【薬剤師向け】「八味地黄丸」の効果と副作用を知ろう

- 八味地黄丸は腎虚を目標として使用される
- 八味地黄丸は老化現象に伴う諸症状に対して効果を発揮する
- 八味地黄丸の構成と効能・効果
- 八味地黄丸の注意すべき副作用と初期症状
- 八味地黄丸の服用に注意すべき人
「八味地黄丸」はOTCでも「ハルンケア」などの頻尿改善を目的とした薬剤にも含有されているため、近年では夜間頻尿によく使用されるイメージがある漢方薬と認識されている方も多いと思います。
しかしながら、八味地黄丸は決して頻尿などの排尿障害一辺倒の方剤ではなく、他にも老化に伴う腰痛・下肢痛・倦怠感・フレイル(虚弱体質)などさまざまな症状に用いられる漢方方剤です。
八味地黄丸は腎虚を使用目標として考えられている方剤ですので、主に老化現象に関連する諸症状の改善に用いられると考えることができます。したがって、処方される患者さんの多くは高齢者が対象となることからも注意すべきポイントがあります。今回はそんな八味地黄丸の注意すべき点についてまとめたいと思います。
「八味地黄丸」の構成と効果・効能とは?
「八味地黄丸」に含まれる生薬は、『八味』の名前のとおり地黄・沢瀉・茯苓・山薬・山茱萸・牡丹皮・桂皮・附子の8種類の生薬からなる方剤です。この八味というのは、漢方薬では生薬の種類を一味・二味と数える習わしがあり、よくご存じの『七味唐辛子』も7種類の成分が配合されているためこのような名称になっています。
八味地黄丸は省略して八味丸とも呼ばれることがあります。高齢者に用いられることが多い方剤で、排尿障害(多くは夜間の頻尿)を訴える患者さんに頻用される場合が多いです。それ以外にも、疲労倦怠感・腰痛やフレイルなどの老化に伴う虚弱なども使用目標として考えられています。
また八味地黄丸の特徴的な腹証として、『臍下不仁』があります。これはおヘソの下の辺り(臍下)の下腹部が軟弱で、腹証の所見を取る際にお腹を触ると、ズブズブと埋もれていく感じがある場合に八味地黄丸の良い適応と考えられています。
「八味地黄丸」の注意すべき初期症状とは?
八味地黄丸は、甘草や麻黄含有の漢方方剤のようなメジャーな副作用があるわけではないため、見過ごされる事もあるかもしれませんが、副作用に注意すべき点が2つあります。
①胃腸障害
この胃腸障害の原因として考えられる生薬は『地黄』です。地黄含有の漢方方剤では、胃痛・胸やけ・下痢などの消化器症状の副作用を訴えることがあり、注意が必要です。
八味地黄丸で効果が感じられているが、胃部症状がチョット…という場合については、食前服用から食後服用へ変更する事で副作用が改善されるといった事例もあることから、医師に相談してみるのも良いかと思います。
効果もイマイチで副作用症状が感じられるようでしたら、他の方剤に切り替えてみるのが無難ですので、こちらもすぐに医師に相談することをお勧めしましょう。
②ほてり・動悸・舌のしびれ
これは附子が含有されていることによる副作用症状です。
附子はご存じの方も多いと思いますが、トリカブトの塊根を用いているため上記のようなトリカブト中毒のような症状が出る場合があります。生薬として用いる附子は修治と言って毒性を軽減された状態で用いるためそれほど過度に副作用を心配する必要性はありませんが、患者さんによっては附子の副作用が出る場合もあるため頭の片隅には置いておく必要があると言えます。
特に他の附子含有方剤との重複や、八味地黄丸の効果を高めるために附子末を追加する場合などには注意が必要と言えます。