小児の服薬指導バイブル~用法用量でもう悩まない

更新日: 2025年8月20日 ひさよ

小児吸入ステロイド薬の服薬指導ポイントをおさらい!

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☞この記事でわかること!
  • 小児気管支喘息に使われる主な吸入薬は5種ある。
  • 小児気管支喘息の治療に使用されるネブライザー3種の特徴
  • 服薬指導時に保護者へ伝えたいネブライザーの上手な使い方

小児に吸入薬が処方される場合、その主な目的は気管支喘息の治療です。喘息患者全体を見ても、小児患者が最も多いという特徴があります。乳幼児期に発症した後、年齢とともに有病率は緩やかに減少する傾向にある小児喘息ですが、治療によって予後が大きく変わる疾患です。

早期から適切な治療を継続することで、発作の予防や症状のコントロール、さらには将来的な健康リスクの低減が期待できます。一方で、治療が不十分だと重症化や慢性化、生活への悪影響が残る可能性があるので注意が必要です。今回は小児の気管支喘息に対する吸入薬処方時の服薬指導において、薬剤師が押さえておくべきポイントについて解説します。

小児気管支喘息に使われる吸入薬とは?

小児の喘息症状の出現を抑え、発症を予防するために日常的に用いる吸入薬として、以下のものが挙げられます。

  • 吸入ステロイド薬(ICS):基礎治療の中心薬
  • 長時間作用性β₂刺激薬(LABA):単剤では使用せず、通常はICSとの配合剤として使用
  • 吸入ステロイド+長時間作用性β₂刺激薬配合剤(ICS/LABA):ICSのみではコントロール不十分例に使用
  • 化学伝達物質遊離抑制薬(クロモグリク酸ナトリウム:DSCG):小児の軽症例に使用されることがある

喘息発作時の救急治療薬としては、短時間作用性β₂刺激薬(SABA)が主に用いられます。

吸入ステロイド薬5種の作用機序と特徴を把握しよう

気管支喘息は気道の慢性炎症を基本病態とする疾患です。吸入ステロイド薬(ICS)は抗炎症作用により気道過敏性を改善し、喘息発作の頻度と重症度を低下させる重要な薬剤です。

定期的な使用により気道リモデリングを抑制する効果も期待できるため、継続した治療が必要となります。

長時間作用性β₂刺激薬(LABA)は気管支平滑筋に存在するβ₂アドレナリン受容体に選択的に作用し、12時間以上持続する気管支拡張効果を示します。

しかし、LABAの単剤使用は小児に適応のあるものがなく、また喘息死との関連が指摘されているため、必ずICSとの併用または配合剤での使用が推奨されています。

吸入ステロイド+長時間作用性β₂刺激薬配合剤(ICS/LABA)は、抗炎症作用と気管支拡張作用の両方を併せ持つことで、相加的な効果により喘息コントロールを改善します。一部の配合剤では、ICSの気道到達性をLABAが高める作用も報告されており、より効果的な治療が可能となっています。

化学伝達物質遊離抑制薬(クロモグリク酸ナトリウム:DSCG)は肥満細胞を安定化させることで、ヒスタミンやロイコトリエンなどの化学伝達物質の遊離を抑制し、気管支喘息の発現を予防します。安全性は高いものの、効果は比較的穏やかな薬剤です。

一方、発作時に使用する短時間作用性β₂刺激薬(SABA)は、β₂受容体を刺激して速やかに気管支平滑筋を弛緩させ、数分以内に気管支を拡張させる即効性が特徴です。ただし、頻回使用は喘息コントロール不良の指標となるため注意が必要です。

小児気管支喘息の治療に使われるデバイスについて

小児気管支喘息の治療に使われる吸入薬を投与するためのデバイスは、大きく「ネブライザー」、「加圧式定量噴霧吸入器(pMDI)」、「ドライパウダー吸入器(DPI)」の3種類に分類されます。

これらのデバイスは、薬剤の特性、患者の年齢、吸入能力、呼吸パターンなどを考慮して適切に選択する必要があります。なかでも、今回は特に服薬指導が難しいと思われる、ネブライザーの服薬指導の大事なポイントを解説します。

ネブライザーは液状の薬剤を霧状化して吸入させるデバイスで、患者の吸気努力に依存せずに薬剤を投与できる利点があります。主に以下の3種類があります。

小児気管支喘息の治療に使用されるネブライザー3種

・ジェット式ネブライザー

圧縮空気で薬液を霧化します。汎用性が高く価格が比較的安価ですが、音が大きく、使用時間が長いという特徴があります。

・メッシュ式ネブライザー

超微細孔を持つメッシュを振動させて薬液を霧化します。静音性に優れ、霧化効率が良好で残液が少なく、携帯性にも優れています。
目詰まりするので定期的なメンテナンスが必要です。

・超音波式ネブライザー

超音波の振動で薬液を霧化します。コンパクトで比較的短時間で吸入できますが、一部の薬剤(ステロイド懸濁液など)には適さない場合があります。

口に当てがう部品としては「マスク」と「マウスピース」があり、年齢や協力性に応じて選択します。マスクタイプを使用する際は、小児の口元にマスクを密着させることが重要ですが、強く押し付けると嫌がってしまうため、注意が必要です。

吸入時の注意点として、子どもが泣いている状態での吸入は避けるべきです。泣くと深い吸気の後に声門が閉じるため、薬剤が気管支ではなく食道や胃に入り、治療効果が著しく低下します。泣かずに吸入できるよう、以下の工夫が有効です。

ネブライザー使用時の困りごとを解決する方法

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ひさよ

調剤薬局で14年間勤務し、その間に薬局長を務めました。店舗では在宅医療や施設訪問業務を担当し、かかりつけ薬剤師として累計200人以上の患者をサポートしてきました。特に、小児患者の保護者からは高い信頼を得ており、処方箋がなくても相談を持ちかけられることが多くあります。また、社内では講師としての役割を担い、新しいことに積極的にチャレンジし続けています。

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