インフルエンザのワクチン、患者さんの色々な質問に備えよう~効果の程度、接種のタイミング、妊娠中の考え方
Q.1 インフルエンザのワクチン、どのくらい発症を防ぐ?
インフルエンザのワクチンは、シーズンによってその効果に多少の差はありますが、子ども・成人・高齢者いずれにおいても、平均して発症リスクを60%程度抑制する1,2,3)ことがわかっています。これによって、一般的なシーズンの罹患率が、子どもでは30%から11%に1)、成人では2.3%から0.9%に、高齢者では6.0%から2.4%に3)、それぞれ軽減されるくらいの効果が得られる、とされています。
確かに“劇的な発症予防効果”とまでは言えませんが、ワクチンは確実にリスクを軽減できる有効な予防手段です。特に、そもそも発症リスクが高い子どもや、重症化しやすい高齢者では、その意義は大きいと言えます。「接種していたのに発症した」という体験はどうしても目立ちますし記憶にも残りますが、それよりも「接種していなければ発症していた」というケースの方が確実に多いことを踏まえた対応が必要です。
Q.2 接種していたのに発症した、ワクチンは無駄だった?
インフルエンザのワクチンは「発症」だけでなく、運悪く発症してしまった場合の「重症化」も防いでくれます。その効果は、たとえば子どもでは50~55%程度4)、高齢者では70~75%程度5)とされています。
このとき注意したいのは、「重症化」とは、38度以上の高熱や強い関節痛・筋肉痛といったものではなく、“入院して治療しなければならないような、生命にかかわる事態“である、という点です。インフルエンザは通常の風邪よりも強い症状が現れるため、こうした症状に悩まされると「重症化した」と勘違いされがちですが、決してワクチン接種が無駄に終わったわけではない、という点は知っておいてもらいたいポイントです。
Q.3 ワクチンは、いつ頃に接種すれば良い?
一般的に、インフルエンザのワクチンは効果が長続きしないため、あまり早い時期に接種すると、流行シーズンの終盤に効果が切れてしまいます。しかし、だからといってあまりのんびりしていると、流行の序盤に無防備な状態で罹患してしまうことにもなります。そのため、“適切なタイミング”で接種することが重要になりますが、このタイミングについてもよく相談されます。