 >
フィルグラスチムを検討する理由として、正しいのはどれか。
65 歳男性。身長170 cm、体重65 kg。eGFRは42 mL/min/1.73 m2である。悪性リンパ腫のため、R-CHOP療法(リツキシマブ、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾロン)の1コース目を施行したところ、7日後に38℃の発熱がみられた。その際の検査値は次のとおりであった。
赤血球数350×104/μL、Hb 11.2 g/dL、Ht 32%、白血球数480/μL(好中球63%、好酸球6%、
好塩基球2%、単球14%、リンパ球15%)、血小板数9.8×104/μL、CRP 5.0 mg/dL
そこで、主治医は2コース目のR-CHOP療法を施行するにあたり、1コース目と同じ症状が現れた際に、フィルグラスチムを併用することを検討している。
< 問224 >
フィルグラスチムを検討する理由として、正しいのはどれか。1つ選べ。
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骨髄での赤血球への分化を促し、R-CHOP 療法の副作用である貧血を防ぐ。
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血液中の血小板の破壊を抑制し、打撲等による出血を防ぐ。
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骨髄での好中球への分化を促し、細菌感染を防ぐ。
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骨髄での好酸球への分化を抑制し、アレルギーの発症を防ぐ
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肝臓でのCRPの産生を抑制し、過剰な炎症を抑える。
回答・解説
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3.骨髄での好中球への分化を促し、細菌感染を防ぐ。
フィルグラスチムは、顆粒球-コロニー刺激因子(G-CSF)製剤である。G-CSF は、顆粒球(好中球など)の産生促進及び機能亢進作用を有する。フィルグラスチムは、がん化学療法による好中球減少症などに適応があり、骨髄において好中球前駆細胞から成熟好中球への分化・増殖を促進するほか、骨髄からの成熟好中球放出による末梢血中の好中球数増加などの作用を示す。本患者は、悪性リンパ腫のためR-CHOP 療法の1コース目を実施したところ、7日後に発熱が見られ、その際の検査値から汎血球減少やヘモグロビン(Hb)量及びヘマトクリット(Ht)値の低下、C反応性タンパク質(CRP)値の上昇が見られた。以上のことから、本患者は、骨髄抑制により好中球減少症に伴う易感染状態や貧血などの副作用が生じていると考えられ、主治医は、本患者に対して2コース目のR-CHOP療法を施行するにあたり、1コース目と同様の副作用が現れた際に、フィルグラスチムの併用を検討していると考えられる。
以下、付属問題
< 問225 >
本症例にフィルグラスチムが処方された際の注意点として正しいのはどれか。2つ選べ。
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R-CHOP療法施行の前日に、1日1回皮下注する。
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R-CHOP療法施行の翌日以降、1回24時間の持続静注を開始する。
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R-CHOP療法施行の翌日以降、1日1回皮下注を開始する。
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副作用として骨痛や腰痛等が現れた場合は、非麻薬性鎮痛薬を投与する
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本症例は腎機能が低下しているため、投与量を減量する必要がある。
回答・解説
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3.R-CHOP療法施行の翌日以降、1日1回皮下注を開始する。
4.副作用として骨痛や腰痛等が現れた場合は、非麻薬性鎮痛薬を投与する。
本症例のように、がん化学療法による好中球減少症に対してフィルグラスチム(遺伝子組換え)(以下、本剤)を投与する場合、通常、がん化学療法剤投与終了後(翌日以降)から本剤50μg/m2を1日1回皮下投与する。ただし、出血傾向などにより皮下投与が困難な場合は、本剤100μg/m2を1日1回静脈内投与(点滴静注を含む)する。なお、好中球数が2,000/mm3以上に回復し、感染症が疑われるような症状がなく、本剤に対する反応性から患者の安全が確保できると判断した場合には、本剤の減量あるいは中止を検討する。また、好中球数が最低値を示す時期を経過後、好中球数が5,000/mm3に達した場合は、本剤の投与を中止する。さらに、本剤投与により骨痛や腰痛などが現れることがあるため、このような場合には非麻薬性鎮痛薬を投与するなどの適切な処置を行うこととされている。本剤は、本患者のような腎機能低下患者において投与量を減量する必要はない。ただし、本患者は高齢者であるため、患者の状態を観察しながら用量並びに投与間隔に留意して投与する必要がある。
※本クイズの内容は2021年10月作成時点のものであり,ご覧いただいた時点で最新情報ではない可能性がございます。