薬剤師の気になるトピックをお届け!今月の特集

更新日: 2023年1月13日 児島 悠史

「軽度認知障害」の相談に、薬局でも対応しよう~3.軽度認知障害にはどんな対策が有効?

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「軽度認知障害」と言われたからといって、全員がそのまますぐに日常生活に支障を来たすような「認知症」の段階にまで進んでいってしまうわけではありません。むしろ正常範囲まで戻るケースもたくさんある、ということを前回(「軽度認知障害」の相談に、薬局でも対応しよう~2.軽度認知障害は認知症に進行する?)の記事で紹介しました。しかし、こうした説明をされると、次に「何をすれば進行しない、正常範囲まで戻るのか?」が気になるのが人間です。

今回は、薬局で具体的にどんな取り組みが紹介できるのか、実際に有用性が報告されているものをいくつか紹介します。

「軽度認知障害」に、「認知症の薬」は効く?

よくあるのが、「認知症の進行を抑える薬を「軽度認知障害」のうちから飲んでおけば、認知症への進行を防げるのではないか?」という期待です。 確かに、「コリンエステラーゼ阻害薬」や「MNDA受容体拮抗薬」といった認知症の薬は認知症の進行抑制に一定の効果がある1)ため、理論上は期待できそうに思えます。しかし、実際にはほとんどメリットは無さそうで、たとえば「ドネペジル」を「軽度認知障害」の人が使ってもほとんど効果は得られない2)ことがわかっています。

難しいのは、薬学的なメリットは観察されていないものの、“薬を飲んでいる”ということが患者さんの主観的な安心に繋がる可能性はある3)、という点です。こうした“プラセボ効果”が重要な意味を持つような患者さんの場合、使ってはいけないとまでは言えないのかもしれません。ただ、「ドネペジル」などのコリンエステラーゼ阻害薬は下痢や吐き気などの副作用も起こりやすい4)ため、安易に使うのはできるだけ避けたい選択でもあります。

※てんかんを伴う軽度認知障害に「ラモギトリン」や「レベチラセタム」などの抗てんかん薬が有効な可能性がある5)など、特殊なケースもあります。

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児島 悠史
こじま ゆうし

薬剤師 / 薬学修士 / 日本薬剤師会JPALS CL6。
2011年に京都薬科大学大学院を修了後、薬局薬剤師として活動。
「誤解や偏見から生まれる悲劇を、正しい情報提供と教育によって防ぎたい」という理念のもと、ブログ「お薬Q&A~Fizz Drug Information」やTwitter「@Fizz_DI」を使って科学的根拠に基づいた医療情報の発信・共有を行うほか、大学や薬剤師会の研修会の講演、メディア出演・監修、雑誌の連載などにも携わる。
主な著書「薬局ですぐに役立つ薬の比較と使い分け100(羊土社)」、「OTC医薬品の比較の比較と使い分け(羊土社)」。

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