30代病院薬剤師の年収はいくら?調剤薬局やドラッグストアとも比較
30代になると、仕事の責任がぐっと増してきます。それでなくても夜勤や当直のある病院勤務は大変なもの。他の薬剤師と比べて、仕事と年収のバランスに疑問を抱くこともあるかもしれません。
この記事では、30代の病院薬剤師が年収に対して抱く不安の内容を確認しながら、いまより年収をアップさせる方法について解説します。
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30代の薬剤師の平均年収
経験やスキルも増え、薬剤師としての仕事に充実感を覚え始める30代ですが、今後の展望を含め、いろいろな不安や迷いも出てくる年代でもあるでしょう。
特に、働き方や収入面に関しては気になることも多いのではないでしょうか。
そこで、まずは収入面について、30代薬剤師の平均年収からみてみましょう。
30〜34歳の薬剤師の平均年収
30代の薬剤師の年収はどれくらいになるのでしょうか。
下の表は、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」のデータをもとに、年代ごとの薬剤師の平均年収を出したものです。
これによると、30代前半(30〜34歳)の平均年収は564万円、そのうち男性の平均年収は573万円、女性は551万円となっています。
同じく厚生労働省のデータによれば、薬剤師全体の平均年収は583万円となっています。
そのうち男性薬剤師の平均年収は637万円、女性薬剤師は540万円でした。
30代前半では、薬剤師全体の平均年収583万円にはわずかに届かないようですが、男性と女性の年収の差はほとんどありません。
年代別(薬剤師のみ・5歳刻み) | 男女計 | 男 | 女 |
20~24歳 | 381 | 406 | 372 |
25~29歳 | 465 | 501 | 442 |
30~34歳 | 564 | 573 | 551 |
35~39歳 | 608 | 680 | 512 |
40~44歳 | 630 | 726 | 577 |
45~49歳 | 641 | 719 | 608 |
50~54歳 | 666 | 738 | 613 |
55~59歳 | 717 | 856 | 609 |
60~64歳 | 582 | 589 | 566 |
65~69歳 | 517 | 496 | 588 |
70歳~ | 558 | 544 | 585 |
※平均年収は、厚生労働省「賃金構造基本統計調査/ 令和4年賃金構造基本統計調査」の、「きまって支給する現金給与額」12か月分に、「年間賞与その他特別給与額」を足した金額を平均年収として算出
※参照:厚生労働省「賃金構造基本統計調査/ 令和4年賃金構造基本統計調査」
35〜39歳の薬剤師の平均年収
続いて30代後半(35〜39歳)の平均年収もみてみましょう。
先ほどの表によると、30代後半の平均年収は608万円、そのうち男性の平均年収は680万円、女性は512万円となっています。
30代後半になると、男性の年収が100万円以上増えています。管理薬剤師などの役職につく人が増えてくるためだと思われます。
女性の平均年収が男性に比べて下がっているのが気になりますが、これは主に、結婚や出産等のライフスタイルの変化により、育休を取得したり、時短勤務に切り替えたりする女性の割合が増え、女性の労働時間が少なくなっているためと考えられます。
全体としては、30代後半ですでに薬剤師全体の平均年収を上回っていることがわかります。
30代は、特に男性にとって、年齢を重ねながら収入面で非常に充実していく年代といえるでしょう。
病院薬剤師の平均年収
ここまでは薬剤師全体の平均年収を見てきましたが、同じ薬剤師でも勤務先によって年収に違いがあります。
病院や、調剤薬局、ドラッグストアなどの種類別に見ていきましょう。
病院で働く薬剤師の平均年収はどのくらい?
薬キャリエージェント調べによると、病院勤務の薬剤師の平均年収は474万円でした。先ほど述べた、薬剤師全体の平均年収583万円と比べると、少し低いと感じますね。
病院の場合は、どうしても医師や看護師の人材確保のほうが優先されてしまいます。加えて病院の経営状況が給与に反映されやすいということもあり、薬剤師の給与水準はやや低くなる傾向にあるようです。
もっとも病院には、国公立病院や民間の総合病院、個人病院などさまざまな規模や種類があり、勤務先によって年収には違いがあります。
薬剤師のほかの業種との比較
では、調剤薬局やドラッグストア勤務の薬剤師の平均年収はどれくらいでしょうか。
下の表は、業種別の薬剤師の平均年収を比べたものです。
この表によると、一番年収が高いのは調剤併設のドラッグストアの528万円、続いて調剤薬局の517万円、それから調剤を扱わないOTCのみのドラッグストアの500万円と続いています。やはり病院薬剤師の年収は、ほかの業種の薬剤師と比較しても少し低いようです。
業種別(薬剤師のみ)中央値 | 正社員 (年収) |
病院 | 474万円 |
ドラッグストア(OTCのみ) | 500万円 |
調剤薬局 | 517万円 |
ドラッグストア(調剤併設) | 528万円 |
※薬キャリエージェント調べ
ほかの医療従事者との比較
医師や看護師など、薬剤師以外の医療従事者の年収はどうでしょうか。
下の表は、厚生労働省のデータをもとに、医師、歯科医師、薬剤師、看護師の平均年収を比較したものです。
参考までに、医療関係者ではない一般労働者の平均年収とも比べてみました。
これをみると、薬剤師全体の年収は看護師の年収を上回っていることがわかります。
ただ、先ほど説明したように、病院薬剤師の年収は薬剤師全体の年収より低い傾向にあります。
先ほど述べた病院薬剤師の平均年収474万円は、医療関係者のなかではやや低く感じますが、一般労働者と比較した場合、かなりの高水準といえるのではないでしょうか。
一般・同業との比較 | 男女計 | 男 | 女 |
一般労働者 | 312万円 | 342万円 | 259万円 |
医師 | 1429万円 | 1515万円 | 1138万円 |
歯科医師 | 810万円 | 794万円 | 878万円 |
薬剤師 | 583万円 | 637万円 | 540万円 |
看護師 | 508万円 | 523万円 | 506万円 |
※一般労働者の平均年収は、厚生労働省「付表2 一般労働者の性、雇用形態別賃金及び雇用形態間賃金格差の推移/令和4年賃金構造基本統計調査の概況」より、男女計の正社員・正職員の賃金に12を掛けた数字を平均年収としている
※医師、歯科医師、薬剤師、看護師の平均年収は、厚生労働省「賃金構造基本統計調査/ 令和4年賃金構造基本統計調査」の、「きまって支給する現金給与額」12か月分に、「年間賞与その他特別給与額」を足した金額を平均年収として算出
※参照:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査の概況」
※参照:厚生労働省「賃金構造基本統計調査/ 令和4年賃金構造基本統計調査」
30代の病院薬剤師が感じる年収にまつわる不安
仕事の内容も、それに伴う収入やキャリアも充実してくるはずの30代。
データで見る限り、30代薬剤師の年収は、それほど悪くないようにも思えますが、同じ薬剤師なのにほかの業種より病院勤務の年収のほうが低いことが気になる方もいるのではないでしょうか。
では、30代の病院薬剤師が自身の年収について抱いてしまいがちな不安には、いったいどのようなものがあるでしょうか。
業務に対して給与が低い
日々のハードワークに対して、対価としての給与が低いというのは、30代の病院薬剤師の多くが訴える不満です。
30代は薬剤師としては中堅の立場であり、スキルも経験もそれなりに積み重ね、周囲から頼りにされることも増えてくる年代です。
しかし、スキルを上げ、責任が増してきても、それに伴って給与が上がってこなければ、きちんと評価されていないのではないかと不安になりますよね。がんばって資格を取得しても、資格手当の制度がなかったら、せっかくの努力が報われないという不満も生まれます。
ほかにも、夜勤や残業が多い、休みが取りにくいといった労働条件への不満が、給与の低さへの不満と結びついて出てくる場合もあります。
キャリアアップが難しい
年収を上げるにはキャリアアップが一番効果的ですが、キャリアアップの実現が難しいというのが30代病院薬剤師の実情でもあります。
特に、病院では役職のポストが少ないうえに、年長者が優遇されやすいという傾向も相まって、年数が経ってもなかなか昇進できないというケースもよくみられます。
努力を重ねても、キャリアアップできるチャンスがないと感じると、将来の年収についても不安を抱かざるをえないでしょう。
結婚や子育てによるライフスタイルの変化
女性薬剤師にとって、30代は、結婚や出産といったライフスタイルの変化が起こりやすい年代でもあります。妊娠や出産を機に、時短勤務やパート勤務へと働き方を変える女性もいるでしょう。
しかし、そうすると以前に比べて年収が下がることになります。
将来のことを考えると、やはり収入を重視して仕事を優先するべきなのか、それとも家族のためにプライベートを優先するべきか、悩ましい思いをするかもしれません。
このように30代は仕事と家庭の両立が難しくなる年代です。
なかでも出産、子育てといったライフスタイルの変化によって収入減のリスクを負わなければならなくなることが、年収への不安や不満を一層大きくしてしまうのではないでしょうか。
30代の病院薬剤師が年収をアップするには
年収についての不安や不満を払拭するために、できることはないのでしょうか?
ここからは、30代の病院薬剤師がいまより年収をアップさせる方法について解説します。
専門的な資格を取得する
資格の取得は、年収アップにつながる効果的な方法です。
職場によって違いはありますが、認定薬剤師や専門薬剤師の資格を取ると、月3万〜5万円程度の資格手当が支給される可能性があります。確実な年収アップが期待できそうです。
資格取得のための勉強は、自分自身のスキルアップに役立ちますし、スキルアップのため努力をしている姿勢は、人事評価において高評価されやすく、その後の昇給にもつながりやすいでしょう。
また、専門性の高い資格を持っていると、転職の際にも有利にはたらきます。
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職場内での昇進をめざす
年収アップのもっとも効果的な方法は、管理職をめざすことです。
病院薬剤師の場合は、薬剤師主任や薬剤部長になることで、役職手当が支給されるようになります。
日ごろから知識の習得やスキルアップに励み、周囲の信頼を得るための地道な努力を欠かさないようにしましょう。
また、先に述べた認定薬剤師などの資格を取得しておくことも、管理職への昇進には有利にはたらきます。
給与水準の高い地方で働く
薬剤師の給与には、実は地域差があります。
興味深いのは、東京や大阪などの都市部に比べて、地方のほうが給与水準が高いということです。
地方、特に交通の便が悪い田舎などでは薬剤師の数が不足しています。人材を確保するため、地方では都市部の平均的な給与よりも高い金額を提示する求人が多いのです。
その結果、都市部より地方在住の薬剤師のほうが年収が高い傾向にあることがわかっています。
厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」のデータによれば、東京の薬剤師の平均年収が約585万円であるのに対して、宮崎は約718万、熊本は約684万円でした。東京と宮崎では約130万円の差があります。
もしも、勤務地にこだわりがないならば、このように給与水準の高い地方で働くという方法もあるでしょう。
※参照:厚生労働省「賃金構造基本統計調査/ 令和4年賃金構造基本統計調査」
※平均年収は、厚生労働省「賃金構造基本統計調査/ 令和4年賃金構造基本統計調査」の、「きまって支給する現金給与額」12か月分に、「年間賞与その他特別給与額」を足した金額を平均年収として算出
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副業する
勤務先にダブルワーク禁止の規定がなければ、アルバイトや派遣薬剤師として副業をすることもできます。
特に派遣は時給が高く、都市部でも時給3000円以上での求人は一般的です。
たとえば、1日6時間の勤務で月に3日働くと、1カ月で54000円の副収入を得ることができます。
例:時給3000円×6時間×3日=54000円
病院が休みの土日だけ勤務する、1〜2日だけの単発派遣で働くなど、自分の都合に合わせて自由な働き方を選ぶことも、派遣なら可能です。上手に利用すれば、副業でも十分な高収入を得ることができるでしょう。
スキルを武器に転職する
いまの勤務先ではいつまで待っても管理職ポストに空きが出ないなど、この先の昇給が期待できそうにない場合は、転職で年収アップを図るのもひとつの方法です。
30代薬剤師はスキルも経験もあるため、即戦力として期待されやすく、需要もあります。転職は、比較的成功しやすい年代といえるでしょう。
取得している資格を生かし、管理職として勤務できる職場を探してみてもいいのではないでしょうか。
40代になると一転して転職は難しくなってきます。
30代のうちに、将来の昇進ルートや昇給率をしっかりと吟味して、満足のいく転職を成功させましょう。
30代の病院薬剤師は転職に有利?
比較的、転職が成功しやすい年代でもある30代薬剤師。なかでも病院勤務の経験は有利にはたらく場合が多いようです。
転職を考えたときに知っておきたい病院薬剤師の転職事情について解説します。
30代病院薬剤師のスキルは重宝される
一般的な調剤薬局やドラッグストア勤務の薬剤師と違い、病院薬剤師は臨床医療に直接携わってきたスキルと経験を持っています。
外来だけではなく、チーム医療の一員として入院患者と接してきた経験や、専門性の高い薬剤についての知識などは、どの職場でも重宝されるスキルです。
また、医師や看護師、他の医療関係者たちと協力し合うことで培ったコミュニケーション力は、転職の際には大変有利にはたらきます。
病院での経験がある薬剤師は、即戦力として、人手不足に悩む調剤薬局やドラッグストアへの採用が期待できるでしょう。
転職によって昇進も可能
チェーン展開している大手の薬局やドラッグストアには、店長やエリアマネージャーという管理職ポストがあります。これらの業種は、店舗数が多いため、比較的昇進ルートが確保しやすいといえるでしょう。
認定薬剤師や専門薬剤師などの資格を持っていれば、昇給を含め、今後のキャリアアップも期待できそうです。
また、薬剤師が不足している地方の薬局で管理薬剤師になるという方法もあります。
前述したように、都市部よりも地方の方が薬剤師の年収は高い傾向にあるため、地方で管理薬剤師になると、いまより年収を上げられる可能性があります。
これからのキャリアを見据えた転職ができる
出産や育児など、ライフスタイルが大きく変化する30代は、職場では中堅クラスとして責任も増し、今まで以上に家庭と仕事の両立に難しさを覚える年代です。
年収をアップさせるよりも、ワークライフバランスを重視して、働きやすさを優先したいと考える人もいるでしょう。
将来的な収入アップを考慮して、昇給率の高い職場を選ぶ道もあれば、家庭の時間を優先するため、残業や夜勤のない職場を選ぶという道もあります。
転職は、これから自分がどう働きたいかを明確にし、納得できる働き方を実現するためのひとつの手段でもあるのです。
専門家のサポートを上手に利用
いざ転職活動を始めようと思っても、働きながらでは情報収集すらおぼつかないということもよくあります。
そんなときは、薬剤師専門の転職エージェントを利用してみましょう。
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まとめ
30代薬剤師の平均年収は、500万〜600万円という高水準であることがわかりました。
一方で病院勤務の薬剤師の年収は、それよりやや低い傾向にあります。
30代の病院薬剤師が年収に対して感じる不安も、給与水準の低さが主な原因のようです。
収入を上げるには、資格の取得や管理職への昇進がもっとも有効ですが、それでも昇給が見込めない場合は、病院薬剤師としてのスキルを生かした転職を検討してみてはいかがでしょうか。
30代は、今後どのような働き方をしたいのか、これからの自分のキャリアについてもいろいろと思い悩む年代です。
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