2023年最新版「心不全の診断と治療」とは?
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2023年最新版 心不全の診断と治療
心不全の患者数は、毎年1万人ペースで増加していると推定されています。また団塊の世代が後期高齢者に突入する2025年以降は、さらに患者数が増加し「心不全パンデミック」が危惧されており、対策が喫緊の医療課題となっています。そこで今回は、日本の心不全医療をリードする研究者の一人である九州大学の井出友美氏に最新の心不全診療についてお話をうかがいました。
心不全は、心臓の機能が低下した状態と漠然と捉えられ、循環器専門でなければ医療者であっても十分に理解しているとはいえないのが現状です。心不全を理解するには、まず「心不全の病態の本体は循環不全であり、心臓から全身に必要な血液を送り出せない低心拍出と、血液が送り出せないために血液が停滞することによるうっ血により心不全の症状が引き起こされる」ということを理解することが重要です。また心不全の特徴的な症状として「労作時呼吸困難」がありますが、重症化すると日常生活動作でも息が切れるようになってきます。そして急性心不全を発症し心不全ステージに進行すると、その後再発する可能性が極めて高く、生命予後が悪い疾患とされています。
日本循環器学会が実施している「循環器疾患診療実態(JROAD)調査」で退院1年後の予後を予測したところ、退院時の日常生活ADLの指標が最も有意な予後予測因子であることが示されました。さらに近年、新しい作用機序の薬剤に関するエビデンスが大規模臨床試験で示されたことを受け、欧州心臓学会(ESC)とAHAでもガイドラインの改定が行われ、ACE阻害薬とアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)のどちらかを選択し、β遮断薬、MRA、SGLT2阻害薬を加えた4剤がHFrEF治療の基本薬として推奨されています。しかし、高齢者の心不全管理についてはエビデンスといえるデータが限られ、標準治療をそのまま当てはめることができないと考えられています。そのため併存疾患の多い高齢者は、できるだけ少ない薬で確実に効くものを優先させ、副作用が出ないよう注意して投与することが基本であり、個々の患者さんで個別化した対応が求められています。
「ファンタスティック4にプラスする薬剤」「HFpEF,HFmrEFに対する治療」「新しい心不全治療薬」については、本記事よりご確認ください。
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