第106回薬剤師国試問題
< 問292~293 >
患児の病態及び検査に関する記述のうち、正しいのはどれか。
13歳女児。身長127 cm、体重23 kg。多飲、多尿、口喝と1ヶ月に3 kgの体重減少があった。ある朝、全身倦怠感、下痢、嘔吐があり、意識障害となったため母親が救急車を要請し、病院に搬送された。1型糖尿病と診断され入院となった。搬送時の検査データを下に示す。
(検査値)
血糖値770 mg/dL、尿糖(4+)、尿蛋白(-)、尿中ケトン体(4+)、
Na 132.0 mEq/L、K 4.2 mEq/L、動脈血液ガスpH 7.1、HCO3- 9.0 mEq/L
< 問292 >
この患児の病態及び検査に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
-
インスリン過剰状態にある。
-
アルカローシスによって、血中重炭酸イオンの減少がみられる。
-
高血糖により脂肪分解が抑制されている。
-
呼気中にアセトン臭が認められる。
-
Glutamic acid decarboxylase(GAD)抗体が陽性である可能性が高い。
回答・解説
表示
-
4.呼気中にアセトン臭が認められる。
5.Glutamic acid decarboxylase(GAD)抗体が陽性である可能性が高い。
1 誤。1型糖尿病は、膵臓ランゲルハンス島B(β)細胞の破壊により、インスリンの絶対的欠乏をきたす疾患である。一方、2型糖尿病では、インスリン抵抗性に伴い、インスリンの過剰分泌を呈することがある。
2 誤。本患者の動脈血液ガスpH(正常値:7.35~7.45)は7.1、尿中ケトン体(4+)であることから、糖尿病ケトアシドーシスが生じていると考えられる。そのため、アニオンギャップの増大により、代償的に血中重炭酸イオン(正常値:22~26 mEq/L)の減少が見られる。
3 誤。1型糖尿病では、インスリンの絶対的欠乏により糖利用が低下し、脂肪組織において脂肪分解(β酸化)が亢進することでアセチルCoAが増加する。過剰なアセチルCoAによりアセチルCoAが縮合し、アセト酢酸、3-ヒドロキシ酪酸、アセトンなどのケトン体産生が亢進する。
4 正。ケトン体産生が亢進するため、呼気中からアセトン臭が認められる。
5 正。1型糖尿病では、臨床マーカーとして抗GAD抗体や抗IA-2抗体などの自己抗体が陽性となる可能性が高い。
以下、付属問題
< 問293 >
この患児への初期対応として適切なのはどれか。2つ選べ。
-
ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害薬の経口投与
-
インスリンの点滴静注
-
グルコン酸カルシウムの点滴静注
-
生理食塩液の点滴静注
-
5%ブドウ糖注射液の点滴静注
回答・解説
表示
-
2.インスリンの点滴静注
4.生理食塩液の点滴静注
本患者は、1型糖尿病であること、下痢、嘔吐、意識障害などの症状が認められること、血糖値770 mg/dLと高血糖かつ動脈血液ガスがpH 7.1とアシドーシスにあることから、糖尿病ケトアシドーシスが疑われる。糖尿病ケトアシドーシスの初期治療は速効型インスリン製剤の少量持続静注法を原則として、かつ体重変化から脱水の程度を推測し、生理食塩液の点滴静注などの輸液の投与を行う。
※本クイズの内容は2021年10月作成時点のものであり,ご覧いただいた時点で最新情報ではない可能性がございます。