「国家資格があれば安泰」の時代は終わった。コンサルタントが語る、20代・30代の“勝ち筋”とは。

エムスリーキャリア 薬局・薬剤師領域ゼネラルマネージャー 亀山貴弘

「国家資格があれば安泰」の時代は終わった。
コンサルタントが語る、20代・30代の“勝ち筋”とは。

年収や人間関係、将来のキャリアなど若手薬剤師の悩みは、いつも正解が見えません 。「とりあえず、今の職場で我慢すべき?」そんな迷いの中にいるあなたに、ひとつの「視点」を提示してくれるのが、プロの転職コンサルタントです 。今回は、エムスリーキャリアで10年にわたり薬剤師の人生に寄り添ってきた亀山さんにインタビュー 。 市場価値のリアルから、後悔しないための「戦略的転職」の極意まで、本音で語っていただきました。

「ただの転職」から「キャリアの構築」へ。薬剤師の市場価値は激変した。

── 亀山さんがコンサルタントとして大切にしていること、そして近年の市場の変化を教えてください。

私はこれまで、約10年間この業界を見てきました 。入職した当時は、『国家資格を武器に条件面で転職する』という市場感でした。しかし、2020年あたりを境に、潮目が大きく変わりました。「この人はどういうキャリアを築きたいのか」「どんなスキルを持っているのか」という、“意志のある転職”が問われる時代になったのです 。

今の若手層は、その変化を敏感に察知しています。「給与がいいから」という理由だけでなく、「薬剤師としてどう生きるか」を真剣に考える方が、確実に増えていますね 。

「薬剤師としてどう生きるか」のイメージ

大手の若手が抱く「給与」への違和感、中小の若手が抱く「停滞」への恐怖。

── 20代・30代からは、具体的にどのような相談が多いのでしょうか。

大きく分けると二つです。 一つは、大手チェーンに勤める方の「給与格差」への悩み 。大手は研修制度が整っていますが、給与レンジは中小やドラッグストアに比べると低めに設定されています 。2〜3年経って、他で働く友人の年収を知り、「自分はこんなに頑張っているのに」とショックを受けるケースは少なくありません 。

もう一つは、逆に「成長への飢え」です 。研修制度の少ない中小で働き続け、「このままでは専門性が身につかない」「もっと厳しい環境で自分を磨きたい」と、危機感を抱いて相談に来られる方も多いですね 。

いずれにせよ、最初から「こうなりたい」と明確なビジョンを持っている人は少数派です 。最初は「なんとなく今の場所が違う気がする」という漠然とした不安でいい。それを一緒に紐解き、言葉にしていくのが僕たちの仕事ですから 。

「求人票の数字」よりも大切なこと。プロが真っ先に見るのは、現場の“人間関係の縮図”。

── 求人を見る際、プロはどこに注目しているのでしょうか?

意外かもしれませんが、処方せん枚数よりも先に「現場の人数体制」と「構成メンバー」を確認します 。 管理薬剤師の年齢や性別、男女比、年代の構成。なぜなら、薬剤師の転職理由で多いのは「人間関係」だからです 。現場の空気感が本人に合うかどうかは、この構成を見ればある程度予測がつきます 。

大手なら福利厚生や研修の全体像を重視しますが、中小なら採用担当や現場の管理薬剤師と密に話し、その店舗の“生々しい情報”を徹底的に拾います 。最終的には、転職希望者の意向が一番です。『家庭と仕事のバランスを取りたい』という人なら業務量を抑え、休みが取りやすい職場を優先します。どうしても年収を上げたい人には『忙しいかもしれない職場ですが、給与がいいのでチャレンジしてみますか』と提案します。

時には「転職しないほうがいい」と突き放す。それが、あなたの人生に対する僕の誠実さ。

── 印象に残っているエピソードはありますか?

あるとき、自分の市場価値を高く見積もりすぎて、面接で連戦連敗していた方がいました 。一度は他社経由で決まったものの、すぐに辞めて戻ってこられた。 その時、僕は腹をくくって言いました。「今日は率直に言わせてもらいます。内定が出ないのは、新人として謙虚に学んでいこうとする姿勢が伝わっていないからです」と 。 本人は激怒していましたが、翌日の面接では僕のフィードバックを実践し、見事に内定を勝ち取ってくれました 。

僕は、メリットだけを並べることはしません 。キャリアプランによっては「今は動かず、今の職場でこのスキルを身につけるまで残るべきだ」と、転職を止める提案もフラットに行います 。数年後のあなたが後悔しないことの方が、ずっと大切ですから 。

「選ばれる薬剤師」になるための武器を増やす。若いうちの経験が、次の選択肢を広げてくれる。

── これからの時代、若手薬剤師が身につけておくべきスキルは何でしょうか。

ベースとなる能力である処方せん対応のスピードと正確さは評価されます。そこに、在宅業務の経験やかかりつけの獲得、専門薬剤師(がんや糖尿病など)といった「プラスアルファの専門性」をどう乗せるか 。 国の方針(調剤報酬)を理解し、薬局の経営に貢献できる視点を持つ人は、どこへ行っても市場価値が非常に高いです 。

若いうちにどれだけ打席に立ち、経験を積んだかが、30代・40代になった時の選択肢の広さを決めます 。自由な働き方を手に入れるために、今はあえて「武器」を拾いに行く時期だと考えてみてください。

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