ゾコーバ錠の薬価算定方法について解説します
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参考記事:ゾコーバ錠、1錠7400円、中医協で薬価承認 市場規模急拡大時は、薬価の引き下げの上限値を3分の2に
中医協総会は3月8日、新型コロナウイルス感染症の経口治療薬ゾコーバ錠(エンシトレルビル フマル酸)の薬価を1錠7407.4円、1治療で5万1851.8円とすることを承認した。薬価収載は3月15日の予定(資料は、厚生労働省のホームページに掲載)。ゾコーバ錠は5日間で、計7錠投与となる。
(略)
薬価は、類似薬効比較方式(I)で算定され、ラゲブリオカプセルとゾフルーザを基に、2剤の1治療薬価の平均値を本剤の薬価とした。
1、ゾコーバ錠の薬価を考える上でのポイント
通常、新規収載の薬価は類似薬効比較方式で算定(比較薬がない場合は原価計算方式)されます。ですが、ゾコーバ錠の比較薬を選定するには2つの側面を考慮する必要があります。
まず、「新型コロナウイルスの治療に用いる抗ウイルス薬」と考えた場合です。この考え方で候補にあがる類似薬には以下のようなものがあります。
RNA依存性RNAポリメラーゼ阻害薬
- ベクルリー点滴静注用100mg(レムデシビル)
- ラゲブリオカプセル200mg(モルヌピラビル)
3CLプロテアーゼ阻害薬
- パキロビッドパック(ニルマトレルビル/リトナビル)
ゾコーバの薬価収載申請時点でパキロビッドパックは薬価基準未収載(ゾコーバと同時に薬価収載)のため、同じ経口剤であるラゲブリオカプセルが比較薬の候補になります。
ですが、投与対象や投与目的に注目すると、ゾコーバ錠とラゲブリオカプセルには異なる特徴があります。
ゾコーバ錠 | ラゲブリオカプセル | |
投与対象 (SARS-CoV-2による感染症) |
軽症〜中等症Ⅰ (リスク因子の有無は問わない) |
重症化リスク因子のある 軽症〜中等症Ⅰ |
投与目的 | 症状の回復期間の短縮 | 重症化抑制 |
リスク因子の有無に関わらず投与可能なゾコーバ錠は感染拡大の状況によって、使用量が大きく増える可能性があります。
中央社会保険医療協議会 薬価専門部会(第198回) 議事次第
そこで議論にあがったのが「呼吸器感染症に対して重症化リスクに関わらず投与される抗ウイルス薬」という考え方です。その考え方で候補にあがる類似薬は抗インフルエンザ薬です。
- タミフルカカプセル75(オセルタミビルリン酸塩)
- ゾフルーザ錠20mg(パロキサビル マルボキシル)
- ラピアクタ点滴静注液バッグ(ペラミビル水和物)
- リレンザ(ザナミビル水和物)
- イナビル吸入粉末剤20mg(ラニナミビル オクタン酸エステル水和物)
投与期間(5日間)を考えるとタミフルが候補となりそうですが、原則として比較薬は過去10年間に薬価収載された品目を用いることになっているため、ゾフルーザ錠が候補となります。