薬歴残業を減らしたい...薬剤師がすぐに実践できる速く書くコツを解説
「今日も薬歴が終わらない...」「閉局後もひとり画面に向かっている」そんな日々を繰り返している薬剤師の方は少なくありません。
薬歴の記載は患者さんの安全を守る重要な業務である一方、残業の大きな原因になっているのも事実です。
この記事では、薬歴残業が生まれる根本的な原因を整理したうえで、今日から実践できる「速く書くコツ」と、それでも改善しない場合の対処法まで、具体的に解説します。
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なぜ薬歴残業が増えてしまうのか
薬歴残業を減らすためには、まず薬歴が溜まってしまう原因を正しく把握することが重要です。原因を特定しないまま効率化を図っても、根本的な改善にはつながりません。
薬歴残業が増えてしまう主な理由は、次の4つです。
人手不足・端末不足など物理的な制約がある
薬剤師の人手不足や電子薬歴端末の台数不足などが、薬歴残業の直接的な原因になっていることがあります。
薬剤師が少ない職場では、一人ひとりが担う業務や投薬件数が多くなり、薬歴を記入する時間的余裕が生まれにくくなります。
一方で、薬剤師の人数が多い店舗であっても、人数に対して端末が不足していると薬歴は溜まりやすくなるでしょう。他の薬剤師が使い終わるまでの待ち時間が積み重なり、結果として閉局後にまとめて記入せざるを得ない状況になることがあります。
業務フローが非効率である
薬局全体の業務の流れが整理されておらず、薬歴記入のタイミングや役割分担が曖昧なまま運用されているケースもあります。
特定の業務に必要以上の人員が割かれていたり、受付から投薬までの共通ルールが整備されていなかったりすると、業務全体が効率的に回らず、空き時間を確保できません。その結果、開局中の空いた時間に薬歴を記入することが難しくなり、業務時間外に残業して薬歴を書かざるを得なくなります。
薬歴記入のスキルや知識が不足している
薬歴残業の原因は、職場環境だけではありません。薬剤師自身が、薬歴に何をどのように書けばよいのかを十分に理解できていない場合もあります。記入のたびに「この表現でよいのか」「何を書くべきか」と迷ってしまい、大きな時間のロスにつながります。
特に経験の浅い薬剤師は、記載ルールや書き方の基準を十分に習得できていないケースも少なくありません。
薬学的判断に自信が持てず、記載に時間がかかる
薬剤師としての知識や臨床経験の不足からくる不安も、薬歴残業が増える要因の一つと考えられます。
客観的な情報の入力はスムーズでも、アセスメントや薬学的考察の段階になると手が止まってしまうことがあります。「この評価は妥当か」「次回どのような対応が必要か」といった判断に迷い、結果として薬歴作成に時間を要してしまうのです。
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薬歴を速く書くコツ【7選】
ここからは、薬歴残業を減らすための「薬歴を速く書くコツ」を7つご紹介します。職場の状況や自分の課題に合わせて、取り入れやすいものから順に試してみましょう。
薬局内で薬歴の記載ルールを統一する
薬剤師によって薬歴の書き方がバラバラな職場では、「何をどの順番で書くか」に迷う時間が増え、記入効率が下がってしまいます。
ルールを統一すれば、薬歴記入の迷いが減るだけでなく、他の薬剤師が書いた内容も理解しやすくなり、チームでの情報共有もスムーズです。その結果、業務全体が円滑に回り、薬歴記載の時間も確保しやすくなります。
多くの薬局ではSOAPに沿った形式で薬歴を書くことが一般的ですが、職場ごとに必要なルールを取り入れ、それに沿って記入することで、迷わず効率よく書けるようになるでしょう。
箇条書きを活用して簡潔に書く
薬歴は長い文章で事細かに情報を記載する必要はありません。患者の状態や指導内容が正確に伝わることが最優先です。詳しく書く必要のない部分は、箇条書きや定型的な短文で必要な情報を端的に記録する習慣をつけましょう。
また、投薬前に以前の薬歴を確認する際は、時間が限られているため素早く正確に情報を把握する必要があります。箇条書きでポイントを押さえた簡潔な記録は、他の薬剤師が確認する際もスムーズです。
服薬指導中にメモをとっておく
服薬指導が終わってから「患者さんは何と言っていたっけ…」と記憶をたどりながら薬歴を書くと、思い出す時間がかかるうえ、内容が曖昧になりがちです。指導中に患者さんの発言や気になった点をメモしておくことで、薬歴記入がスムーズになります。
メモの内容は、SOAPのS(主観的情報)にも直接活用できます。細かく書く必要はなく、キーワードや数値だけを書き留めるだけでも十分です。指導の質を落とさずに、記入の効率を上げることができます。
軽めのものは服薬指導後すぐに記入を終わらせる
症状の変化が少ない定期処方の患者や、指導内容がシンプルな場合は、服薬指導の直後に薬歴記入まで済ませる習慣をつけましょう。記憶が新鮮なうちに書くことで確認の手間が減り、記入スピードも上がります。
「あとでまとめて書こう」と溜め込むと、閉局後に大量の薬歴が残り、残業の原因になりがちです。軽いケースはその場で処理しておくことで、時間に余裕のあるときに、詳しい記録が必要な患者へ集中できるようになります。
薬歴に記載するべき内容を正しく理解する
薬歴に何を書くべきかを正しく理解していないと、必要以上の情報を書き込んで時間がかかったり、逆に必要な情報が抜けてしまったりします。記載すべき内容を明確に把握しておくことが、迷いのない記入への近道です。
「書かなければならないこと」と「書いてもよいこと」を区別することで、無駄なく必要な内容だけをコンパクトに記入できるようになります。
初回のアンケート用紙の質問の順番を薬歴と揃える
薬局では、初回来局時に患者からアレルギー歴や既往歴などを聞き取るアンケートを実施しています。初回の患者さんでは、このアンケートの内容を薬歴に反映させる必要があるため、薬歴作成に時間がかかりがちです。
そこでおすすめなのが、アンケート用紙の質問の順番を薬歴の記載順に揃えておくことです。項目を探す手間が省け、初回薬歴の入力作業を大幅に効率化できます。
電子薬歴の機能を最大限に活用する
近年、多くの薬局で電子薬歴が導入されています。厚生労働省の調査によると、平成31年時点で薬歴管理の電子化を行っている薬局は73.9%です。現在はさらに普及が進んでいると考えられます。
電子薬歴には記入作業を効率化する便利な機能が多数あります。定型文やテンプレートを登録してよく使うフレーズをワンクリックで入力したり、前回の薬歴を引用して変化があった点だけ修正したりするだけでも大幅に時間を短縮できます。また、タイピングが苦手な人は音声入力を活用するとよいでしょう。
PCやタブレット自体の辞書機能の利用もおすすめです。変換しづらい薬の名前や専門用語などもスムーズに入力が可能です。
参照:かかりつけ薬剤師・薬局に関する調査 報告書 別添1 アンケート調査結果 平成31年3月 /厚生労働省
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薬歴の質を落とさずに速く書くためのSOAPの基本
薬歴記載の際、多くの薬局で使われている方法に「SOAP」があります。SOAPとは、以下の4つの項目に沿って薬歴を整理する方法です。
- S(Subject:主観的情報)
- O(Object:客観的情報)
- A(Assessment:評価)
- P(Plan:計画)
必ずしもSOAPで記入する必要はありませんが、多くの薬局がこの形式を使っています。薬歴の質を落とさず、効率よく記入するための方法として、理解しておきたいポイントです。
ここからは、SOAPに沿った薬歴記載の基本的な考え方と、それぞれの項目を速く書くコツについて解説します。
S(Subject:主観的情報)を速く書くコツ
Sには、患者さん自身の言葉や訴えを記載します。「副作用は感じていない」「薬を飲むと眠くなる」「最近血圧が安定してきた」など、患者が話した内容を、できるだけそのままの言葉で記録することがポイントです。
ここで大切なのは、薬剤師の解釈や評価を加えず、あくまで「患者が言ったこと・感じたこと」を正確に記録することです。服薬指導中にSのメモを残しておくと、会話の全体を思い出しやすく、スムーズな記入につながります。
O(Object:客観的情報)を速く書くコツ
Oには、薬剤師が客観的に確認できる情報を記録します。具体的には、血圧や体重、検査値などのデータ、処方内容の変化、残薬の有無、お薬手帳の記録などが該当します。
処方箋や患者情報から転記できる内容も多いため、電子薬歴の補助機能を活用するなど、工夫次第で大幅な時間短縮が可能です。
ただし、記入スピードを意識するあまり、流れで本来変更があった部分も「変化なし」と記録してしまいやすい項目でもあります。継続処方の患者でも、必ず経過を確認し、変化があれば正確に記録するよう注意しましょう。
A(Assessment:評価)を速く書くコツ
Aは、S(主観的情報)とO(客観的情報)をもとに、薬剤師による薬学的評価を記録する項目です。臨床経験が浅い場合は判断に迷いやすく、薬歴の中でも特に時間がかかりやすい部分といえます。
特に、症状の変化が大きい患者や新たな薬が追加された場合は詳細な記録が必要となり、時間をかけて長く書いてしまいがちです。Aの記入に時間がかかる場合は、他の薬剤師が書いたわかりやすい薬歴を参考にし、どのように要点を押さえて評価をまとめているかを学んでみるとよいでしょう。
ポイントを意識して書く練習を重ねることで、徐々に的確で簡潔な記録ができるようになります。
P(Plan:計画)の速く書くコツ
Pには、A(評価)で判断した内容を踏まえ、具体的な対応策や今後の方針などを記載します。EP、OP、CPと項目を分け、実際に行った服薬指導の内容や、次回来局時の確認事項などを分けて記入している薬局もあります。
薬ごとの副作用やデバイスの使用方法など、必ず説明・確認している項目については、自分の指導内容に合わせてあらかじめテンプレートを登録しておくのもよいでしょう。そこに、追加の指導・確認項目を記載するだけで済むため、記入時間を短縮することができます。
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「薬歴に速やかに記載すること」は、診療報酬の算定要件の一つ
薬歴作成の目的は、次回の服薬指導に備えて記録を残すことだけではありません。診療報酬の算定要件としても重要な意味を持ちます。
医科報酬の「薬剤管理指導料」や、調剤報酬の「服薬管理指導料」を算定するためには、実施した指導内容を適切に薬歴へ記録することが求められています。
また、薬歴は時間をおいて後からまとめて記入してもよいではありません。服薬管理指導料の算定要件には「指導後は、その要点を薬剤服用歴等に速やかに記載すること」と明記されています。
「速やかに」に厳密な時間の定義はありませんが、原則として当日中に記載を終えることが望ましいとされています。薬歴が適切に記録されていない場合、指導料の返還につながる可能性があり、薬局の収益にも影響します。
そのため、「薬歴は残業してでも書かなければならない」という認識はある意味正しい認識ともいえます。だからこそ、残業しなくてもその日のうちに書き終えられる仕組みを職場全体で整えることが重要なのです。
参照:調剤報酬点数表に関する事項 /厚生労働省
参照:医科診療報酬点数表に関する事項 /厚生労働省
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それでも薬歴残業が減らないときの対処法
個人の工夫だけでは、薬歴残業はなかなか改善しないこともあります。その場合は、職場全体の環境改善が必要になるでしょう。一人で抱え込まず、同僚や上司と相談しながら対策を進めることが重要です。
チーム全体で業務フローを見直す
店舗全体で薬歴残業が多い場合や、特定の薬剤師に負担が偏っている場合は、業務フローの見直しが必要です。
具体的には以下のような取り組みが考えられます。
- 業務時間内に交代で薬歴記載の時間を設ける
- 特定の薬剤師に投薬が偏らないよう調整する
- 日常業務の中で空き時間を作るために効率化できる部分がないか見直す
個人の努力で薬歴残業が減らない場合は、まずは店舗全体の課題としてチームで取り組むことが大切です。
管理薬剤師・上司への職場環境の改善を提案する
店舗の人員不足や薬歴記載用の端末不足など、店舗内だけでは対策が難しい場合は、管理薬剤師やエリアマネージャーなど、店舗運営を管理する人に相談することが重要です。
その際は、単に問題を伝えるだけでなく、具体的なデータやこれまでの取り組み内容、改善案をセットで提示すると効果的です。
- 1日あたりの業務内での平均薬歴記入時間
- 残業が週に何回発生しているか
- チームで行った業務フロー改善の内容
管理薬剤師やエリアマネージャーは薬歴残業の問題を認識していることが多く、改善の余地がある場合には、他店舗との人員調整などの対応を検討してもらえるでしょう。
転職を検討すべきサインとタイミング
チームや上司に改善を働きかけても状況が変わらず、慢性的に薬歴残業が続く場合は注意が必要です。一時的な繁忙期での残業であれば耐えられますが、毎日残業が続き改善の見込みもない場合は、心身に大きな負担がかかります。
特に、残業代が支払われない「サービス残業」は要注意です。労働基準法では、実働時間に応じた賃金の支払いが義務付けられており、違法となります。
転職をしたくても薬歴残業で活動できないという方は、薬剤師専門の転職エージェントの活用がおすすめです。自分に合う求人探しや条件交渉を代行してくれるため、仕事を続けながらでも無理なく転職活動が可能です。一人で抱え込まず、まずは相談してみましょう。
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まとめ|薬歴残業を減らすために、速く書くコツを取り入れてみましょう
薬歴残業に悩む薬剤師は、SOAP形式や電子薬歴のテンプレート・定型文などを活用し、効率的に速く書くコツを実践してみましょう。
また、チームで業務フローを整理することも重要です。薬歴は業務の中でも時間を要する部分だからこそ、記載方法を見直し、無駄を減らす工夫を取り入れることで、残業を抑えながら質の高い薬歴を作成できるようになります。
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