GLP-1受容体作動薬~ハイリスク薬の服薬指導と薬歴記載のポイント1.治療をはじめるとき
GLP-1受容体作動薬による治療がはじまる時の要チェックポイント
GLP-1受容体作動薬は、心血管リスクを抱える肥満傾向の人によく使われる
投与開始時に吐き気や下痢の副作用が多いが、“腹痛”を伴う場合は要注意
GLP-1受容体作動薬とDPP-4阻害薬は併用できない
GLP-1受容体作動薬ってどんな薬?
「インスリン」の分泌を促すホルモンを「インクレチン」と総称しますが、GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)はその「インクレチン」の一種です。つまり、GLP-1は膵臓に働きかけることで「インスリン」の分泌を促し、血糖値を下げる方向に作用する、ということです。「GLP-1受容体作動薬」は、このGLP-1の代わりに膵臓のGLP-1受容体に作用し、インスリンの分泌を促す作用を持つ薬です。
日本では、超長時間作用型で週1回の投与で良い『オゼンピック(一般名:セマグルチド)』や『トルリシティ(一般名:デュラグルチド)』といった、長時間作用型の『ビクトーザ(一般名:リラグルチド)』、短時間作用型の『バイエッタ(一般名:エキセナチド)』、『リキスミア(一般名:リキシセナチド)』といった製剤が用いられています。
タイプ | 商品名 | 成分 | 用法 |
超長時間型 | オゼンピック | セマグルチド | 週1回 |
トルリシティ | デュラグルチド | 週1回 | |
長時間型 | ビクトーザ | リラグルチド | 1日1回 |
短時間型 | リキスミア | リキシセナチド | 1日1回 |
バイエッタ | エキセナチド | 1日2回 |
※GLP-1受容体作用薬(皮下注)
また、インスリンとの配合剤である『ゾルトファイ(一般名:リラグルチド+インスリンデグルデク)』、『ソリクア(一般名:リキシセナチド/インスリングラルギン)』のほか、経口薬の『リベルサス(一般名:セマグルチド)』といったものもあり、豊富な選択肢が揃っています。
GLP-1受容体作動薬は、どんな人に使われる?
糖尿病治療薬には既に様々な薬がありますが、その中でも「GLP-1受容体作動薬」は心筋梗塞や脳卒中といった心血管疾患、さらに腎機能の低下や腎疾患による死亡リスクの抑制効果1,2)と、肥満患者の体重減少効果3)が確認されています。特に、食欲を抑制する効果を期待できるため、“食事量をなかなか減らせない肥満型の2型糖尿病患者”に対して良い選択肢になると考えられます。
心血管疾患や腎臓病を伴う2型糖尿病患者に対しては、GLP-1受容体作動薬の他にSGLT-2阻害薬もよく用いられます。心血管イベントの抑制効果に目立った差はないという報告もあります4)が、GLP-1受容体作動薬は日本人を対象にしたデータが少ない、注射薬でアドヒアランスの維持が難しい、薬価などのコストが高い等の理由から、現在のところはSGLT-2阻害薬の優先順位をやや高く設定していることが多いようです。
GLP-1受容体作動薬では、どんな副作用に注意が必要?
GLP-1受容体作動薬は、単独で低血糖を起こすリスクは低いものの、特に薬の使い始めや増量時には吐き気や下痢といった副作用が現れやすい傾向にあります。もともと、注射薬は内服薬に比べると服薬アドヒアランスが低く、治療を挫折してしまうリスクも高いですが、この吐き気や下痢といった不快な消化器症状は、このただでさえ低く維持が難しい服薬アドヒアランスをさらに悪化させる可能性があります。
そのため、GLP-1受容体作動薬が新たに処方された際や増量された際には、予めこうした消化器症状が現れやすいこと、ただその副作用は薬を使い続けているうちに次第に落ち着いてくる3)ことを説明し、アドヒアランスの低下を防ぐことが重要です。
また、GLP-1受容体作動薬で注意したい副作用としては、