ハイリスク薬の服薬指導 第2回「糖尿病の薬」
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薬歴には、モニタリングとそれに対する患者への適切な指導が大切です。しかし、適切な指導といっても患者に納得してもらうことが困難なケースもあるのではないでしょうか。そのような場合は、薬理だけではなく生理や病理の観点からも説明を施すと服薬指導により幅が生まれてきます。
生化学の理解が患者指導を助けることも!?
糖尿病の治療には、食事療法と運動療法の二つのアプローチがあります。
食事療法には代謝状態の正常化の効果、運動療法には食後高血糖の抑制やインスリン感受性の向上といった効果があり、それらの作用には肝臓や筋肉、脳における糖の放出や吸収も影響しています。
糖尿病治療においては、インスリンの働きとそれに対する各薬剤の機序が薬剤選定において重要な要素となるため、インスリンの特徴や働きについて、医療者としてはしっかりと理解しておく必要があります。
特に「代謝とは何か」、「グリコーゲンの構造や合成、分解はどのようになっているのか」、「ATP(アデノシン三リン酸)はどのように分解されるのか」といった生化学を理解しておくことで、患者からの意外な角度からの質問にも自分の言葉でしっかりと対応することができるようになります。
たとえば、「ラムネを食べると集中力が上がるというのは本当ですか?」という糖尿病には直接関係のない質問に対しても、グリコーゲンの構造や合成、分解はどのようになっているのかということを理解しておけば、「脳の働きにはグルコースが必須だが、脳ではグルコースを蓄えることができないので、常に血中から取り入れる必要がある。ラムネは、成分のほとんどがブトウ糖(グルコース)なので、脳にグルコースを効率的に運ぶことができ、そのため、仕事や勉強で脳が疲れた時にラムネを食べると集中できる」という回答にとどまらず、その流れで糖尿病治療の話へとスムーズにつなげることもできるでしょう。
このように、単純に各薬剤の作用機序だけを確認するだけでなく、生化学的な観点を取り入れていくとより充実した服薬指導や他の疾患領域への応用が可能となります。
ハイリスク薬の服薬指導 第2回「糖尿病の薬」
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